出会いの喜びを描いた絵本『しろとくろ』読み聞かせのコツ

「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」隊長がお教えします

本とあそぼう 全国訪問おはなし隊

読み手 ーーおはなし隊隊長 岩田恵美子
※この記事は、講談社絵本通信に掲載の記事を再構成したものです。
 
キャラバンカーに本をたくさん積んで、全国47都道府県におはなしを届ける「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。
幼稚園や保育所、小学校や図書館、書店など様々な訪問先で、おはなし会を重ねてきたおはなし隊の隊長さんが、子どもたちに人気の絵本の読み聞かせのコツをお教えします!
"絵本は100年越しの手紙″と思って創作を続けてきた絵本作家、きくちちき。愛息の成長に寄りそう日々のなかで感じた、こどもの無垢な気持ちを、主人公の猫「しろ」に投影させて『しろとくろ』はできあがりました。

繰り返される「なんで なんで」のフレーズは、小さな発見や、新しい出会いをする喜びにあふれています。赤・青・黄色・緑と豊かな色が散らばる美しい背景の中に、ダイナミックに描かれた、猫の「しろ」と犬の「くろ」が、出会いの喜びを伝えてくれます。
『しろとくろ』
作:きくちちき 講談社
一般的には、読み聞かせの時には本のカバーを外しますが、この本は、カバーと表紙の絵がちがうため、今回は、カバーを着けた状態で読む方法をご案内します。


まず、表紙を見せタイトルを読みます。 すっきりとしたわかりやすいタイトルと絵なので、子どもたちも、白い猫の「しろ」と、黒い犬の「くろ」をたちまち覚えるはずです。

本を開くと見返しには美しい絵が。草むらの中で、しろとくろ、そしてカエルや虫たちが、それぞれ遊んでいます。

カバー前袖に書かれた、「かぜが ふうっと なでてくれた」というテキストを読んだ後、そのカバー袖をめくります。めくると、隠れていた犬のくろが見えます。前見返し全体をていねいに見てもらいます。

草むらの中で、くろから少し離れたところに、しろがいます。「しろはどこにいるかな?」と問いかけてみましょう。興味を持って探してくれます。

しろとくろを指先で示してから、「なにしてるのかな?」「少し離れているね!」「ほかにもなにかいる?」などと、その場の子供たちの反応に合わせた問いかけをしてみてください。

この絵をしっかり見ることで、これから、しろがどのように、くろと出会えるのかが、イメージできると思います。
うつくしい見返し
『しろとくろ』より
さあ、読んでいきましょう。
これから、どのページも、短い言葉だけでイメージがつむがれていきます。しろになったつもりで、しろの気持ちを感じとりながら、子どもたちに問いかけるように読んでください。

言葉が少ないぶん、絵の中には、いろいろなものが詰まっているはずです。ゆっくりと絵を見せてあげながら読み進んでいってください。

「なんで くさって たくさん あるの」
草むらにいる、しろの表情と、元気よく立ったしっぽをよく見てもらいましょう。
すべてに興味津々なしろ
『しろとくろ』より
「なんで はなって きれいなの」
うっとりと花の香りをかいでいる様子をイメージしながら読みましょう。

「なんで なんで とまったの」
頭のうえのてんとう虫に、不思議な気持ちと、なんだかうれしい気持ちがあふれます。

「なんで なんで ぴょんぴょんぴょん」
カエルやバッタと楽しそうに、しろがはねている気持ちになりますね。
「にゃあ」
くろと出会いびっくり! という気持ちの短めの「にゃあ」ですね。

「ぺろ されちゃった」
この「ぺろ」で、しろとくろの距離は、一気に近づきます。喜びをこめて読んでみましょう。
しろとくろの出会い
『しろとくろ』
「まって まって いっしょに あそぼ」
くろと追いかけっこ。虫たちもいっしょになって楽しそうです。

「みつけて みつけて こっちだよ」
こんどは、虫たちもいっしょにかくれんぼです。きょろきょろ探しているくろに、小さな声で教えます。本当はみつけてほしいのですね。

「わんわんわん みつかっちゃった」
みつけてうれしい、くろ。元気よくわんわんわん。みつけられたしろも、うれしい気持ちです。

「なんで なんで うれしいの なんで なんで」
くろにぴったりくっついたしろ。チョウやカエルもくっついて、うれしい気持ちも最高潮で「なんでなんで」を読んでください。

「なんでさみしいの」
赤い背景は夕焼け空です。虫たちといっしょにくろが帰っていってしまうさみしいシーンです。ちょっとトーンをおとして読んでみてください。

「なんでねむれないの」
星空ながめて自分に言い聞かせるしろ。別れのさみしさがつのります。
星空をながめるしろ
『しろとくろ』
「なんでなんであいたいの」
黄色いおひさまがやっと出て朝が来ました。背のびしたしろは、くろのことを思い出しています……。

「なんでなんで」
なぜこんなに会いたい気持ちなのか不思議なしろは、だんご虫にまできいてみます。

「なんでなんで」
チョウにもきいてみます。

「なんでなんであいたいの」
あつまった虫たちにもきいてます。

「にゃあ」
こんどの「にゃあ」は、また会えて、とってもうれしい気持ちの「にゃあ」ですね。気持ちをこめて読んでください。

再会の喜びを、みんなでじっくり分かちあいましょう。後見返しには、絵本に登場した小さな生き物たちが並んでいます。


本を閉じ、しろとくろが並んだ姿をしっかり見せます。表に戻して、『しろとくろ』とタイトルを言って終わりましょう。

●今回読んだ本

『しろとくろ』
作:きくちちき 講談社

●プラス1冊

『ねこのそら』
作:きくちちき 講談社
ほんとあそぼう ぜんこくほうもんおはなしたい

本とあそぼう 全国訪問おはなし隊

たくさんの絵本を積んだ2台のキャラバンカーで各都道府県を巡回し、幼稚園、保育所、小学校や図書館、書店などを訪問している、「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。1999年7月に、講談社90周年記念事業として、スタートしました。 2007年には第55回菊池寛賞、2018年には、メセナ大賞にも選ばれました。 スタートして以来、通算2万2000回以上の訪問、190万人を超える参加者のみなさん、ありがとうございます。次はあなたの町でお会いできるかもしれませんね! https://ohanashitai.kodansha.co.jp/ X(旧Twitter):@ohanashitai55 Instagram:@kodanshaohanashitai

たくさんの絵本を積んだ2台のキャラバンカーで各都道府県を巡回し、幼稚園、保育所、小学校や図書館、書店などを訪問している、「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。1999年7月に、講談社90周年記念事業として、スタートしました。 2007年には第55回菊池寛賞、2018年には、メセナ大賞にも選ばれました。 スタートして以来、通算2万2000回以上の訪問、190万人を超える参加者のみなさん、ありがとうございます。次はあなたの町でお会いできるかもしれませんね! https://ohanashitai.kodansha.co.jp/ X(旧Twitter):@ohanashitai55 Instagram:@kodanshaohanashitai