2021.05.27

土屋礼央さん(RAG FAIR)「家族や周りにとって“水”のような存在でいたい」

土屋礼央さんインタビュー「結婚10年目で夫婦円満」の秘訣#4〜コミュニケーション編~

寄稿家:土屋礼央

「自分を満たすためではなく、家族のために動くことで、より大きな幸福感を味わえるようになりました」(土屋さん)
写真:間野真由美

4人組の人気アカペラグループ「RAG FAIR」のリードボーカルで、2021年3月に『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』を上梓された土屋礼央さん。著書では、自身と妻との関係、子どもとの関係をありのままにさらけ出し、夫として、父として悩みながら奮闘する土屋さんの言動がユーモアたっぷりに描かれています。
「結婚し考え方が180度変わった!」という土屋さんに、家族関係を良くするコミュニケーションとはどんなものか、一緒に考えてもらいました。

“ありがとう”と言い合える関係性になろう

前インタビューで、自分では「家事をやっているつもり」の夫の考え方に、変化をもたらすためのアイディアをいろいろと提案してくれた土屋さん。「でも夫側の代表として(笑)、妻である女性にお願いしたいこともあります」と言います。
➡︎第3回『パートナーを変えるには相手をどれだけ思いやるか』を読む

「女性と同じように、男性にもくんでほしい想いがあるんですよ。男性も基本、良かれと思ってやっているということに、気づいてほしいなと(笑)。女性にしてみれば『なんでそういうことやるの!?』という言動かもしれませんが、男性としては『それがいいかなと思ったんだけど……』ということ、けっこうある気がするんです。僕もそうなので(笑)。

お互いに「やってあげている」という想いがあると思うので、そこに対してまず「ありがとう」と言い合えたらいいなと思います。『ありがとう』と言ってもらえただけで、気持ちが救われることってありませんか? 女性の側からすると、『こちらがどれだけやっても何も言われないのに、私から『ありがとう』と言うなんて、癪だわ』と思うかもしれませんが、『ありがとう』にはきっといつか、『ありがとう』が返ってきます! お互い、どれだけ謙虚に歩み寄れるか。それが夫婦円満のポイントになると僕は思います」

「『ありがとう』と言われないのには、自分にも理由があるのかも。僕はそんなふうに考えます」(土屋さん)。新刊『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』には、そんな土屋さんのアイデアがいっぱい記されている
写真:間野真由美

素敵だなと思ったらどんどん言葉にして伝える

コロナ禍で、これまでになく家で過ごす時間が増えた今こそがチャンスだと、土屋さん。

「夫婦や家族のコミュニケーションを取るのに、これほどいい機会はないと思います。ぜひたくさん一緒に過ごし、あれこれ話をしてください。我が家も、日頃からよく会話をしています。子育てや教育についてなど、真面目な話題のときもあれば、とりとめのない話をすることもあります。

僕が妻からもらった最高の褒め言葉に『あなたは私以上に、私の幸せを考えてくれる。これ以上の安心感はない』というのがあるのですが、この言葉を初めて言われたのは、ふたりで昼ごはんを食べているときでした。それからも何度か、言われています。ダメ夫の僕がいろいろともがき苦しみながら、夫として、父としての在り方を探るなかで、妻からのこの言葉がどれだけ僕を支えてくれたか!」

土屋さんはこの体験を通じ、想いを言葉にして伝えることの大切さを改めて実感したと話しました。

「相手に関しての感謝や、素敵だなと思うポイントがあったら、言葉にしてどんどん伝えていったほうがいい。想いを言葉にして伝えると、その声が耳から入ってきます。すると、不思議と心もその言葉に引っ張られて、いい気持ちになれるんです。たとえば『今日のシャツ、かわいいね』や『髪形、キマってるじゃん』など、些細なことで全然かまわない。

人間って不思議なもので、相手が喜んでくれれば自分も幸せになれるし、自分にとって嬉しい言葉を言われたら、相手にもその優しさを返したくなるんですよ。恩返ししたくなる生き物なんです。
相手が喜ぶなら、同じことを何回言ってもいいと思います。使った分だけその言葉はブラッシュアップされ、あなたの想いが届きやすくなるはず。その言葉が大切な人の支えになれば、これほど嬉しいことはないですよね」

大切な人を常に支えて生かせる存在になりたい

結婚や子育てを通じて、「これからももっと成長していきたい!」と意欲を見せる土屋さんの、今後の生き方のビジョンとは?

「昔はとにかく自分中心で、自分が“原材料”になりたいと思っていましたが、今は家族など大切な人にとっての“水”になれたらと思っています。水は原材料に表記されないケースが多いのですが、僕らの生活の中にごく当たり前に存在し、いろいろなものを動かすために必要不可欠なもの。普段から強烈な存在感を発揮するわけではないけれど、常に必要とされ、周りを支えて生かす。そういった存在になれれば、僕が生きている意味もあるかなと思うようになりました。
世界に生きる人にはきっとそれぞれ役目があり、今の僕には、水みたいな存在であることが求められているのかな、と感じているんですよね」

最後に、夫婦円満や子育てにおすすめの絵本を教えてもらいました。

「僕はヨシタケシンスケさんの絵本『りんごかもしれない』が、とてもステキだなと思っています。りんごをりんごと捉えず、いろいろな視点から見るという発想がユニークですよね。息子があの本を読んでから、『いや、これはそうじゃないかもしれない』と言うようになったんですよ。

そんな息子の反応をとても面白いと思うし、いつのまにか杓子定規な価値観に収まって安心してしまっている自分への気づきにもなるなと感じています。物事の見方はひとつじゃないんだということに気づけば、パートナーへの思いやりが生まれるのではないでしょうか」

「今では子どもの喜びが、自分の喜びです。そんなふうに変われたことを、心からうれしく思っています」(土屋さん)
写真:間野真由美

土屋さんおすすめの絵本『りんごかもしれない』(作:ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)。ひとつのりんごをめぐり、主人公「ぼく」の妄想がどんどん広がっていく。発想力で楽しく豊かに過ごすヒントが詰まった一冊だ。

土屋さんの新刊『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)

取材・文/木下千寿

【第1回】土屋礼央さんインタビュー「結婚して“仕事・家庭”への考えが180度変われた」
【第2回】土屋礼央さんインタビュー「結婚10年目、話し合うほど“妻の価値観”をステキに思う」
【第3回】土屋礼央さんインタビュー「パートナーを変えるには相手をどれだけ思いやるか」
【第4回】土屋礼央さんインタビュー「家族や周りにとって“水”のような存在でいたい」

寄稿家紹介

土屋礼央 つちやれお

つちやれお 1976年9月1日生まれ。東京都出身。2001年、アカペラボーカルグループ『RAG FAIR』のメンバーとしてデビュー。学生を中心に人気を集め、全国各地でアカペラグループ史上最高の動員数を記録、アカペラグループの立役者に。また軽妙なトークも注目の的となり、2002年から『土屋礼央のオールナイトニッポン』を3年半担当。現在、TBSラジオ『赤江珠緒 たまむすび』、NACK5『カメレオンパーティー』、NHKラジオ第1『鉄旅・音旅 出発進行!音で楽しむ鉄道旅』、YouTube『土屋礼央らくごチャンネル』、ニコ生『チャンネル土屋礼央』にレギュラー出演中。人間関係を円滑にするためのヒントを記した著書『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)が大好評発売中。