緩和ケアミュニティが子育て支援『ケアタウン小平』が守る子どもの居場所

子どもの居場所 ルポルタージュ #2‐1 東京都『ケアタウン小平』

ジャーナリスト:なかの かおり

猛暑日の氷は、それは気持ちがいいものでした。  撮影:なかのかおり

コロナ禍に居場所がなくなったり、充分なコミュニケーションができなかったり、ストレスを感じている子どもや保護者は少なくありません。家や学校以外にどんな居場所があるでしょうか? 今回取り上げるのは、ホスピス緩和ケアコミュニティが子育て支援も行っている、という事例です。

子どもの暮らしの取材・研究を重ねるジャーナリスト・なかのかおりさんによる、コロナ禍の子どもの居場所についてのルポルタージュ連載。

第2回は、東京小平市にある『ケアタウン小平』。賃貸住宅やデイサービス、在宅医療の診療所などが集まっている3階建てのコミュニティでは、月に1回、親子イベントが行われています。なかには、何年も参加している子も。それはどんなイベントなのでしょうか?  
(全3回の1回目)

『ケアタウン小平』の親子イベントの様子。この日は猛暑日で、庭の大きな木の陰に集まりました。  撮影:なかのかおり

『病院で死ぬということ』の著者がスタートさせたコミュニティ

東京都小平市にある『ケアタウン小平』は、賃貸住宅やデイサービス、在宅医療の診療所、配食サービス事業者などが集まっている3階建てのコミュニティです。

安らかな死を迎えるまで生活することを目的とした施設で、ベストセラー『病院で死ぬということ』の著書で知られる緩和ケア医の山崎章郎さんと仲間のみなさんが、2005年に開設。当時、ホスピスや在宅医療の取材をしていた筆者も、何度か足を運んでいました。

こちらでは、子育て支援にも積極的に取り組み、建物と大きな木に囲まれた庭では、月1回、地域の親子が遊ぶ「集まれ! こども広場」が開かれています。

庭の木陰で怪談、ひんやり霧吹きで思わず笑顔に

筆者は、高齢出産や父の死を経験した今、『ケアタウン小平』に再び引き寄せられました。取材が実現したのは東京が観測史上、最も早い猛暑日となった2022年6月末の土曜日です。

『ケアタウン小平』は、JR武蔵小金井駅からバスで数分。バス停から住宅街を歩くと、緑に囲まれた一画が見えてきます。

「集まれ! こども広場」は、午前10時にスタート。ケアタウンの建物を通って中庭に出ると、すでに20人ほどの親子が集まり、賑やかな雰囲気に。筆者も、参加させてもらいました。

♪タンタンタンタン、ケアタウン

楽しい歌声が、聞こえてきます。このイベントは毎月、NPO法人『あそび環境Museumアフタフ・ バーバン』のさとうりつこさんが、進行しています。

この日は、最初にりつこさんが、みんなにひやっとしてもらおうと、木陰で怪談を始めました。霧吹きが用意され、筆者も背中にかけてもらってひんやりいい気持ち。最後は、風が吹き抜ける中、怪談のオチに大笑い!

みんなで持ち寄った手作り氷はなんと44点も!

そして、お待ちかね、持ち寄った氷をみんなで見る時間になりました。大きなクーラーボックスに、手作りの氷がぎっしり!

参加者のみなさんが、思い思いの入れ物で、氷を作りました。  撮影:なかのかおり

今までは、前月の会の終わりに「次はこういうことをします」と、お知らせしていました。

今月は週初めに、広場の日はとても暑くなるとの予報があったため、お化け屋敷をする予定を急遽、変更。りつこさんやスタッフが、アイデアを出し合いました。
   
そして親子イベントの数日前、参加者には「容器は何でもいいから、氷を作って持ってきて」と連絡。さらに、ケアタウンを拠点に活動するNPOの事務局長・中川稔進さんの娘さんのアイデアが採用され「氷の中には、メッセージを入れてね」と追加で伝えました。

持ち寄った氷を並べて、大人も子どもも興味津々。  撮影:なかのかおり

ペットボトル、リップクリームが入っていたケース、製氷皿、袋、タッパー、ゴム手袋……。数えたら、44ものさまざまな入れ物を使った氷がありました。この日、参加できなくても、凍らせて届けてくれた人もいたとか。

みんなで並べて、触って、それはもう夢中です。個々の発想が面白いし、猛暑の中、触ると冷たくて気持ちがいい。

まん丸のボール状の氷を作ってきた親子もいました。みんなで輪になり、その丸い氷を手に持って、隣の人に渡し、冷たい感触や、溶けていく様子を楽しみました。

大人気だった、まんまるの氷。  撮影:なかのかおり
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