「どんな15歳になってほしいか」を夫婦で考える

開校説明会では、夫婦でのワークショップがありました。テーマは「子どもが15歳のときに、どんな子になってほしいか」というもの。坂口さん夫婦が出した答えはこうでした。

『自分で好きなことを見つけられる15歳になってほしい』

「風越学園では、子どもたちがその日の過ごし方を自分たちで決めます。子どもの内発性や自発的な気持ちを大切にする学園の姿勢と、自分たちの答えに通底するものを感じ、受験を選びました」(坂口さん)

親が受験を決めたとはいえ、子ども本人が嫌がっていればなかなか前には進めません。しかし、坂口さんの娘さんも学園のことを気に入ったようでした。

「説明会のときに娘が親から離れてスタッフと過ごす時間があったのですが、外で絵本を読んだりお弁当を食べたりして楽しそうに過ごしていたのも決め手でしたね。しかも、選考はレポート提出と面談なので、娘に受験勉強を強いることにならないこともよかったです」(坂口さん)

街にほれこんだことが移住の推進力に

受験を決めたと同時に、たとえ風越学園に合格しなかったとしても、軽井沢へ家族で移住することも決めたと言います。

「軽井沢に通ううちに、どんどん街を好きになっていました。受かるかどうかソワソワするよりも、どっちみち移住する! と決めて、住む場所や仕事の調整に動こうと思ったんです。合格しなかった場合も考えて、現地の保育園も見学しました」(坂口さん)

坂口さんは、新幹線通勤を認めてもらうよう会社と交渉。出版社でWEBの仕事をしていた奥さんは、正社員から業務委託へ雇用形態を変更し、リモートワークで働くことにしました。

「住む土地を大きく変えると、仕事はもちろん、たくさんの変化にぶつかります。その変化すら楽しんでしまうことが移住を推進するポイントかもしれませんね」(坂口さん)

さらに同時進行で学園の選考試験もあり、目まぐるしく時間は過ぎていきます。出願時には、テーマに基づいて作文を提出しました。

「僕が書いて、妻が添削して(笑)、二人三脚で子育て観をすり合わせました。学園側が『子どもを真ん中に置く』ことを掲げているので、子どものことだけでなく、一緒に学校をつくりたいという素直な気持ちを文章にして伝えようと考えました」(坂口さん)

書類選考に続いて、保護者の面接を経て、無事に入園が決まりました。唯一、気になったのは中学卒業後の進路だったと言います。風越学園は現在(2022年)、中学校までしかありません。

「風越学園は、一般的な学校と違う部分が多くあります。のびのびと過ごすので、高校へ進学したらギャップを感じることがあるかもしれません。ただ、そのギャップを子ども自身で受け止めたり、理不尽な選択肢にはNOと言えるような土台を、それまでにつくれるといいなと願っています」(坂口さん)

2020年3月。新しい暮らしへの期待に胸を膨らませながら、坂口さんご家族は軽井沢へと移住をしました。

軽井沢へ移ってからの坂口さんはアウトドアも始めたといいます。 写真提供:坂口惣一

都会の教育や子育てにちょっとした違和感を抱いていたことが始まりだったと聞き、筆者の私自身、共感する部分が多くありました。

私たち家族も「子ども時代は自然のなかでのびのびと過ごしてほしい」と考え、地方での生活を選んでいます。(沖縄竹富島の暮らしを紹介する記事はこちら

我が家の場合は夫の転勤という偶然の要素も大きかったので、坂口さんの話を聞いたことで、学校や立地などの条件だけではなく、親が学校の教育方針に賛同できて当事者として関われること、何より、夫婦での子育て観を明確にする大切さを教わりました。

後編では「教育移住後」の暮らしについて伺います。

軽井沢のシンボルと言われる浅間山。雄大な景色が広がります。 写真提供:坂口惣一

※「軽井沢風越学園」のある軽井沢へ教育移住した坂口さんへのインタビューは全2回。
後編は2022年3月1日公開予定(公開までリンク無効です)です。

#2 教育移住」で軽井沢に1年半 子どもと親の大きな変化とは?

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かたおか ゆい

片岡 由衣

かたおかゆい ライター。東京都出身、竹富島在住。東京学芸大学卒業後、リゾート運営会社にて広報やイベント企画に携わる。3人子育ての発信を...

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