子どもが性トラブルを報告してきたら「話してくれてありがとう」と答えてほしい

幼稚園や学校へいくと、様々なトラブルがおきますが、時に性にまつわるトラブルが起きることもあります。ケンカなどのトラブルとは違い、感じ方の違いがあるトラブルだからこそなかなか相手側や学校にトラブルの報告をするのが難しいと感じている人も少なくないと聞きます。

たかお「たしかに幼稚園などで子どもがスカートをめくられたり、ズボンをおろされたりというトラブルは起きます。とはいえ、性の話をあえてすることは恥だという考えが親側の頭をよぎったり、また、子ども同士のトラブルの場合、どうしても自分の子どもにも否があったのではないか、とか、相手の子がかまいたくてそういう行動をしてしまったのではないかと考えてしまったりすることで、わざわざ学校に報告をすることは避けることもあるようです」

みさと「でも、子どもがイヤだなと思って親に話をしてくれたことは、程度にかかわらず幼稚園や保育園、学校に伝えるべきだと思います。それこそズボンを下ろされたというようなことは、子ども自身がその場でイヤというだけでは解決できません」

たかお「大人ができることは子どもに性の話をすること以外に、性トラブルが起こらない環境を作ってあげることも含まれます。先生に話すのは引け目を感じるでしょうし、“モンスターペアレンツと思われないかな”と考えてしまうかもしれませんが、声を上げることで先生はもちろん、周囲の大人も性について改めて考えるきっかけになります。それもひとつの環境づくりです」

撮影:葛西亜理沙

みさと「それからスカートめくりだからと軽く考えて、大人は“一緒にふざけていたんでしょう”とか“○○ちゃんのことが好きだからちょっかいを出したんだね”と、つい些細な子どものおふざけにしたり​、軽く流したりしてしまいがちなのですが、これは絶対にしてはいけません。

子どもがイヤだという感情を訴えてきたのであれば『教えてくれてありがとうね』と必ず伝えてください。ここで否定をしてしまうと、もっと大きな被害に遭った際に言えなくなってしまう可能性が出てきてしまうのです」

たかお「例えば、知らないおじさんに触られたと子どもが話してきたとき、親はパニックになってしまい、つい感情的に “あの公園は行ったらダメと言ったでしょ!” とか、“なぜもっと早く帰ってこなかったの?” と口にしてしまうと思います。

親も間接的な被害者ですから、そういうことを口走ってしまうのはしかたないことです。ただ、そう言われると子どもは自分が悪かったと思ってしまい、またこういう被害に遭ったとしても心の中に納めておこうとしてしまいます。

でも被害者は絶対に悪くありません。次の被害を出さないためにも、なにかあったら話してもらえるように、親御さんは“話してくれてありがとう、教えてくれてありがとう”と言えるように心がけてほしいです」

みさと「わたしたち夫婦は、どんな状況になっても絶対に“教えてくれてありがとう”と言おうね、と日頃から約束をしています」

「どんなときでも子どもの訴えを受け止められるように、日頃から夫婦間で性被害にあった場合の最初にかける言葉を確認し合っています」(たかおさん)。  撮影:葛西亜理沙

たかお第1回で、自分が嫌だと感じることに対してノーと言えるようになることが性教育の大切なことと話しました。しかし、一歩家の外を出ると子どもが自分を守ることが難しい場面もあります。ノーと言えるからといって、子どもが必ず自分自身を守れるとは限りません。

性教育は防犯の手前、つまり、加害者を減らすという側面があると僕たちは考えています。幼いうちから正しい性に関する知識を持つことが加害者を減らすことにもつながるのです。

また、被害者やその親が自責の念に囚われないようにすることも大切です。残念ながら性犯罪の加害者は再犯率が高いのが特徴です。彼らが更生する機会を得るためにも、被害者が訴えやすい社会を作るきっかけとなるのも性教育の役割だと思います」

子どもが性について知識を持っていても、社会全体で子どもたちを守る必要があります。親も性教育の重要性について、家族間はもちろん、学校や友人とも共有ができるように一歩踏み出すことも大切です。

第3回は、人に聞きにくい子どもの性にまつわる悩みについてお伺いします。

取材・文/知野美紀子

医師夫婦ユニット・アクロストンさんインタビューは全3回。第3回は21年10月3日公開です。

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