2022.03.01

ブックマーク

「十四歳のための小説を書く方法」作家が語る舞台裏とその秘訣

YA作家になりたい人のための文章講座 #1

作家:石川 宏千花

十四歳のための小説を書いているわたしがお話できる5つのこと

「ヤングアダルト」という言葉を知っていますか?

これは、「子どもと大人の間」の世代を指す言葉。童話と一般文芸の間をつなぐ、思春期世代のための作品群を指す用語としても使われています。

日本でも、図書館にヤングアダルトコーナー(YAコーナー)が設置されるなど、「文学ジャンル」として一般化しているヤングアダルト(YA)小説。

このジャンルを「十四歳のための小説」と位置付けているのが、『ユリエルとグレン』(講談社児童新人賞佳作受賞(2007年)、日本児童文学者協会新人賞(2010年))、『拝啓パンクスノットデッドさま』(日本児童文学者協会賞受賞(2021年))の著者で、『化けの島初恋さがし三つ巴』を連載中の作家・石川宏千花さんです。

「ほぼすべての人の中に十四歳はいる」と語る石川宏千花さんが、ご自身の創作の舞台裏を明かしながら、プロならではの視点で「ヤングアダルト小説」の書き方を解説する連載をおおくりします。

作家志望の読者はもちろん、あなたの中の「十四歳」に向けた作品に、心動かされたい全てのひとへ。第一回では、「ヤングアダルト小説」執筆のエッセンスをお伝えします。

YA作家になりたい人のための文章講座
#1(←今回はココ)
#2(3月15日公開)
#3(4月1日公開)
#4(4月15日公開)
#5(5月1日公開)

ヤングアダルト(YA)ってなに?

石川宏千花という名前を知ってくださっている方、いつもありがとうございます。

はじめて見たぞ? という方、はじめてお目にかかります。ざっくりと自己紹介をすると、児童書、その中でも主に、ヤングアダルト(YA)と呼ばれているジャンルで小説を書かせていただいている者です。

ヤングアダルト? なにそれ、子ども向けのいかがわしい小説? と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

これがね、ちがうんです。

簡単にいえば、児童書の中でも対象年齢が高めの読み物のことを指す言葉なんです(ヤングの中のアダルト、というわけですね!)

……なんですが、わたしは勝手に、『ヤングアダルト=十四歳のための小説』だと解釈しています。

YA=十四歳のための小説

「十四歳のためのって、ちょっと限定的すぎなのでは……?」

2022年のいま、2008年生まれの人だけが十四歳だと考えれば、確かにとっても限定的です。

思いきって告白してしまいますが、わたしはいまでも十四歳のころとまったく同じ傾向のものが好きだし、まったく同じ傾向のものに嫌悪感を持っています。

これって、十四歳のころの自分がいまもいっしょに生きているようなものなのでは、と思うのです。

逆に、十二歳だったころの自分を思い出してみても、とっくに十四歳の自分はいたような気がしています。もうちょっとさかのぼってみて十歳……うん、いました。いたいた。

これってきっと、わたしだけに起きていることではないですよね。つまり、よほどの低学年でない限り、ほぼほぼすべての人の中に十四歳はいる、と。

わたしはそう考えて、『YA=十四歳のための小説』を書いています。

YAを書くということ

ここまでの話をまとめると、わたしは十四歳のための小説を書いている、ということになります。さて、そこでこの記事のタイトルです。

YAを書いてみたい、と思ってこの記事を読んでくださっている方に、まず最初にお声をかけるとしたら、これしかありません。

「だれに読んでもらうためのお話を書きたいですか?」

児童書およびYAの書き手として、なによりも意識するべきなのは、まずはここ、といいきってしまっていいのではないかと思います。

もちろん、本当に素晴らしい、珠玉の作品は、大人も楽しめます。どの年齢向けのものであっても、です。そうでなければいけない、とも思います。

でも、だれに読んでもらってもいい、からスタートするのであれば、児童書およびYAである必要はありません。それは、いい意味でも悪い意味でも、『ただの小説』です。

わたしは、十四歳(中身が十四歳以上および以下の人も含む)に向けて、書いています。だから、専門的なことはよくわからないけれど、わたしの書いているものはYAだといいきってしまいます。いいきっていいと思っています。

