降ってくるのは雨だけじゃない? 『ふってきました』読み聞かせのコツ

「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」隊長がお教えします

本とあそぼう 全国訪問おはなし隊

読み手 ーーおはなし隊隊長 渡邉達夫
※この記事は、講談社絵本通信に掲載の記事を再構成したものです。
 
キャラバンカーに本をたくさん積んで、全国47都道府県におはなしを届ける「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。
幼稚園や保育所、小学校や図書館、書店などさまざまな訪問先で、おはなし会を重ねてきたおはなし隊の隊長さんが、子どもたちに人気の絵本の読み聞かせのコツをお教えします!
この本は、第39回講談社出版文化賞絵本賞と第13回日本絵本賞をダブル受賞した絵本です。おはなし隊でもよく取り上げられる人気の絵本となっています。
『ふってきました』
文:もとしたいづみ 絵:石井聖岳 講談社

すべての画像を見る(全7枚)
お母さんのためにお花を摘んでいる、つるこちゃんのもとに、空からいろいろな動物たちが降ってくるという単純な構成ですが、子どもたちが純粋に楽しめる、まさに「絵本的な絵本」です。
「次はなにが降ってくるかな?」という、子どもたちの好奇心をじゅうぶんに引き出すため、間の取り方が、大変重要です。意見が分かれるところですが、私の場合は「おはなし会」を特別な機会ととらえ、動物たちが降ってくるページをめくらずに読み始め、降ってきたところで、素早くページをめくり、絵を見せるようにしています。

扉のページのあやしげな空の絵を見せ、「いまにも ふってきそうな そらです」は、やや低い声で物語を始めます。

ページをめくり、今度は、明るい声で「つるこちゃんは おはなを つんでいました」と読み出します。物語が動き出します。子どもたちの中には、絵の中に、カメがいるのを見つける子もいます。

次ページでは「すると そらから……」まではページをめくらず、たっぷり間をとって読みます。そして、さっとページをめくりながら「おおきな わにがふってきました」と続けます。ここは、スピードが大事です。子どもたちは、意外な展開に大笑い。
わにがどずずんと、ふってくる
『ふってきました』より
「どずずん!  つるこちゃん びっくり」
で一度、間をとります。

「おはなは ばらばら」
このフレーズは、これから続けて出てきますので、しっかり読みます。

「びっくりさせて ごめんね」「うん。いいよ。」
わにと、つるこちゃんのセリフの対比がしっかりわかるように読みます。

「つるこちゃんと わにが、おはなをつんでいると……」
ここまでは、先ほど同様、ページをめくらず間をとって……、

そしてページをめくりながら「そらから ぞうがふってきました。」と一気に読みます。子どもたち、さらに大笑いに。

「どかしーん!」
ぞうの重さが感じられるような、トーンで読んだ後は、先ほどのフレーズで「つるこちゃんと わに、びっくり。おはなは ばらばら」と続けます。

「びっくりさせて ごめんね」
からは、先ほどと同じように、対比を意識して。
お花つみを手伝ってくれるぞうさん
『ふってきました』より
次ページも、
「つるこちゃんと わにと ぞうが、おはなを つんでいると……」まではページをめくらずに、「そらから」でしっかり間をとって、「ライオンと しまうまと パンダが ふってきました。」は一気に読みましょう。

「ぐわし!」擬音の読み方を工夫して、先ほどの同じフレーズを読み、最後の「きょうは ほんとうに よく ふってくる ひです。」をサラッと付け加えるように読みます。

「びっくりさせて ごめんね。」
このページも、前と同じように読みます。

次のページは、ガラッとトーンを変えて、みんなの楽しそうな気分を表現します。そして「すてきな はなたばの できあがり」でしっかり絵を見せてあげます。
すてきてな花束のできあがり!
『ふってきました』より
そして、最大の山場となるわけですが、ページをめくらずに、「すると」で一度間をとると、子どもたちは、「えっ、また何か降ってくるの?」という表情になります。

「こんどは そらから」とじゅうぶんに間をとって「つるこちゃんの おかあさんが ふってきました」と一気に読みながらページをめくります。

「くるっ! すたっ! おみごと!」をリズムよく読んで、「みんな はくしゅを しました」で子どもたちの表情を確認すると、拍手が起きることも良くあります。そうなれば、大成功ですね。
「おかあさん、おたんじょうび おめでとう。」親子の楽しい会話です。

最後のページは、私の場合は、さりげなく「きょうは ふってきて ほんとうに よかった」 チャンチャンという感じに読んでいます。

そして、お約束どおり裏表紙を見せ、表紙を見せてから、左右に開いて表裏を見せると、子どもたちから「つながった!」という歓声が聞こえてくることでしょう。最初から、つながった形で見せてしまう方がいらっしゃいますが、あくまで、お約束どおりに! その方が、つながった時のインパクトが大きいですよ。

●今回読んだ本

びっくりさせて ごめんね。空から降ってきたものは、いったい……?

『ふってきました』
文:もとしたいづみ 絵:石井聖岳 講談社

●プラス1冊

「なにしてるの?」「まってるの」「いっしょにまってていい?」「いいよ」たろうがなにかをまっていると、どんどん仲間がふえてきます。でも、いったいたろうは、なにをまっているのでしょう……?

『まってました』
文:もとしたいづみ 絵:石井聖岳 講談社
この記事の画像をもっと見る(7枚)
ほんとあそぼう ぜんこくほうもんおはなしたい

本とあそぼう 全国訪問おはなし隊

たくさんの絵本を積んだ2台のキャラバンカーで各都道府県を巡回し、幼稚園、保育所、小学校や図書館、書店などを訪問している、「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。1999年7月に、講談社90周年記念事業として、スタートしました。 2007年には第55回菊池寛賞、2018年には、メセナ大賞にも選ばれました。 スタートして以来、通算2万2000回以上の訪問、190万人を超える参加者のみなさん、ありがとうございます。次はあなたの町でお会いできるかもしれませんね! https://ohanashitai.kodansha.co.jp/ X(旧Twitter):@ohanashitai55 Instagram:@kodanshaohanashitai

たくさんの絵本を積んだ2台のキャラバンカーで各都道府県を巡回し、幼稚園、保育所、小学校や図書館、書店などを訪問している、「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。1999年7月に、講談社90周年記念事業として、スタートしました。 2007年には第55回菊池寛賞、2018年には、メセナ大賞にも選ばれました。 スタートして以来、通算2万2000回以上の訪問、190万人を超える参加者のみなさん、ありがとうございます。次はあなたの町でお会いできるかもしれませんね! https://ohanashitai.kodansha.co.jp/ X(旧Twitter):@ohanashitai55 Instagram:@kodanshaohanashitai