犬山紙子と考える!ママパパのモヤッと育児Q&A「親世代とのギャップ」

育児に関する情報や世代間の価値観の違いなど、気になる疑問に犬山紙子さんが答えるシリーズ第1回。

ライター:木下 千寿

育児中の気になるモヤモヤ疑問を、犬山紙子さんと一緒に考える

子育てしていると、ちょっと引っかかって胸の中にわだかまる事柄に行き当たったり、モヤモヤとして一言で言い表すのが難しい思いや疑問が浮かぶ瞬間があるはず。

「“悩み”というほどではないけれど、どうも腑に落ちない」「なんだか気になる」そんな話を、イラストエッセイスト、コラムニストとして活躍し、自身も6歳の娘さんの子育て真っ最中の犬山紙子さんと一緒に考えてみましょう。
犬山紙子
イラストエッセイスト、コラムニスト。2011年マガジンハウスからブログ本を出版しデビュー。2014年結婚、2017年に第1子となる女児を出産後、児童虐待問題に声を上げるタレントチーム「#こどものいのちはこどものもの」を立ち上げ、社会的養護を必要とする子どもたちへのクラウドファンディング「こどもギフト」メンバーとしても活動中。
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「よく子どもを『モノで釣る』のはダメ、と言われますが、なぜダメなんでしょうか? 実はよくやってしまいます」(4歳女児ママ/東京都)
モノで釣るのはダメ?
〈犬山さん〉
モノで釣る、私もよくやっていますよ! 子どもが何かの練習を頑張ってほしいときや、新幹線で泣くのを止めてほしいときなど、私はガチャガチャに命を助けられていましたから(笑)。「モノで釣るのはダメ」という思いが強すぎて、逆に子どもに声を荒らげてしまったり、怒ってしまったりするようなら、モノで釣ったほうがマシ、と思っています。

中室牧子さんの著書『学力の経済学』に、ご褒美で釣るのは必ずしも悪いことじゃないというようなことが書かれていました。考えてみたら、大人だって「ダイエットを頑張る!」と決めても、目標達成までに3ヵ月や半年かかる間、ずっと頑張り続けるのって難しいですよね。頑張るために、「明日は甘いものを食べてもOK」という遠すぎない未来に“ご褒美デー”を作ることもあるでしょう。そんなふうに、ときにはご褒美で釣るのもアリだと思うんです。

モノ(ご褒美)で釣るのがなぜダメかというと、モノがなくても自発的にやるようになってほしいからだと思います。でも、子どもが自発的にやる“習慣づけ”のスタートには、ご褒美が有効なんじゃないかなとも思います。
私たちだって、お給料というご褒美をもらえるから仕事を頑張れるわけじゃないですか(笑)。でも、ただお給料をもらうためだけに頑張るだけじゃなく、働くうちにやりがいを見つけたりもするわけで、それは子どもも同じだと思います。自発的にやる楽しさややりがいは子どもたちが勝手に見つけてくれるはずですから、親は思い詰めないでリラックスできたら良いと思います。
「親世代と私たちとの子育てに対する考え方のギャップに困っています」(1歳男児ママ/大分県)​
「1歳の息子がごはん(米粒)で遊ぶと怒る義父。ごはんに対して興味があるからだと言っても『ごはんを粗末にしてはダメだ』と言われます。どうすれば分かってもらえるでしょう?」
米粒で遊ぶとおじいちゃんに怒られる……
〈犬山さん〉
1歳というと、米粒の味だけじゃなく感触なども学んでいる最中だから、好きに触らせてあげたいというママさんの気持ち、分かります。その一方で、お義父さんのような考え方もあると思います。でも今からこのお義父さんの考え方を変えるのはめちゃくちゃ難しいだろうな……。

関係性的に相談主さんがお義父さんと直接対決するのは難しそうですよね。私だったら、まず夫に「お義父さんのこういう考え方、私とちょっと違うんだよね」と打ち明けて、夫に味方になってもらうかな。そしてお義父さんから何か言われたら、夫から義父に「今、子どもはこれで学んでいる時期なんだ」と言ってもらうようにします。もしくは義父の前では、子どもの食事シーンを見せないようにするのも手かな。
子どもがもう少し大きければ、お義父さんのいないところで「おじいちゃんはああいう考え方だけど、ウチは違う考えだからね」とこっそり伝えるのもアリ。子どもはここで「大人も人によって言うことが違うんだ」と学ぶわけです(笑)。誰がどんなふうに子育てをしても、価値観が違う大人の言うことに振り回されるというケースは必ず出てきますから、その練習だと思えばいいと思います。
「子どものほっぺにチューしたがる祖父母と、チューさせたくない親」とか「自分が食べた箸で食べさせたくない親と、まったく気にせずやる祖父母」とか、親世代と自分たち世代とで、子育てに対する考え方や意識のズレはいろいろあって、そこにモヤッとする人は多いと思います。

SNSなどで、世代別に子育てに対する考えの違いをまとめたリストが出ていたりもするので、そういうのを親と共有しておくといいかもしれませんね。もちろん、関係性によると思いますが、それぞれ夫と協力して互いの実親に送っておくとスムーズかなと思います。
「『かわいい』と言われたい息子。お姉ちゃんが言われるから一緒がいいのかなぁ」(2歳男児ママ)
僕もかわいいって言われたい
〈犬山さん〉
「かわいい」と言われたい息子さん、何も問題じゃないですよね! 「かわいい」という言葉がうれしい男の子、たくさんいるけれど、ジェンダーバイアスのせいで可視化されにくいのかもしれません。まったく悪いことではないので、「かわいい」と言われて子どもさんがうれしそうなのであれば、たくさん「かわいいね」って言ってあげてください!

ちなみに私、子どものころは「カッコイイ」という言葉がうれしかったです。ヒーローアニメなどを見て、「私もこんなふうになりたい!」って思っていましたから(笑)。
たとえばこの先、男の子が「かわいい」と言われるのが好きだという理由で、周りから心無い言葉を言われるかもしれない、という心配もあるのかな。自分の子どもが傷つけられるかも、と思ったら怖いですよね……。

だったらなおさら、“家の中は絶対にあなたの味方だよ!”という空気を作って、その想いを子どもに伝えてあげることが大事かなと思います。「男の子に『かわいい』もいいし、女の子に『カッコイイ』もいいよね」って。子どもにとって家はどんな自分でも愛され、肯定される場だと信じられるような環境を作ることが、今、親としてできることじゃないかなと思います。

そして、自分の子が傷つける側に回らないようにもしたい。我が家では性別による「らしさ」を押しつけないことの大切さや、多様な性があること、それは何もおかしなことではないことを小さなうちから伝えるようにしていました。
写真(犬山紙子)/岩田えり 取材・文/木下千寿 写真提供:ピクスタ
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きのした ちず

木下 千寿

ライター

福岡県出身。大学卒業後、情報誌の編集アシスタントを経てフリーとなる。各種インタビューを中心に、ドラマや映画、舞台などのエンターテイメント、ライフスタイルをテーマに広く執筆。趣味は舞台鑑賞。

福岡県出身。大学卒業後、情報誌の編集アシスタントを経てフリーとなる。各種インタビューを中心に、ドラマや映画、舞台などのエンターテイメント、ライフスタイルをテーマに広く執筆。趣味は舞台鑑賞。