2022.04.15

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「うまく話がまとまらない」時は【異常な回数の推敲】を試すべし

YA作家になりたい人のための文章講座 #4

作家:石川 宏千花

十四歳のための小説を書いているわたしがお話できる5つのこと

ヤングアダルト小説(※)を「十四歳のための小説」と位置付けている、『化けの島初恋さがし三つ巴』を連載中の作家・石川宏千花さん。

「ほぼすべての人の中に十四歳はいる」と語る石川宏千花さんが、ご自身の創作の舞台裏を明かしながら、プロならではの視点で「ヤングアダルト小説」の書き方を解説する連載をおおくりします。

(※ヤングアダルト小説=童話と一般文芸の間をつなぐ、思春期世代のための作品群のこと)

連載第4回では、「推敲」について解説します。「プロットというものが、あまり得意ではありません」と打ち明ける石川先生が身につけた「執筆方法」とは、どのようなものだったのでしょうか。

YA作家になりたい人のための文章講座
#1
#2
#3
#4(←今回はココ)
#5(5月1日公開)

4つ目のお話

早くも第4回目です。初回からおつきあいしてくださってる方、ありがとうございます。つづけてきた甲斐がありました。

はじめての方、ここから読んでいただいても、いってることがよくわからない……とはならないと思いますが、通して読んでいただければ、よりすっきり、いってることはわかった、と思っていただけるかもしれません。(第1回目はこちらから)

今回は、わたしがお話しできる5つのことの4つ目です。

④推敲、推敲、推敲!

執筆した原稿を読み直して、おかしなところはないかと自らチェックするのが推敲です。

どの文章講座でも、「大事! すごく大事!」といわれているものだと思います。わたしのこの文章講座的なものでも、そこは否定しません。否定しないどころか……というお話をこれからするのですが、その前にまず。

同業者の方とお話ししていると、原稿の書き方というのは人それぞれだなあ、とつくづく思います。依頼をいただいて執筆する場合、大抵はプロットというものを最初に書くのですが、このプロットからして人それぞれです。

プロットというのは、小説の予想図みたいなもののことです。こういうお話になりますよ、という説明を、コンパクトにまとめて担当編集さんにお渡しするのですね。

わたしはこのプロットというものが、あまり得意ではありません。登場人物の詳細を決めずに書き出すのと同様に、物語の詳細も、なるべくぼんやりさせておいたほうが書きやすいのです。

じつはこれが、ちょっとしたコンプレックスだったりもします。

結末まできちんと決まっている完璧なプロットを作って、その通りに書き上げることができるのはすごい、プロだ……! という憧れがあるからです。

書き方は人それぞれとはいえ……

もちろん、めちゃくちゃすごい作家の先生の中には、「プロット? そんなの書いたことないわよ、あははー」という方もいらっしゃいます。(この通りにおっしゃるのを聞きました。この耳で!)

その先生は、なにも決めてなくてもすごい作品が書ける方なんです。ただのモンスターなんです。だから、プロットを出してっていわれたこともない、という方なんです。なので、そういう方は別枠として、のお話としてお読みください。

話をわたしにもどします。

さらにわたしは、とりあえず最後まで書いてみる、ということも、できなかったりします。

よく聞くのが、ラフスケッチのように、枝葉の部分はあとまわしにして、全体像をざっくり書いてしまう、という書き方です。結末まで書いてしまってから、肉づけをしていくわけですね。
 
これもまた、プロとして書かれている方ならではの書き方だな、とため息が出てしまいます。締め切りが厳然としてある原稿の場合、いいラストが思いつかない、という事態に陥るわけにはいきません。たいへんなことになります。

結末まで書いておいて、あとは全体を整えるだけ、という書き方なら、そのリスクはゼロです。うん、プロです。プロのお仕事です。(しつこいようですが、先述のモンスター系の先生方は別枠です)

それに比べてーー。

というわけで、いまだにわたしは胸を張って、作家です! とは名乗れずにいるのですね。

ここまでのお話で、「なーんだ、何冊も出してるのにそんな書き方してるんだ」「それなら自分もたいして変わらない書き方してる」と思われた方。

……ふふ、ふふふ。

ここでとうとう、4つ目のお話になります。

プロの作家らしくはないかもしれないけれど

これはさすがにやっている方が少ないんじゃ……ということも、じつはやっているんです。

それが、『異常な回数の推敲』です。

執筆一日目、10ページ書いたとしますよね。執筆二日目には、その10ページを読み返してから、その日の分を書きます。このくらいなら、まあやるよね、かもしれませんが、これがずーっとつづくんです。三日目になっても、一週間目になっても、三週間目になっても、必ず最初の1ページ目から、書いた分だけ読み返すんです。

要するに、毎日必ず、書いた分だけ推敲をするんですね。まあまあな分量になるまでは、これをつづけます。これをやっていると、誤字脱字は自然となくなっていきます。まずこれが大事だと思うんです。余計な文章の引っかかりがなくなれば、セリフの違和感や、物語の矛盾にも気づきやすくなりますから。

とにかく、しつこくしつこく読み返します。そうしているうちに、すみからすみまで覚えてしまうので、そこまでいったら読み返すのは前日分くらいからになります。そのころにはもう、物語の手触りのようなものが変わりはじめているので、1ページ目から読み返さなくても大丈夫になるんです。

泥だんごをイメージしてみてください。丸めはじめのころは、ぼこぼこしていますよね。手でなで回しているうちに、少しずつなめらかになっていって、最後にはつるつるの球体になります。

ぼこぼこしているときの物語には、まだまだ書き足りないところや、逆に書き過ぎているところがあるということです。推敲して推敲して、ちょっとずつなめらかにしていくと、あるとき、つるん、と手触りが変わるときがきます。そのときが、「はい、このまま書きつづけても大丈夫な物語になったよー」という合図です。

つるつるになればなるほど

あとは、どれだけつるつるのきれいな球体にできるか。

つるつるになればなるほど、その物語は余計なストレスを与えることなく、するすると読んでもらえる文章になっていくということだし、きれいな球体に近づけば近づくほど、読み終えたときに、「あー、読んでよかった」とシンプルに満足してもらえる物語になっているということーーそう信じてやっています。

これが、わたしの書き方です。どうですか? ちっともプロっぽくないですよね。効率も悪いし、泥だんごをたとえに出したからというわけではありませんが、なんだか泥くさいし。それでも、著作がある身にはなれています。

……推敲、すごくないですか? 

あくまでもわたしの場合、の話ではあるのですが、もし「うまく話がまとまらない」「書いているうちになにを書いているのかわからなくなっちゃう」と感じてらっしゃるようなら、『異常な回数の推敲』、試してみるのはありだと思います。

次回は、

⑤好き、推し、は絶対的な味方

最終回です。

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(毎月1日、15日更新)

(画:脇田茜)

14歳のためのW連載記念! YA小説『化け之島初恋さがし三つ巴』イメージ動画

いしかわ ひろちか

石川 宏千花

作家

『ユリエルとグレン』で、第48回講談社児童文学新人賞佳作、日本児童文学者協会新人賞受賞。主な作品に『お面屋たまよし1~5』『死神うどん...

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