金田一先生に聞く「ヤバい」を連発する子どもに親ができる語彙力アップ

国語の神様・金田一秀穂先生に聞く「国語力を養う親子の時間」#2〜子どもの語彙力アップ編〜

日本語学者:金田一 秀穂

“国語の神様”が考える、「言葉を知っていること」のメリットとは?
写真:菅沢健治

子どもにまず身につけさせたいものは「読み書きそろばん」と昔からよく言われます。そのため、家庭でも「読み」と「書き」の能力を育もうとがんばる親は多いでしょう。

でも、それはそもそも何のため? 子どもの語彙力を増やすと、どんないいことがあるのでしょうか? そして親ができることは? 

“国語の神様”と呼ばれる日本語学者の金田一秀穂先生に聞いてみました。(全4回。#1を読む)

語彙力を増やすメリット① 物事を正しく認識できる

幼児の場合、目の前にお父さんとお母さんがいたら、二人を頭の中で区別しないといけない。その時、二人に、「お父さん」「お母さん」という名前があれば、区別してみることができます。さらに発展して「男の人」「女の人」、あるいは「年上」「年下」というように分類をする。

区別して分類して、それぞれの特徴を考える。その土台となるのが、言葉なんです。

あることが起きて、「事故」か「事件」かを判断しないといけない時に、言葉の違いを認識していれば、「事件ということは、何かいけない人がいたんだろうな」「事故ということは、失敗したんだな」などと、物事を正しく理解し、考えることができます。

また、「涼しい」「肌寒い」「寒い」といった言葉の細かな違いが分かると、「今日は12℃だから寒くなりそうだ」と言われたら、「寒い? じゃあ上着が必要かな」と考えることができます。

ここで、もし子どもが「寒い」と「涼しい」を混同して認識していれば、「寒い? じゃあ半袖のままでいいかな」と考えてしまう。これは困ったことになります。

言葉とは、「物事を考えるための道具」なんです。

道具とは、生活をより便利にするためのもの。道具である言葉を豊富にストックしておくと、物事がより理解できるし、考えて行動することにつながります。これが大きな利点なのです。

語彙を増やすメリット② 物事や感情をより正確に伝えられる

語彙が豊富になると、物事や感情がより伝わりやすくなるという利点があります。

さらには、洗練された表現、あるいは誤解を招かない表現、不快にさせない適切な表現で伝えることもできます。裏を返せば、語彙が乏しいと、表現が大雑把になってなかなか伝わりにくくなります。

例えば、寒さ一つとっても、「底冷え」「風冷え」「肌寒い」「歯の根が合わない」など多様な表現があります。語彙が豊富だと今自分が感じている寒さを、より正確に表現できますよね。

それは、ピアノや絵でその人の技術や感情を表現していくのと似ています。やはり言葉は表現するための道具、伝えるための道具なんですよね。

生活の実用性を考えると、例えばハサミだって、文房具用、ヘアカット用、枝切り用などと用途別にあると便利ですが、一つのハサミですべてをまかなうのは少々不都合ですよね。語彙も同じこと。たくさん持っていたほうが、コミュニケーションを取る上で、より便利なんです。

金田一先生が客員教授を務める、杏林大学井の頭キャンパスにて。
写真:菅沢健治

語彙を増やすメリット③ 言葉を道具にして考えを深められる

僕は今日このインタビューでも、考えながら、言葉を変えながら、結局は同じようなことを繰り返し話しています。

「今日、何について聞かれるんだっけ?」とか言いながら、何を話すか決めずにしゃべり始める。そしてしゃべり終えた後、結局自分はこういうことが言いたかったんだなってことが、ポコッと出てくるわけです。

もし僕が聞き手だったら、相手が考えながらしゃべっているのを聞いて、筋道や思考回路を読み取りたい。ここれが言葉を使う、そして話す、モノを書くことの本質だと思うんですね。

ですから、小さいお子さんは、できるだけ多くの言葉を身につけ、思ったこと考えていることをどんどん言葉にして話していくといいでしょう。そうすることで、考えが深まり、整理され、自分が言いたいことがより相手に伝わるようになるんじゃないかなあ。

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