古生物学者の相場先生が「人生で初めて採集した化石」とは? 岩手県南部で化石採集!
【ちょっとマニアな古生物のふしぎ】古生物学者・相場大佑先生が見つけた古生物のふしぎ
2024.06.13
古生物学者:相場 大佑
岩手県南部の古生代化石探訪(後編)
まるでダンゴムシのようにいくつもの節に分かれていて……! 縦に分割された体……!
これは、あこがれの三葉虫!!!
三葉虫はとても有名な古生物なので知っている方も多いと思いますが、古生代を代表する海棲の節足動物です。体が縦に三つに分かれたようになっているため「三葉虫」と呼ばれています。僕が小さいころ、三葉虫はお気に入りの古生物のひとつで、恐竜と同じくらい三葉虫の絵もよく描いていました。
あれから30年余り。見つけた化石は体の部分だけで頭はなく、あまりはっきりしない化石ですが、これが人生で初めて採集した三葉虫となりました。感激です。
大船渡市の古生代石炭紀
古澤さんの専門は、顕微鏡レベルの微小な化石を使って地層の年代を調べる研究で、三葉虫なども調べている方です。今回は久しぶりの再会でした。
古生代石炭紀は、デボン紀の次にあたる時代で約3億5920万年前から2億9900万年前までの期間を指します。温暖な気候で、さまざまな植物が栄えた時代です。この時代の大森林の植物が地層中で石炭となり、時代名の由来となりました。
化石産地は、街から少し離れた山中の林道を30分ほど登った先にありました。
古澤さんによると、それらの多くは脱皮殻なのだそう。一生のうち何度も脱皮していたら、確かに脱皮殻の化石のほうが本体の化石の数よりも多くなりそうです。
しばらく採集を続けていると古澤さんが何かを見つけたようでした。三葉虫の頭の横にある突起の化石とのことです。岩石から見えているのはごく一部で、これでよくそれだとわかるな、と感心していると、「もしかしたら頭の大部分が石の中に続いているかもしれません。ぜひ、クリーニングして余分な岩石を取り除いてみてください。」ということで化石を託してくれました。
大船渡市の石炭紀の地層からは、アンモナイトの化石はまだ見つかっていないようです。しかし、同じ頭足類であるオウムガイのなかまの化石は見つかっているようで、博物館に少し興味深い化石があり、古澤さんと一緒に、種類などを詳しく調べてみることになりました。
僕が前に勤めていた博物館があり、研究のメインフィールドにしていた北海道は中生代白亜紀よりも新しい時代の化石しか見つからない土地でした。岩手県の古生代の化石は見慣れないものばかりで、中生代時代とはまったく違う世界をのぞくことができて、とっても新鮮でした。
やっぱり時代が違うと面白いもので、日本中にあるアンモナイトが見つかる時代の地層をくまなく調べて回ってみたいなと思いました。古生代から中生代にかけて、海の環境や生態系が時代と共にどのように変わり、その中でアンモナイトたちがそれぞれの時代をどのように生き、どのように進化してきたのか、広く眺めて研究を進めていきたいです。
大船渡市にある大船渡市立博物館には、大船渡市から見つかった古生代シルル紀・デボン紀・石炭紀・ペルム紀の化石・岩石などがたくさん展示されています。これほど古生代の地層が連続的に見られる地域は国内でも珍しく、大船渡市立博物館は、東北地方の古生代の化石について学べる絶好の博物館なのではないかと思います。
ぜひ訪れて、岩手県南部地域の古生代の世界に思いを馳せてみてください。
画像提供/相場大佑
相場 大佑
深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現職。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに2種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。
深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現職。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに2種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。