チョコよりおいしい『銀河鉄道の夜』の不思議な“まっ白マシュマロ”を作ろう
読んで楽しい、作っておいしいエッセー&レシピ 児童文学キッチン#07
2022.05.13
第7回目は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』から。あの、”ふしぎな、まっ白でぽくぽくしたもの”です。
(「児童文学キッチン」のほかの記事を読む)
チョコレートよりもおいしいおかしの味がする、 不思議な“さぎ”や“がん”風の まっ白なマシュマロ (福田里香)
<「どうです。すこしたべてごらんなさい。」鳥捕りは、それを二つにちぎってわたしました。ジョバンニは、ちょっとたべてみて、(なんだ、やっぱりこいつはおかしだ。チョコレートよりも、もっとおいしいけれども、こんながんが飛んでいるもんか。この男は、どこかそこらの野原のかし屋だ。けれどもぼくは、このひとをばかにしながら、この人のおかしをたべているのは、たいへん気のどくだ。)とおもいながら、やっぱりぽくぽくそれをたべていました。>
『銀河鉄道の夜』より
鳥捕りの男は「まっ白な、あのさっきの北の十字架のように光るさぎ」の処理法を語り、「青じろのがん」の肉をくれました。
また、この鳥たちは「地面に足がつくと雪のとけるようにひらべったくなる」という。
ふたりが、がんの肉を口に入れると「チョコレートよりも、もっとおいしく」、「ぽくぽく」した食感で、簡単に「二つにちぎれ」ました。
終始不思議な描写が続き、不穏な気持ちをかき立てられます。
そんな印象をもとに、大きくてまっ白なマシュマロを作りました。
手でちぎって食べてみて。燈台看守の「黄金と紅でうつくしくいろどられた大きなりんご」を添えて。(福田里香)
無限に広がる 夢幻の世界で考える 「ほんとうのさいわい」(小林深雪)
<「なにがしあわせかわからないのです。
ほんとうに
どんなつらいことでも
それがただしいみちを
進むなかでのできごとなら
峠ののぼりもくだりも
みんなほんとうの幸福に近づく
一あしずつですから。」>
『銀河鉄道の夜』より
たとえば、『どんぐりと山猫』なら、ある日、突然、山猫からはがきが届きます。
『雪渡り』では、子ギツネがあらわれ、凍った月夜の晩の幻灯会に誘われます。
そして、『銀河鉄道の夜』では、ついに宇宙を走る銀河鉄道に乗車します。
銀河鉄道は「時間」という乗り物です。
自分はどこへも行かないのに、いつのまにかどこかに運ばれていく。そして、時間の駅は、過ぎればなくなっていく。二度と引き返すことはできないのです。
そして、南十字星の近くには、「石炭ぶくろ」という大きなまっくらな穴があいている。時の鉄道の終点は、死です。
青い闇の中を天の川が流れ、賛美歌が聞こえ、南十字星の十字架が光ります。怖いほど美しい光景です。そのとき、はっとジョバンニもわたしも気がつくのです。この銀河鉄道で、ジョバンニは、唯一の生きている乗客だということに。乗り込んでくる乗客は、すべて死者なのです。急に奈落の底を覗いてしまったように、めまいがします。では、となりにいる、親友のカムパネルラは?
「ぼく、もうあんな大きなやみのなかだってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでもぼくたちいっしょに進んでゆこう。」
それでも、ジョバンニは力強くこう言います。でも、カムパネルラはもうとなりにいないのです。
この本は、賢治の妹さんが亡くなったあとに書かれた物語です。あたりまえの日々が、となりにいた人が、突然、消えてしまう。そのとき、自分はどうふるまったらいいのか?「ほんとうのさいわい」とはなんなのか?
賢治の愛した東北の地に起こった大きな震災を思うと、いろんな思いで胸がいっぱいになってしまいます。
(小林深雪)
みんなもきっとびっくり! ふしぎなマシュマロを作りましょう(福田里香)
粉ゼラチン 15g
水 大さじ3
卵白 2個分
バニラビーンズ 3㎝
(またはバニラエッセンス 数滴)
a
グラニュー糖 200g
水飴 20g
水 大さじ4
粉糖 適量
下準備:
卵白は冷蔵庫で冷やす。
水にゼラチンを振り入れ、ふやかす。
コップに冷水をそそいでおく。
トレーにクッキングシートを敷いて、茶こしで粉糖をふるっておく。
バニラビーンズはさやからしごき出しておく。
1 水けも油けもないきれいなボウルに卵白を入れ、ハンドミキサーでピンと角が立つくらい泡立てる。
2 aを鍋に入れ、弱めの中火で沸騰させる。2分ほど煮詰めたら、スプーンでシロップを少量すくい、用意したコップの冷水に1滴たらす。シロップが散らずに、水の中でやわらかい球状に固まるようになったら、火から下ろす。
3 1を再度ハンドミキサーで泡立てる。そこに片手で2の鍋を持ち、シロップが糸状に少しずつ加わるように鍋の傾きを調節しながら、さらにハンドミキサーで泡立て続ける(写真参照)。
5 ゼラチンが全部入ったら、バニラビーンズを加え、約8分間、粗熱が取れるまで泡立てる。すくうともったりと跡が残るようになれば、大丈夫。
6 5をクッキングシートの上にこんもりと丸く流す(p124写真参照)。全体に粉糖を茶こしでふるい、そのまま涼しくて乾燥した場所で1日固める。
7 6をクッキングシートからはずして、全体に再度、粉糖を茶こしでふるう。
『銀河鉄道の夜』についてあれこれ(小林深雪)
わたしは子供のころ、夜寝る前にお布団にもぐって、本を読むのが好きでした。『どんぐりと山猫』『セロひきのゴーシュ』『注文の多い料理店』などを姉と二人で読んで、きゃっきゃと笑い合う。
いま思い出すと、あれほどのしあわせな時間を、ほかに知らないような気がします。
お話から生まれた23のかわいいお菓子がレシピ付きで作れる!
福田 里香
福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。
福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。
小林 深雪
埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。
埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。