2021.12.02

赤ちゃんはハデ好き!? 新生児の“謎行動”を発達心理学者が解説

発達心理学者・坂上裕子教授「謎行動にはワケがある。もっと知りたい赤ちゃんの気持ち」#1~新生児期編~

発達心理学者:坂上 裕子

大学で発達心理学を研究する坂上裕子教授に新生児期の謎行動について解説いただきました。
写真:アフロ

「抱き上げると嫌がるのに、下ろすと抱っこをせがむ」など、ワケのわからない行動が多い、赤ちゃん。そんな様子に悩んだり、戸惑う親は多いと思います。

坂上裕子教授は、青山学院大学教育人間科学部心理学科にて発達心理学を専門とし、乳幼児期の発達についての研究を行うほか、育児応援番組『すくすく子育て』(NHK Eテレ)などにも出演。
子育て支援活動にも従事されている坂上教授に、赤ちゃんの不思議な行動=“謎行動”について伺います。

1回目は、新生児の“謎行動”の秘密を紐解きながら、子育てに対して疑問や不安を持つパパママが、育児を前向きに楽しめるようになるアドバイスをご紹介します。(全3回の1回目)

反射行動が新生児の気持ちを知るヒント

一般的に、『新生児期』と呼ばれる生後0日~28日未満の赤ちゃんの行動は、“ミルクを飲んで、眠り、排泄をする”といったもの。これは「体のリズムを作るためベース」と坂上教授は語ります。

「何かを『やりたい』といった、意図のある自発的な行動はまだありません。例えば、親が指を近づけると赤ちゃんがつかんだりしますが、これは反射的な行動によるもので、親が近くにいるとわかってやっているわけではないのです」(坂上教授)

そんな「中枢神経系」が、新生児の謎行動を理解するための、ひとつのカギになります。

例えば、新生児における代表的な反射行動と言えば、「生理的微笑」があります。これは、中枢神経系の働きによって笑顔のような表情に見えるものですが、坂上教授によると赤ちゃんの状態も関係していると言います。

「生理的微笑は、中枢神経系の働きによる顔の筋肉の運動です。ただし、赤ちゃん自身が快適な状態でないと起こりません。意思を持って微笑んでいるわけではありませんが、微笑みたくなるような心地よさを感じているのかもしれません」

赤ちゃんが人によって反応を変えるのは「好き」「嫌い」じゃない

ここからは、新生児ならではの謎行動をQ&Aで解き明かします。

<Q1>
赤ちゃんは、皮膚感覚が育つにつれて、抱き上げるなどのスキンシップに対して安心感を覚えると言います。ですが、『ママが抱っこをすると泣き止むのに、パパが抱っこをすると泣き出してしまう』というように、スキンシップを取る相手によって反応が異なるのはなぜでしょうか?

<A1>
「新生児期の赤ちゃんは、人の分別がまだできない。ですから、“ママ”か“パパ”かで反応が異なるのではなく、スキンシップを取っている相手の緊張感が赤ちゃんに伝わることで、赤ちゃん側の反応が異なってくるのかもしれません。

赤ちゃんを抱き慣れていない人だと、抱き上げるときにどうしても緊張してしまい、自分でも気がつかないうちに体がこわばってしまうもの。こわばって硬くなった体よりも、リラックスしたやわらかい状態の体の方が、抱き上げられたときに赤ちゃんは心地よさを感じます。

例えば、家でいつも一緒にいるパパが抱き上げると泣いてしまう赤ちゃんでも、日中しか会わない保育士が抱き上げると泣かないのは、後者の方が赤ちゃんの安心するスキンシップの取り方を心得ているからという可能性が考えられます」(坂上教授)

新生児が母親と父親で異なる反応をすることにより、夫婦間で「ママの方が好かれている」「パパのことを嫌がっている」という会話が出ることもあると思います。ですが、この反応の違いは「赤ちゃんが心地よいと感じるスキンシップをできているか、どうか」によるものだったんですね。

新生児ははっきりとした色や複雑な柄が好き!?

新生児は、視覚や聴覚から入ってくる情報に対しても、さまざまな反応をします。

<Q2>
この時期の赤ちゃんは、30㎝ほど先がぼんやり見える程度の視力しかないと言います。ただ、親が身につけている服の色によって、目で追ったり、追わなかったりがある様子。色が何か心理的印象を与えているのでしょうか?

<A2>
「赤ちゃんの見えている範囲に親が手をかざして動かすと、それを目で追うことがあります。このとき、新生児から見える世界はモノクロで、色の濃淡しか分別できていません。色彩を認識する神経系が働くようになるのは、もう少し先、生後2、3ヵ月くらいです。そのため、親が身につけている服の色に反応している訳ではなく、赤や黒など周囲とのコントラストがはっきりした色の方が目で捉えやすいということなのです。

一方で、赤ちゃん用のおもちゃはパステルトーンのものが多いですよね。これは、赤ちゃんからすると彩度がすべて同じなので、模様はぼんやりとしか見えていない可能性があります。調査によると、『赤ちゃんは複雑な模様を好む』という結果も出ている。一見、刺激の強そうな赤や黒といった派手な色や模様が入ったおもちゃの方が、赤ちゃんは退屈せずに遊ぶことができるんですよ」(坂上教授)

「ベビーブルー」「ベビーピンク」など、淡い色を指すときに「ベビー」と言うことから、新生児がパステルトーンを好むと勘違いしている人もいるのではないでしょうか。新生児にとっては、派手な色や複雑な模様の方が見ていたいと感じるのは、意外ですよね。

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