【一方通行!?】あなどれない親子の会話。子どもを伸ばす声かけ、できてる?

筒井 裕子

数ある育児本の中から名著を読んだ気!
今回は『子どもの話にどんな返事をしてますか? ―親がこう答えれば、子どもは自分で考えはじめる』を
3人の子どもを育てるママライターがレビュー。

タイトルでドキッとしたあなた、必見です。

あなたは日々、子どもの話にどんな返事をしてますか?

ドキリ、これは読まなきゃいけない、直感でそう思ったんですよね。
〇〇育児のすすめ、とか、〇〇のような子に育てる、だとか、いかにもハウツー本のようなタイトルは読む前から心が折れる質で。

そもそも子育ては子どもが100人いたら100通りだと思うし、我が子3パターンを見ただけでも個性がバラバラで、
ひとつの答えには到底まとまりっこない。本1冊で解決できたら日々こんな苦労してませんって。
そんな、ちょっと育児本にひねくれた先入観を持つ私が、表紙を見ただけで読もうと思えたのがこちら。​

『子どもの話にどんな返事をしてますか? ―親がこう答えれば、子どもは自分 で考えはじめる』

『子どもの話にどんな返事をしてますか?』(著:ハイム・G・ギノットト 草思社刊)親と子の会話のコツがわかる!!世界500万部超えのベストセラー

子どもをどうコントロールするかじゃなく、大人がどう対応するか、こちら側を試されてる感じが妙に好感持てて。
そして何より、自分の弱点を突かれたような気がして。
一見、単純な質問を投げかけているだけのようなこのタイトルが、妙に目にとまったわけです。​

かみ合わない会話の原因は、お互いの話をほとんど聞いていないから

我が家の末っ子は絶賛イヤイヤ期。子育て経験3回目を以ってしても、未だイヤイヤ攻撃の免疫は全くついていない自分に驚く今日この頃。
そんな余裕がない中、まだまだ手のかかる歳頃の上の子たちからは「聞いて!」「見て!」の嵐。
聖徳太子にでもならない限り、永遠にこの子たちの会話はさばけない、そう毎日思いながらなんとか相手をしております。

できるだけ手短かに話を終わらせたい、そんな癖が知らず知らずのうちについていて、子どもが少し余計なことをしようものなら、たちまちその会話は殺伐としてしまうのがお決まりコース。

例えば
「(テーブルなど一般的に登ってはいけないとされる高い場所から)ママ、見て! すごいでしょ、ママより背が高いよ!!」

と自慢気に言ってくる子どもに対して、バッサリと、

「そこ登っていいところだっけ!? ダメだよね、何回言ったら分かるの!?」

といった具合に、眉間にシワを寄せ、無意識に高圧的な物言いになってしまう鬼母ちゃん。
相手は、自分が無償の愛を注ぐ、可愛い我が子であることは間違いないのに。

もちろん親としてはしつけ、そして何より危険だという注意喚起のつもりだけど、これって結局効率よく物事を進めたい大人の癖を押し付けてるんですよね。

この話、子どもが伝えたい主旨とは、かけ離れたところに話が着地してるの、分かります?

ママより背が高くなって嬉しかった、という本来のメッセージを完全に無視してるんですよ。
って偉そうに自分の行いを分析してますが、本書の中の
『親子の会話をよく観察してみると、どちらもほとんど相手の言うことを聞いていない』という一文で、ハッとさせられたわけです。

ちなみに別の文中にはこうもありました、『効率性は幼児の敵である』と。
はい、恐れ入りました。イライラして体力を使った割には、たいした成果もあげられず、
結局、子どもは数日後には同じことを繰り返すという、まさに不毛な争い。
無理もない、お互いの話を聞いてないわけだから、分かり合えるはずないんです。

子どもを「尊重」するということ

本書で著者が指摘、提言してくれていることに何度深く頷いたことか。この
言葉、忘れたくない! と思い、読み進めながら貼った付箋がびっしり。

一通り読み終えて思うのは、著者の答えは一貫していて、子どもの気持ちを否定するのは事態を悪化させるだけ。
親は子どもの気持ちに寄り添い、受け止め、思いやりを持って接するべきということ。

それが結果、親にとっても平和で幸せな道につながると。

それを著者はしばしば“尊重”という言葉を使って説明してくれています。
主に親は子を尊重すべきだと。尊重……正直、意識したことなかったです。
子どもを尊重するって、どういうことだろう?

私の口癖は「早くしなさい!」「ママの言ってること聞いてた?」「いい加減にしなさい!」(実際はもうちょっとお口悪い)
他にもあるけど、だいたいこのあたりの言葉をまわして会話と呼べない会話をしてる感じ。

こんな一日に尊重の“そ”の字もないですよね?(笑)

ほめ方ひとつで子どもは変わる

考えてみるとなぜ子どもに対してこんなにも横柄な態度をとれてしまうのだろうという疑問。
友人関係は良好に築けるのに、相手が我が子となった途端、これですよ。

なぜなのか……ズルいけど答えはおおよそ分かってるんです。
こちらが何を言っても子どもの絶大なるママ愛に裏切りがないことを知っているから。
いくら自分の身体から出てきたとはいえ、考えてみれば自分とは全くの別人格の人間にとても失礼な話。
この本を読んで、そんな基本的なことに気づかされることとなりました。

今この本に出合えて、変な言い方ですが、助かった!

今までの親子の会話は、知らず知らずのうちに親の一方的な押し付けが主だったのかもしれないと思うとちょっと恐ろしくて。
この職業に就いておきながらお恥ずかしい限りですが、今更“言葉の持つ力”というものを思い知らされた気分なのです。

親がどう声かけをしてあげるかによって、子どもの行動、考え方は大きく変わるのだそう。素直になるか反抗的になるのか、自立心をはぐくめるか。
ほめ方ひとつでも、子どもに自信をつけさせてあげられるか、はたまたプレッシャーを与えてしまうのか、導かれる方向は両極端だと。

何気ない日々の会話のやりとりが、子どもの人格を作る上で大きな影響力を持っていることが、本書からひしひしと伝わってきたわけです。

大事なのは、会話をシンプルに楽しむこと

もちろん、この本に書かれていること全てが実行に移せるとは到底思えず。
イライラに身を任せ冷静に返答できない時だってあって当たり前、人間だもの。
そんなうまくいく訳ない! と突っ込みたくなる例もあったけれど、それでも、本当に会話一つで変化があるなら、地道に少しずつ、我が子への声かけに試してみても損はないのかも。
幼児期から会話がデリケートになる思春期の子を持つ親まで、幅広い層にヒントを与えてくれる一冊だと思います。

朝起きて、今日は怒鳴らない、口うるさく言わない、笑顔で過ごそう! と決意したのも束の間、夜になると子どもの寝顔を見ながら一日の行いをひどく後悔し、反省を繰り返す……。
これ、私なんですけどね、同じく心当たりがある方、子どもとの無意味な論争を繰り返す前に、この本で親子の会話のコツを知るのもひとつの手かもしれません。

本当に子育てに必要なのは、何を経験させてあげるとか、何を買い与えるとか、どれだけ質の良い教育を受けさせてあげるとか以前に、日々子どもにきちんと向き合い、ただシンプルに親子の会話を心から楽しむことなのかもしれない。
これは本書を読み終えて私が辿り着いたひとつの答えです。

つつい ゆうこ

筒井 裕子

ライター

ViVi、FRaUなどの女性誌出身ライター。小二、年中、2歳の3児の子育てに奮闘中。

ViVi、FRaUなどの女性誌出身ライター。小二、年中、2歳の3児の子育てに奮闘中。