「母乳とミルク」噂の真相を東大医学部卒のママ医師が一刀両断

教えて、もりたま先生! 「母乳とミルク」のウソ・ホント #2

長男の夜泣きに苦しんだ自身の経験と知識を生かし、小児スリープコンサルタントとしても活動するもりたま先生。  写真:村田克己

ネットで簡単に情報が手に入る時代。母乳とミルクについても、検索すればウソかホントか、たくさんの記事がヒットして困惑するママも多いはず。そこで第2回は、東大医学部卒の医師で2児のママでもある“もりたま先生”こと森田麻里子先生に、母乳とミルクにまつわる“噂”の真偽を科学的な視点から解説していただきます。

「母乳育児のほうが風邪を引きにくい」はホント

――「ミルクよりも母乳のほうが健康に育つ」とはよく言われますが、本当なのでしょうか?

もりたま先生「風邪のような急性疾患にかかる割合は、たしかに母乳を飲んでいる子どものほうが低いと言われています。子どもに多い慢性疾患のひとつ・ぜんそくは、議論が分かれるところです。ぜんそくは小さいうちにはっきり診断するのは難しい病気ですが、2歳ぐらいまでで『ゼーゼー』と苦しそうな呼吸をするのは、母乳で育った子どものほうが少ないようです。

ただ、それがぜんそくなのかというと難しいところで、母乳を飲んでいると風邪を引く割合が低いから少ないのではないか、という考えもあります。母乳を飲まなくなり、3・4・5歳と成長したときの差はないんじゃないかと。まだ、はっきりとした答えは出ていません。逆に言うと、ものすごく大きな差は、おそらくないと思います。アトピーについても同様ですね。

病気については、個人差の範囲も大きいと思います。私の長男はほぼ母乳育児でしたが、何度も中耳炎にかかって、しょっちゅう薬を飲んでいました。一方で次男はミルクがメインの混合だったのですが、ほとんど熱を出しませんでした。コロナ禍で気をつけていたのもあるかもしれませんが、一概に母乳だったら元気で、ミルクだったら病気になりやすいということではありません。

ひとりの子どもで考えたとき、もしミルク育児だったら、もっと風邪をひいていたのかもしれないなど、その程度のこと。トラブルがなければ、もちろんメリットの多い母乳をおすすめしますが、心身をすり減らしてまで母乳育児にこだわる理由はないと思います」

――食物アレルギーに関しては、どうでしょう?

もりたま先生「これも議論が分かれるところです。これまで比較的信頼性の高い研究で、完全母乳育児の子どものほうが、牛乳アレルギーが少なかったというものがありました。でも、最近、生後1ヵ月から牛乳由来のミルクを少しずつ与えると、牛乳アレルギーになりにくいという研究も出てきました。赤ちゃんに与えるタイミングなど、詳しいことはまだはっきりわかっておらず、これから研究が進んでいくというのが現状ですね」

「慢性疾患に関しては遺伝的な要因も多く、母乳かミルクかは、おそらくわずかな差。それほど気にする必要はないと思います」(もりたま先生)。  写真:村田克己
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