睡眠中の子どもを襲う 乳幼児突然死症候群・添い寝・掛け布団のリスクとは?

乳幼児睡眠コンサルタントが教える「睡眠時の危険から子どもを守る予防策#1」

体がまだ発達しきっていない赤ちゃんの睡眠時には、さまざまな危険が潜んでいます。特に寒くなるこれからの時期に気をつけたいのは、「乳幼児突然死症候群」です。これは、主に1歳未満の子どもが何の予兆もないまま死に至る病気のこと。12月以降に発症数が増加するため、冬には特に注意を払う必要があります。

今回は、世界46ヵ国に拠点を持つ国際資格認定機関IPHI(International Parenting & Health Institute)において、日本人初の乳幼児睡眠コンサルタントの資格を取得した愛波あや(あいば あや)さんにお話を伺いました。愛波さんは、自身が子どもの夜泣きや子育てに悩んだ経験から乳幼児の睡眠科学の勉強を始めたそう。そして現在では同機関の日本代表として、科学的根拠に基づいた睡眠の知識を多くのママ・パパに伝えています。

前編では、冬季に発症が増加する「乳幼児突然死症候群」の基礎知識から、そのほかの睡眠時のリスク、添い寝の注意点についてご紹介します。
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冬季に増加! 乳幼児突然死症候群とは?

皆さんは、「乳幼児突然死症候群」という病気を聞いたことがありますか? 乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)とは、それまで元気だった赤ちゃんが何の予兆もなく、眠っているときに突然亡くなってしまう病気のこと。

さっきまで元気に遊んでいたり、ご飯を食べていたりした子どもが、「おやすみ」と言ったまま急に天に旅立ってしまう……。想像しただけでも、ママ・パパにとっては耐えがたい悲しみや悔しさがこみ上げてくるでしょう。

まずは、この乳幼児突然死症候群についてご説明します。乳幼児突然死症候群とは、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る、原因のわからない病気です。

令和3年には81名の赤ちゃんが乳幼児突然死症候群により亡くなっています。下記のグラフを見てわかるとおり、死亡者数は減少傾向にありますが、乳児期の死亡原因の3位で、いまだ上位です。

この乳幼児突然死症候群は、原因がわかっていないため予防方法はまだ確立していません。しかし過去のデータから、発症しやすい年齢や季節はわかっています。

まず、発症しやすい年齢は、1歳未満。下記は、月齢別乳幼児突然死症候群死亡事故の割合を表しているグラフです。生後2~3ヵ月のときに一番多く発症しており、次いで1~2ヵ月。6ヵ月を過ぎると、発症率が下がることがわかります。

つまり、乳幼児突然死症候群のほとんどの症例は、生後6ヵ月までで、主に生後3ヵ月前後で起こっています。このように、乳幼児突然死症候群は、乳児期の赤ちゃんに発症例が多いですが、まれに1歳以上でも発症することもあります。

発症しやすい時期は、寒い時期。特に12月になると発症が増加する傾向にあります。このことから、厚生労働省は、毎年11月を「乳幼児突然死症候群」の対策月間に定めて、防止を呼びかけています。

窒息死も睡眠中の死亡原因上位に

実はこの乳幼児突然死症候群以外にも、睡眠時のリスクは潜んでいます。平成28年~令和2年までの0歳児の不慮の事故のうち、ベッド内での窒息が1位。ベッド内での窒息は127件発生し、そのうちの9割が0歳児の事故です。

また、平成22年から平成26年までのデータによると、窒息死の中でも就寝時の窒息がもっとも多いとされています。

続いて、就寝時の窒息死事故の状況を見ていきましょう。消費者庁の調査によると、事故が起きたときは以下のような状況だったそうです。

・顔がマットレスなどに埋まる
・掛け布団等の寝具が顔を覆う・首に巻きつく
・ベッドと壁の隙間などに挟まれる
・ベッドからの転落に起因する窒息
・家族の身体の一部で圧迫される
・ベッド上の衣類やクッション等で顔を覆われる

さらに、どのようにして事故が起こるのか、消費者庁のホームページに記載されている実例を紹介しましょう。

実例1:授乳後に大人用ベッドに寝かせていた。泣き声が変わったので見に行くと、ベッドと壁の隙間に子どもの頭が挟まり、体が海老反りになっていた。窒息と頭部打撲のため通院が必要になった。(0歳6ヵ月)

実例2:子どもを仰向けで寝かせ、普段使用している子ども用のタオルケットの代わりに大人用の大きなタオルケットを体にかけた。約30分後に様子を見ると、柔らかめの枕の上でうつ伏せになり、タオルケットが子どもの頭にかぶさって首に巻き付いていた。子どもの顔色が悪く、意識障害があったため救急搬送され、入院となった。(0歳7ヵ月)

出典:消費者庁ホームページ

どちらのケースもさほど特殊な状況とはいえず、条件が揃えばどのご家庭および保育現場でも起こり得ることではないでしょうか。それだけに、睡眠時の事故はとても身近なものといえます。

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