「母乳とミルク」噂の真相を東大医学部卒のママ医師が一刀両断

教えて、もりたま先生! 「母乳とミルク」のウソ・ホント #2

「ミルクは肥満になりやすい」はウソ

――ミルク育児、混合育児をためらう理由のひとつに「ミルクは太りやすい、肥満になりやすい」という説があるようです。

もりたま先生「これについての研究では、母乳育児のほうが成長したときの肥満が少ないというもの、そうでないというものの両方があり、まだ結論は出ていません。赤ちゃん時期の肥満となると、母乳は出る量に限りがありますから、完全母乳育児よりもミルク育児、混合育児で、量を飲む子のほうが太りやすいことはあり得ると思います。ただ、ミルクをあげると必ず太るわけではなく、ミルクでも食が細い子はいますし、母乳でもたくさん飲んで太る子も。むしろ母乳だと、欲しがるときに欲しがるだけ与えることにより、太ってしまうこともあります。ミルクが直接太る原因になることはないようです。

厚生労働省による『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)』にも、<完全母乳栄養児と混合栄養児との間に、肥満発症に差があるとするエビデンスはない>とあります。また、妊産婦や子どもに関わる保健医療従事者に対しては、<育児用ミルクを少しでも与えると肥満になるといった表現で誤解を与えないように配慮>するようにとも書かれています」

――それを聞いて、ホッとするママは多そうですね。「母乳で育てると、かしこくなる」という説も、親としては気になるところです。

もりたま先生「たしかに、そういった研究結果があるにはあります。母乳育児で育った子どものほうが、わずかにIQが高かったとのことなのですが、成長するにつれて差がなくなったとの研究も。もしかしたら、短期的には非常にわずかなIQの差があるのかもしれません。でも、たとえ差があったとしても、いずれはなくなってしまう程度のもので、『母乳だから頭がよくなる』『ミルクだから悪くなる』といったことは、ないと考えていいと思います。

「母乳は完璧な栄養」ではない

――「母乳はミルクよりも栄養価がすぐれ、消化がよい」というのはいかがでしょう?

もりたま先生「前回(#1)にお話した通り、母乳にはお母さんの免疫物質が含まれるなどのメリットがたくさんあるものの、栄養バランスという意味ではビタミンD、ビタミンK、鉄分が不足しています。完全な栄養かと聞かれたら、母乳よりもミルクのほうが上かもしれません。母乳の場合、離乳食などで意識的に補っていく必要があると思います。

消化に関しては、『消化がよい』というのは、医学的にどういうことなのか明確ではないんですね。ただ、育児用ミルクは牛乳由来ですから、人間の赤ちゃんが飲むための『ヒトの母乳』と、牛の赤ちゃんが飲むための『牛の乳』が原料のミルクを比べたら、『ヒトの母乳』のほうがよいだろう、という意味で、おそらく母乳のほうが消化はよいかなと思います」

――「母乳育児のほうが子どもとの関係性が深まりやすい」とも、よく聞きますが?

もりたま先生「たしかに、母乳を赤ちゃんに飲ませるのは“skin to skin”のスキンシップになります。“skin to skin”のスキンシップの時間が増えるという意味で、それによって関係性が深まるかと言えば、そうだと思います。でも、じゃあ、ミルク育児だと関係性は深まらないかと言われたら、まったくそうではありませんよね」

――ミルク育児ではダメなら、パパと赤ちゃんの関係性は深まらなくなってしまいますもんね。

もりたま先生「その通りだと思います。母乳かミルクかは、すごく些末なこと。母乳育児を望んでいたのに、さまざまな理由でかなわずに、つらい思いをされているママも多いと思います。でも、どうか母乳にとらわれすぎずに。パパも授乳に参加できるのは、ミルク育児、混合育児の特権です。パパと協力しながら、楽しく育児に取り組んでほしいですね」

最新の睡眠の知識をわかりやすくまとめた、もりたま先生の最新著書『子育てで眠れないあなたに 夜泣きドクターと睡眠専門ドクターが教える細切れ睡眠対策』(共著:伊田瞳/KADOKAWA)。寝かしつけに悩むママは必読です。 写真:村田克己
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もりた まりこ

森田 麻里子

医師・小児睡眠コンサルタント

Child Health Laboratory代表。1987年、東京都生まれ。東京大学医学部医学科卒業。2017年に長男、2020年に...