川島隆太
1959年、千葉県生まれ。東北大学医学部卒業。東北大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。東北大学加齢医学研究所教授。専門は脳機能イメージング。著書に「脳を鍛える大人のドリル」シリーズ、「脳を鍛える学習療法ドリル」シリーズ(ともに、くもん出版)、『スマートな脳』(KADOKAWA)などがある。
「どんなに短い時間でも、どんなに下手でも、子どもにとって身近な大人が読み聞かせをしてあげてほしい」といいます。
動画や音声では意味がないという、その理由をお伺いしてみました。
身近な大人が読み聞かせをすることで子どもの安心感が育つ
人とうまく関わっていく力、そして多少のストレスに負けず、自分らしく生きていく力ではないでしょうか。
親(または身近な大人)と子どもの間で強い愛着関係(心のきずな)ができると、そこが子どもの緊急避難基地になります。
子どもはストレスを受けても、親にギュッとしてもらえたら、また自由に活動することができます。
ところが、今の情報過多な社会では、親子で過ごす時間が極端に短くなり、強い愛着関係が築きにくくなっています。
そこで私たちは、脳科学の観点から「読み聞かせ」の効果について、調べてみることにしました。
まず、読み聞かせをする大人の脳ですが、一番強く活動していたのは、前頭前野の言語を担う場所ではなく、コミュニケーションの領域でした。
親は本を読みながら、子どもにコミュニケーションを持ちかけていました。
次に子どもの脳を調べました。
すると、思考をつかさどる前頭前野はほとんど活動せず、大脳辺縁系という感情をつかさどる場所が働いているということがわかりました。
親子の脳を同時に計測すると、コミュニケーションを担う部分が、親子で同じような活動を示し、共感関係(お互いの気持ちを理解し、思いやれる状態)にありました。
読み聞かせは、親子の愛着関係を強くする貴重な時間をつくっていたのです。
そこで、この本では、2分という短い時間で読めるものから、じっくり楽しめるものまで、36のお話を掲載しました。
だれもが知っているイソップやグリムのお話と、小さいうちに無理なく出会っておけるといいですね。