2022.03.09

ブックマーク

「SDGs本」なぜ売れる?若者世代と学校教育の変化がスゴい

学校図書館で注文トップ、背景に切実なニーズ

問題は「待ったなし」Z世代74.1%がSDGs重視

持続可能な社会を実現するためには、解決すべき課題がいくつもある(画像はイメージです(写真:アフロ))

「SDGs(持続可能な開発目標)」というワードを「見たことも聞いたこともない」という人は、2022年の今、ほぼいないでしょう。

2015年にニューヨークの国連本部で開催された世界サミットで、SDGsが「世界共通の目標」として掲げられてから7年。しかし「言葉は知っていても意味は知らない」「自分の暮らしには関係ない」と感じている読者は、まだまだ多いのかもしれません。

とはいえ、悠長に「他人事だろう」と構えていられる時期は、もうとっくに過ぎているようです。未曾有の気候災害や、マイクロプラスティックによる海洋・海産物への影響など、環境問題は「待ったなし」の深刻な状況です。

コロナ禍の生活では、「貧困」や「ジェンダー格差」が今まで以上に浮き彫りになり、これらの問題が私たちの暮らしに直結していることを、実感した読者も多いのではないでしょうか。

(日本における温室効果ガスの総排出量は11億4,900万トン(2021年:国立環境研究所)、ひとり親世帯の貧困率は48.1%(2019年:厚生労働省)、ジェンダーギャップ指数の総合スコアは0.656(156ヵ国中120位(2021年:男女共同参画局)と、各分野で解決すべき大きな課題を抱えている)

実際、これからの未来を担う「Z世代」は、SDGsに掲げられている17のゴールを「自分ごと」として、上の世代よりも強く身近に感じているようです。(Z世代=1990年後半から2000年代生まれの若者世代)

2021年12月に発表された【Z世代サステナブル意識調査】によると、「SDGsや社会的課題への取り組みを行う企業に対する印象」について、「好感が持てる」「製品・サービスを利用したいと思う」「働いてみたいと思う」すべての項目で、Z世代はそれ以上の世代より多く、「とても当てはまる」と回答しています。

また、「今後、SDGsを意識した行動に取り組みたいと思うか」を問う項目では、 Z世代よりも上の年齢層(Y世代以上)の69.9%が肯定的な回答だったところ、Z世代の中でも特に学生は74.1%と、より高い割合で肯定的な回答がありました。(出典:「Z世代の意識調査 SDGsに取り組む企業を高評価」日経新聞

SDGs作品が学校図書館で注文トップ、背景に切実なニーズ

Z世代より下の世代では、今後さらにSDGs意識が高まると予想されます。2020年度から小学校、中学校、高校と順次実施されている新学習指導要領(※)において、「SDGsの担い手を育てること」が明記されているからです。

(※「学習指導要領」。全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定める教育課程(カリキュラム)の基準。子どもたちの教科書や時間割はこれを基に作られる。新しい学習指導要領は、小学校:2020年度~、中学校:2021年度~、高等学校:2022年度~の実施となる)

授業でSDGsを取り上げる学校が増えたのを受け、児童書でもSDGsをテーマに掲げた書籍が登場し始めました。実用書形式や、漫画、創作童話など、さまざまなタイプの作品が刊行されています。

中でも、2020年から刊行を開始した「おはなしSDGs」シリーズは、学校図書館向けのセット販売で注文数1位(※)を記録。売れ行き好調の背景には、SDGs教育に対する、学校現場の切実なニーズが伺えます。

(※2020年〜2021年刊行「おはなしSDGs」シリーズ第1期セット/2021年度NCL(学校図書館巡回販売グループ)でのセット販売部門・注文数1位)

SNS、テレビでも…SDGsテーマが大人に波紋

SDGs注目の広がりは、学校現場だけではありません。「おはなしSDGs」シリーズから<貧困>をテーマに取り上げた記事「夕飯にお菓子を食べる…「相対的貧困」に陥った、子どもたちの厳しい現実」は、配信直後からSNSで多数シェアされ、注目を集めました。

テレビの世界でもSDGsは重要なトピックです。情報番組「王様のブランチ」(TBS系)では、SDGs特集として同シリーズを紹介(2021年5月1日放送)。「物語をたのしみながら学べる」SDGsテーマの書籍として、大きく取り上げました。

SDGs企画は「きっと必要になるはず」…紙やインクも環境に配慮

「学校図書館で最も必要とされている」SDGsテーマの童話シリーズは、どのようにして出来上がったのでしょうか。シリーズを刊行している、講談社児童図書編集チームの片寄太一郎編集長に話を聞きました。

「SDGsという単語を耳にしたのは2017~2018年だったでしょうか。チームでは毎年、10冊前後をセットにして図書館向けに売る幼年童話のシリーズをつくっているのですが、その頃に俎上に上がったのがSDGsでした。

当時は、大人でさえ理解するのが難しい世界規模の課題を物語形式で伝えるのは難しいだろうと、企画はいったん立ち消えになったのですが、前任の編集長に『この企画は、学校現場できっと必要になるはずだ』という強い思いがあり、それを引き継ぐかたちで刊行に至りました。

このシリーズを編集すること=SDGsを体感すること、でもありました。SDGsの各ゴールを示すロゴは、書籍のカバーに当然入れたいところです。しかし、そのためには国連の許可を取らねばなりません。国連に申請してみると、『この出版物がSDGsの目標と合致していることを示さなくてはならない』という条件を突きつけられました。

そこで、責任ある木質資源を使用した紙を手配できるかの調整が始まり、その紙を使っていることを明記する文言を検討し、印刷インクには植物性のベジタブルインキを使用し……いくつかの課題をクリアし、なんとか出版にこぎ着けたという内幕があります。

出版業にとってSDGsを実行することは、単純に『いいことをやっています』とアピールできるものではないと強く思いました。自らの手間も厭わず、大目標に向かえる覚悟が問われると思います。おそらく、その構造は他の業種でも変わらないでしょう。

このことをきっかけに、私たちの部では、他の新刊書籍でも、環境適応紙を使用するなどSDGsを意識した動きが始まっています」

児童書は「学びの入り口」

今、私たちが抱える問題を解決し、SDGsを達成するために。

世界が協力して向かうべき「持続可能な社会を目標とする17のゴール」の、具体的な内容や意義をわかりやすく伝える児童書は、最適な「学びの入口」と言えるでしょう。あなたもまず、読んで知ることからはじめてみませんか?