2021.05.25

土屋礼央さん(RAG FAIR)「パートナーを変えるには相手をどれだけ思いやるか」

土屋礼央さんインタビュー「結婚10年目で夫婦円満」の秘訣#3〜夫の変え方編~

寄稿家:土屋礼央

男性の立場から、家事への理解が足りない夫について思うところを率直に語ってくれた土屋礼央さん。
写真:間野真由美

4人組の人気アカペラグループ「RAG FAIR」のリードボーカルで、2021年3月に『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』を上梓された土屋礼央さん。著書では、自身と妻との関係、子どもとの関係をありのままにさらけ出し、夫として、父として悩みながら奮闘する土屋さんの言動がユーモアたっぷりに描かれています。
「結婚して、僕の考え方は180度変わった!」という土屋さんに、家事を理解していない夫の思考と変え方について、一緒に考えてもらいました。

夫は自分の頑張りにしか目が向いていない

周りの男性から、家庭の愚痴やボヤキを聞く機会もあるという土屋さん。夫側は、家庭や妻にどのような不満をこぼしているのか、こっそり聞いてみると……。

「『俺はこんなにやっているのに、妻が感謝してくれない』と愚痴をこぼす男性は多いですね。とはいっても、僕からすると、ちゃんちゃらおかしい話ばかりですよ(笑)。文句を言うような段階ではないところで、立ち止まってしまっている方が多いです。

まず、妻がやってくれている“あたり前”に感謝できているのかなと思います。そういう男性は、自分が働いている時間や自分が頑張った部分しか見えていないんですよね。パートナーも同じようにその時間、別のかたちで頑張っているということにまったく気づいていない。でも、僕も妻から指摘されて初めて、妻が自分といない間に過ごしている時間への意識が生まれたので、男性にはやはり気づくためのきっかけが何か必要なのかなと思います」

著書には、土屋さんがある日、1日3食の料理を担当することにチャレンジした日の様子が紹介されています。

「3食分の献立を自分で考え、作ってみて、『これを365日、毎日やっている妻はすごい!』と心から思いました。仕事はお金がもらえますから、どんなに大変でも気持ちにある程度折り合いをつけられます。でも家事はどれだけやっても、何も発生しません。ノーギャラで、ずっと仕事をしているようなものです。そんな大変なことを、日々、黙々とやってくれている妻に対して感謝こそすれ、夫が『俺も手伝っている』と主張するなんて、とんでもないことだぞと僕は思います。家事の大変さに想像が及ばない男性には、『あなたはノーギャラで仕事ができますか?』と言うと、伝わるかもしれません(笑)」

「相手の立場に立って物事を見たり、考えたりすると、今まで見えていなかったものが見えてくるはず」(土屋さん)
写真:間野真由美

家事は“点ではなく線”であることをわからせる

また夫に家事をやってみてもらうときは、ぜひ、“セット”でやるように勧めたい、と土屋さん。

「家事は“点”ではなく“線”だということを、理解していない男性は多いと思います。僕の書籍のタイトルにもなっていますが、ただ食器洗いをしただけでは、家事とは言えないんですよね。洗った食器を乾かし、戸棚にしまって、床が濡れていたら拭く。そこまでがキッチンの家事であって、食器洗いは通過点のひとつに過ぎない。

子どもをお風呂に入れるのであれば、子どもの体を洗って、お風呂から上がって体を拭いてやり、髪を乾かして、パジャマを着せる。そこまでして初めて、『自分は子どもを風呂に入れた』と言えるわけです。家事一連の流れをすべて自分一人でやる大変さが分かれば、男性はうかつに『俺だって家事をやっている!』とは言えなくなるはずです(笑)」

一方で、夫の家事のやり方に不満を感じている女性も少なくありません。しかし土屋さんは、あえて手を出さずにしばらく見守ることを提案します。

「『いちいち怒るのも面倒だから』と、自分が代わりにやってしまう女性が多いと思いますが、“相手が気づくまで、絶対に手を出さない”のも大事なんじゃないかと思いますね。たとえば僕の皿洗いに関しても、妻は『できていない部分はあったけど、少しずつレベルが上がってきているのはわかったから、ある程度は伸びしろだと思って待っていた』と言ってくれました。そしてできていない点については、お互い心に余裕のあるタイミングで指摘。『この先、何十年も食器を洗ってくれると思ったら、待つ時間も短いものかな』と考えたのだそうです。ある程度は待って育てる、ということですね」

思いやりが相手を変えるカギになる

妻への配慮が足りず、「俺もやっている!」「ありがとうと言ってくれ」という男性に対して、女性はどう向き合えばいいのでしょう?

「単純に、女性が『私もこれだけのことをやっている』『私だって大変なの!』と伝えればいいというものでもないんですよね、きっと。感情的なぶつかり合いになり、嫌気が先に立って『俺にはやれない』とギブアップする男性も出てきてしまうと思います。この問題は、『自分はこれだけやっているんだ。だから相手もこれぐらいはやってほしい』という考えのままでは解決しない気がしていて……。

やっぱり“どれだけ相手のことを思いやれるか”が大事なのだと思います。相手に変わってほしいと願うなら、まずは自分が変わってみる。できる範囲でいいので相手を思いやり、何か行動を起こせば、相手もそれを受けて変わろうとする気持ちが生まれると思うんです」

自分のことを棚に上げて、家庭の愚痴を周りにボヤいているような男性も、変わることはできるのか。そう尋ねると、土屋さんは微笑みながらこう答えました。

「独身時代は自分のこと優先で生きていた僕が、子ども優先、家庭優先の男に変わりました。変わった男が、ここに一人います! 僕は『一人いるということは、他にも必ずいる』という考えを持っているので、どんな男性も変わる可能性はゼロではないと思います」

「結婚、子育てをするというのは、自分が変われるチャンス! そう思える男性がもっと増えたらいいですね」(土屋さん)
写真:間野真由美

土屋さんの新刊『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)

取材・文/木下千寿


※土屋礼央さんインタビューは全4回。4回目は21年5月27日8:00〜公開です
【第4回】土屋礼央さんインタビュー「家族や周りにとって“水”のような存在でいたい」

【第1回】土屋礼央さんインタビュー「結婚して“仕事・家庭”への考えが180度変われた」
【第2回】土屋礼央さんインタビュー「結婚10年目、話し合うほど“妻の価値観”をステキに思う」

寄稿家紹介

土屋礼央 つちやれお

つちやれお 1976年9月1日生まれ。東京都出身。2001年、アカペラボーカルグループ『RAG FAIR』のメンバーとしてデビュー。学生を中心に人気を集め、全国各地でアカペラグループ史上最高の動員数を記録、アカペラグループの立役者に。また軽妙なトークも注目の的となり、2002年から『土屋礼央のオールナイトニッポン』を3年半担当。現在、TBSラジオ『赤江珠緒 たまむすび』、NACK5『カメレオンパーティー』、NHKラジオ第1『鉄旅・音旅 出発進行!音で楽しむ鉄道旅』、YouTube『土屋礼央らくごチャンネル』、ニコ生『チャンネル土屋礼央』にレギュラー出演中。人間関係を円滑にするためのヒントを記した著書『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)が大好評発売中。