シャンソンに魅了され、歌手デビュー
私は先生の教えに逆らって、当時、銀座のホテル内にあったサロンの歌手オーディションをナイショで受けたんです。そしたら合格しちゃって! 汚らわしいお金を稼ぐことになっちゃったんですよ(笑)。
それでコロンビアレコードの方がスカウトしてくださって4枚のレコードを出したんですけど、出せば出すほど演歌調の曲になっていきました。4枚目は『カモネギ音頭』といって、「あコリャコリャ♪」というバックコーラスも入っているの。しかもこれがわりとヒットして、「あれ、このままじゃどんどんシャンソンから離れていってしまう」と思って辞めることにしたんです。まあその期間は、あちこちのテレビに出させてもらって楽しかったんですけどね。
結婚、そして料理愛好家に
で、オーディションで私の言動がウケたみたいで、合格しました。晴れて久米さんとお仕事することになったんですけど、後から聞いたら、どうも私の履歴書に手違いがあったみたいで。何と顔写真が、辺見マリさんの写真に入れ替わっていたそうなんです。で、「この子、かわいいからオーディションに呼ぼうよ」となって、呼んでみたけどどうも顔が違う。でももうオーディションはスタートしているから、「しょうがないから君が受けてよ」となって、合格したんです。だから辺見さんには本当に感謝しているの(笑)。
ちなみにその久米さんと、夫の和田さんが仲良しで。ラジオを聴いていた和田さんが「紹介して」とお願いしたところ、久米さんは「あれだけは絶対紹介しません!」と断っていたそうです。
結局、別の方から和田さんを紹介されて、私たちは結婚。和田さんも父に似て、家に人を呼ぶのが好きな人でした。いつもいろんなお客さんが来ていたんですけど、その中に作曲家の八木正生さんがいて、彼が料理雑誌のリレー連載記事を書いたとき、「次を書いてほしい」って私を指名したんです。私は子どものころから、オリジナルレシピでデタラメ料理を作るのが得意だったんですね。それでその記事にも、そんなレシピをいっぱい載せたの。そうしたら、それを見た雑誌やらテレビやらの人たちからオファーが殺到しました。料理愛好家として活動することになったわけです。
私の子育てはデタラメだらけ(笑)
唯一、子育てで意識してやっていたことがあるとすれば、それは子どもに料理する姿を見せていたことかもしれません。宿題なんかもいつも「台所でしなさい」って言っていたの。中学とか高校とかになっても。それが嫌な時期もあったのかなあ。もしかしたら反抗とかしていたのかもしれないけど、全然覚えていない。
息子たちには料理を教えたわけでもないし、「これからは男性も料理する時代よ」とか言ったこともありません。でも大学生になったころから、突然自分たちで料理をするようになったの。今では長男はステーキを焼くのがうまいし、次男はピザ竈を持っていて生地から作ったりしています。
自立した息子たちは今、しょっちゅう家族で遊びに来たり、私が行ったりして、よく一緒にご飯を食べています。デタラメばかりの私の子育てですが、今もいい関係を築けている理由があるとしたら、子どもたちを信じていたことだと思います。愛さえいっぱい与えていれば、子どもはちゃんと育つものなんじゃないかなあ。その愛の表現方法は人それぞれだと思いますけど、私の場合はそれが、「自分のベロを通してご飯を作ること」だったんだと思います。
平野レミ
家庭料理を作り続けた経験を活かし、料理愛好家として活躍。
「シェフ料理」ならぬ「シュフ料理」をモットーに、テレビ・雑誌等を通じて数々のアイデア料理を発信。
レミパンやエプロンなどのキッチングッズの開発も行い、ツイッターでの140字レシピも人気。
エッセイ「おいしい子育て」は、第9回 料理レシピ本大賞のエッセイ賞を受賞。
新刊の「エプロン手帖」も好評発売中。
げんき編集部
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki
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山本 奈緒子
1972年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。 『ViVi』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、 インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、 主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。
1972年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。 『ViVi』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、 インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、 主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。