2022.04.01

ブックマーク

言いたい事を言わせない…プロ作家が教えるリアルな登場人物を描く秘訣

YA作家になりたい人のための文章講座 #3

作家:石川 宏千花

十四歳のための小説を書いているわたしがお話できる5つのこと

ヤングアダルト小説(※)を「十四歳のための小説」と位置付けている、『化け之島初恋さがし三つ巴』を連載中の作家・石川宏千花さん。

「ほぼすべての人の中に十四歳はいる」と語る石川宏千花さんが、ご自身の創作の舞台裏を明かしながら、プロならではの視点で「ヤングアダルト小説」の書き方を解説する連載をおおくりします。

(※ヤングアダルト小説=童話と一般文芸の間をつなぐ、思春期世代のための作品群のこと)

連載第3回では、登場人物の設定について解説します。石川先生は「いいたいことを、登場人物にいわせない」と指南します。どのような執筆のコツがあるのでしょうか。

YA作家になりたい人のための文章講座
#1
#2
#3(←今回はココ)
#4(4月15日公開)
#5(5月1日公開)

2つ目と3つ目のお話

初回からおつきあいくださっている方、ありがとうございます。今回から、という方、まずはご説明いたしますね。

回数は少ないのですが、わたしも何度か講演会をさせていただいたことがあります。講演後、アンケート結果をいただくこともあるのですが、圧倒的に、『先生っぽくないのがもの珍しくてよかった』的なご感想が多いです。つまり、そういうことです。

そんなわたしがえらそうになにを、と我に返るとなにも書けなくなりそうなので、我に返らないうちに第3回目をはじめてしまおうと思います。全部で5つお話する予定の中の、今回は2つ目と3つ目です。

なんと初回では、5つのお話をしますよ、というところまでしかたどり着けていません(1つ目のお話は、第2回目からです)。そんな初回はこちらから。

②キャラクターとは考えない

小説の中に出てくる登場人物のこともキャラクターと呼ぶのが当たり前になって久しいですが、便宜上をのぞけば、わたし自身は自作の登場人物を、積極的にキャラクターおよびキャラという呼び方はしていません。

キャラだなんて呼びたくない! とかそういうわけではまったくなく、わたしの場合、主人公ですらプロフィール的なものは決めずに書きはじめるので、そこまでのものでもない、という気持ちがあるのだと思います。

キャラを立てる、といういい方がありますが、わたしの場合、物語がはじまる前には立つどころか生まれてもいないのです。

情けないことに、そうしないといかにも頭の中で作ったっぽい子を書いてしまうんです。最初にこういう子にしようと決めてから書きはじめると、その設定に振り回されてしまったりもします。

だから、自分では考えないようになりました。物語に考えてもらっている、くらいに思ってやっています。

物語の中の人として距離を取る

このやり方の利点は、物語の中に出てくる登場人物たちが、わたしのものではなくなるところです。正確にいうと、わたしの好きにしていいもの、という感覚が薄れる、という感じでしょうか。わたしの場合は意外にこれが有効です。

おとなが書いているのだからしょうがないといえばしょうがないのですが、できることなら、「ん? いま急におじさんがしゃべった? この子、中2男子のはずだよね?」なんて思われたくはないですよね。

作者の影響を受けていなければいないほど、そのうっかりは出にくくなるんじゃないのかな、とわたしは期待しているのです。

自分の好きなようにはできないものだと思うと、自分の中にはなかったはずの価値観や行動原理なんかが、ひょこっと顔を出すこともあります。そうなれば、しめたものです。

自分で作ったキャラクターとは考えずに、物語の中の人として、(精神的な)距離を取る。そうしておくことで、もうひとつメリットがあります。これについては、つづく3つ目のお話の中でご説明できればと思います。

③いいたいことはいわせない

わたしがYAを書くうえで、もっとも気をつけているといっても過言ではないのが、これです。

いいたいことはいわせない。

だれに? 登場人物に。
なにを? 作者のいいたいことを。

そう、わたしがなにより気をつけているのは、『作者であるわたしのいいたいことを、登場人物にはいわせない』なのです。

おとなって、自分よりも年の若い人が相手だと、少しでも役に立ちそうなことをいってあげたくなっちゃうものですよね。

たまたまわたしは、そういう傾向があまりないほうのおとなではあると思うのですが(いまだに自分がちゃんとしたおとなだという自覚がないゆえに)、それでもやっぱり、それをやったらあきらかにあとでつらい思いをするよ、という場面に遭遇すれば、なにかしら言葉をかけたくなってしまったりはします。

でも、YAおよび児童書の中では、それをやってしまったらだめだと思うんです。

するどい子はカラクリに気づく

自分が十代だったころ、おとなになにをされるといやでしたか? わたしは、自分でもわかっていることを指摘されるのがいやでした。

もっと自分に自信を持てばいいのに、とか、はきはきしゃべるだけでも印象変わるよ、とか、そういうことをいわれると、決まって思ったものです。「わかってるけどできないだけ!」って。

子どものころ、いわゆる子ども向けの本を読んでいるときにも同じような気持ちになることがありました。

子どもって意外におとなですから、そんなことまで? ということだってちゃんとわかっているものです。それなのに、「あなたはまだ知らないだろうけど、本当はこういうことなんだよ」なんて、気持ちよく読んでいた本の中でいわれたら……。

しかも、自分と同じ立場だと思っていたはずの主人公がそれをいい出したら? するどい子なら、カラクリに気づいてしまうはずです。そっか、作者はおとなだもんね、と。

YAならではの褒め言葉

YAって、おとなが書いたとは思えないっていう感想をもらえたときこそ、「よっしゃ!」ってなる、ちょっと特殊なジャンルだと思うんです。むずかしくなかったからすぐ読めた、とか、文章がシンプルで読みやすかった、なんていうのもそう。一般向けの小説の場合には、軽くディスられてる? となりそうなものですが、YAならば褒め言葉でしかありません。

いかにおとなである自分を出さずに、登場人物たちの気持ちやセリフを書くことができるか。代わりに物語の世界観や方向性には、これまでの経験や感じてきたことを、目いっぱい反映させて書く。このバランスをうまく取れれば『YA小説』になって、あえてあやうくすれば『十代が主人公の一般小説』になるのかな、と。

おとなとしてどうしてもこれだけはいっておきたい、ということがもしあったとしても、登場人物にはいわせない。これを徹底するだけでも、おとなが書いている、という不都合な事実が、だいぶぼんやりするんじゃないかとわたしは信じています。

2つ目と3つ目のお話は、ふたつでひとつかな、と思ったので、合わせてお話してみました。

次回は4つ目のお題、

④推敲、推敲、推敲!

です。

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(毎月1日、15日更新)

(画:脇田茜)

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