そうなんです、わたしは児童文学を教える学部のある大学に通ったこともなく、養成講座や研究会といった場に身を置いたこともない、もともとは描くか造るかで食べていけたらいいなあ、とぼんやり思っていた美大生だったんです。

一冊の本との出会い

当時、一冊の本との出会いがありました。あまりに失礼な感想をこれから書くので、書名は伏せます。海外のめちゃくちゃ有名な児童書でした。

わたしはその本をすごく好きになって、そして、思ったのです。へえ、こういうのなら書けるかも、と。

とんでもない考えだということが、いまのわたしにならわかります。

へえ、こういうのなら書けるかも、とずぶの素人に思わせる作品ほど、モンスター級のすごい本であることは、本好きの方には周知の事実ですよね。

児童書作家。うん、いいな、悪くないな。就職活動をしたくなかったわたしは、鼻歌まじりにそんなことを思ったものです。当然のように、大学在学中にはなにひとつまともなものは書けず、苦しくつらい就職活動をして、社会人になりました。

鼻歌まじりの、うん、いいな、悪くないな、が完全に記憶の彼方に消え去ってからの投稿と、運がよかったとしか思えない講談社児童文学新人賞の佳作受賞。そこからのいまなのです。

わたしが案外ちょうどいいかもしれない理由

そんなわたしが、YAを書きたい方のための文章講座? ぞく、と背筋が冷えるような確認です。書くの? わたしが? 本当に? でも、書くことにしてしまいました。書いてみませんか、といっていただけたからです。

(そんなわたしの仕事ぶりに、ちょっと興味が出てきたぞ、という方、ちょうどよかったです。新連載『化け之島初恋さがし三つ巴』がはじまっています。これを書いた人がこの文章講座的なものをね……ふむふむ、という楽しみ方もしていただけるかと!)

書いてしまってもいいのかも、と思った理由がもうひとつあります。専門的な勉強はしてこなかったけど、YAを書きたい、と思われている方には、わたしのしてきたことや考えていることをご参考にしていただくのは、案外ちょうどいいのかもしれない。そう考えたんです。

具体的な5つの書き方

児童書の世界には、書きながら教える立場にもいらっしゃるような、プロの中のプロ、という方がたくさんたくさんいます。正直、わたしはまだまだ、そういう方に教わる側なんじゃないかとも思っています。

でも、だからこそ、これから書きたい、という方に、めちゃくちゃ近いところにいる書き手として、伝えられることはあるのかもしれない。そう納得したのです。

というわけで、この文章講座はそういう感じなんです、ということをみっちりお伝えしたところで、ここからようやく具体的な書き方のお話になります。

①題材選びは肝の肝
②キャラクターとは考えない
③いいたいことはいわせない
④推敲、推敲、推敲!
⑤好き、推し、は絶対的な味方


わたしがYAを書く上で、これだけは! と気をつけていること、ベースにしていることを、ざっと5つにわけてお伝えしていこうと思います。 

どれかひとつでも、「そうだったのか! それがわかれば話は早い!」と思ってもらえる情報になりますように……と願いつつ、後編につづきます。

関連リンク

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#1(←今回はココ)
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#5(5月1日公開)

石川宏千花さんの新シリーズ『化けの島初恋さがし三つ巴』、コクリコで連載スタート!
(毎月1日、15日更新)

(画:脇田茜)

14歳のためのW連載記念! YA小説『化け之島初恋さがし三つ巴』イメージ動画

いしかわ ひろちか

石川 宏千花

作家

『ユリエルとグレン』で、第48回講談社児童文学新人賞佳作、日本児童文学者協会新人賞受賞。主な作品に『お面屋たまよし1~5』『死神うどん...

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