活発な子どもほど要注意! 頭・指・腕の3大トラブル「受診の目安」

よくある子どものケガ・病気〈受診の目安〉#4「頭をぶつけた」「指をはさんだ」「肘(腕)が抜けた」

小児科医:坂本 昌彦

幼少期に起きがちな3つのトラブル。大きなケガを防ぐことが重要です。
写真:ピクスタ

公園で走り回ったり、家の中で動き回ったり、活発な子どもに起きやすい「頭をぶつけた」「指をはさんだ」「肘(腕)が抜けた」の3つのトラブル。

親としては、正しい対処のポイントを知っておきたいものですよね。

症状の見極め方や受診の目安を、小児科医の坂本昌彦医師に解説していただきました。(全4回の4回目。#1#2#3を読む)

症状と受診判断のポイント

【頭をぶつけたとき】

幼児のうちは、親が気づかないうちに寝返りができるようになってベッドから転落したり、歩きはじめてからもしばらくは歩行が不安定でよく転んだりします。

また、成長とともに活発に動くようになると、高いところに登って落ちたり転んだりと、「頭をぶつける可能性が高い」行動も多くなってきます。

軽い打撲で済むことも多いですが、高いところから落ちたり、固い地面にぶつけたりたりすると、場合によっては頭がい骨骨折や脳挫傷など、深刻な症状につながる可能性もあります。

①頭をぶつけたときに、すぐに救急車を呼んでもらいたいのは、次のような状態のときです。

<すぐに救急車を呼ぶ>
・意識がない
・名前を呼んでも反応が薄い
・ぼーっとしている
・頭をぶつけた直後からぐったりしている
・けいれんしている

②救急車を呼ぶほどではないものの、自家用車やタクシーで速やかに医療機関を受診してもらいたいのは、次のような症状です。

<自家用車やタクシーで受診>
・名前や場所がわからない
・話していることのつじつまが合わない
・ものが見えづらい(ものが二重に見える)
・まっすぐ歩けない
・手足に力が入らない、しびれる
・頭痛がだんだんとひどくなる
・繰り返し吐く
・不機嫌でぐずりが激しい
・普段よりも眠りがち、不自然に眠りから覚めない

③いったん家で様子を見てもらいたい目安は次の通りです。家で様子を見ることにした場合も、子どもの様子に変化がないか、24時間は注意して観察してください。

<家で様子を見る>
・普段通りに泣く
・手足の動きに左右差や違和感はない
・ぶつけたときに泣き、泣き止んだら普段どおり
・嘔吐が1~2回のみ

【指をはさんだとき】

ドアや引き出しなどに手足の指をはさむと、ひどいと骨折や、場合によっては切断にいたる大きなケガに繋がることがあります。

出血が止まらなかったり、明らかに大きなケガだったりする場合は、もちろん救急車を呼んでください。

見た目にはわからなくても、はさんでからしばらく経っても痛みがひかなかったり、泣き止まなかったりしたら要注意。赤く腫れ上がった場合は、骨折も疑われるので、病院を受診してください。

「あまり腫れていない」「それほど痛がらない」「自分で指を曲げられる」という場合は、はさんだ場所を冷やしてしばらく様子を見ましょう。

【肘(腕)がはずれたとき】

「肘(腕)がはずれる」という状態は、専門的には「肘内障」(ちゅうないしょう)と呼ばれ、肘の外側の骨が、肘の靭帯から外れかけた状態です。

乳幼児から小学校低学年までの子どもは、骨や靭帯が未発達です。そのため、大人にくらべると肘(腕)が抜けやすく、肘内障は起きやすいと言えます。親が急に子どもの手を引っ張ったときなどに起こります。

症状としては、子どもが腕を動かさなくなった、などがきっかけで気づくことが多いです。
腕を動かさない様子に気づいたら、自家用車もしくはタクシーで病院を受診してください。

肘内障は、肘の骨が靭帯から外れかけた状態ですので、救急外来などで整復することになります。レントゲン検査で骨や関節に異常がないか確認することもあります。実際の整復は、肘を曲げながらひねるかたちで行います。

整復後はすぐに元通りに腕を動かせるようになります。

幼少期に起きがちな3つのトラブル。子どもは痛みをうまく表現できないこともあるので、親は様子を注意深く観察しましょう。
写真:ピクスタ

親に必要な予防の心構えとは?

ここで挙げた3つのケガは、いずれも幼少期によく起きるものです。

強調したいのは、子どもの遊びは科学者の実験と同じだということです。つまり子どもは遊びで失敗を繰り返しながら学んでいきます。小さなケガも同じで、それを通して学習し、成長していくのです。

小さなケガをすべて防ごうとする必要はありませんし、実際には無理でしょう。

大切なのは大きなケガを防ぐことです。
大きなケガを防ぐ環境が作れていれば、子どもは安心して思いっきり遊ぶことができます。

今回ご紹介した受診の目安とともに、大きな事故を未然に防ぐ環境整備についても考えても考えていただければと思います。
◆◆◆

取材・文/末吉陽子

さかもと まさひこ

坂本 昌彦

小児科医

佐久総合病院佐久医療センター 小児科医長兼国際保健医療科医長医員。2004年名古屋大学医学部卒業。2009年小児科専門医取得。現在は保護者の啓発と救急外来負担軽減を目的とした佐久医師会による「教えて!ドクター」プロジェクトに責任者として関わる。 教えて!ドクター https://oshiete-dr.net/

佐久総合病院佐久医療センター 小児科医長兼国際保健医療科医長医員。2004年名古屋大学医学部卒業。2009年小児科専門医取得。現在は保護者の啓発と救急外来負担軽減を目的とした佐久医師会による「教えて!ドクター」プロジェクトに責任者として関わる。 教えて!ドクター https://oshiete-dr.net/