セミの羽化工程、みたことありますか?
クマゼミは東京では珍しい!?
品川区にある私の家でも10年くらい前から朝方クマゼミの声が響いています。声が大きいので、たくさんいるように思えますが、東京ではまだまだアブラゼミのほうが圧倒的に多くて、クマゼミは声は聞けども姿を間近で見ることはそう簡単ではありません。
低いところにも留まっていて網で簡単に捕まえられました。東京で見慣れたアブラゼミやミンミンゼミより一回り大きくて立派です。オスとメスを捕まえてひっくり返して腹側を比較してみました。オスには鳴くためのオレンジ色の大きな「複弁」があって、これをふるわせてメスを呼びます。メスには複弁がないのでオスとメスは一目で区別できますね。
午後9時過ぎ羽化が始まったクマゼミを発見。殻を破ってからはねが伸びるまで1時間半。写真はその時間経過の様子です。9時55分、殻から全身が抜けるとあとはあっという間で、9分後の10時4分には、はねが伸びきりました。
羽化の時、翅脈に体液を送り込んで、縮れているはねを伸ばします。はねの根元のほうの翅脈は、うす緑色に見えますが、この緑色は体がすっかり固まった成虫にも残っています(でも死んだあと標本にすると、このきれいな緑色はつまらない茶色に変わってしまいます)。
昼間、活動している成虫の「翅脈」の先端部は黒です。それが羽化直後の数分間、青く見えたのは予想もしなかったことで感激しました。やはり自然の中で生きた実物を見ることは大切だと思いました。
伊藤 弥寿彦
1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクター・昆虫研究家として世界中をめぐる。NHK「生きもの地球紀行」「ダーウィンが来た!」シリーズのほか、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森」「南極大紀行」MOVE「昆虫 新訂版」など作品多数。初代総理大臣・伊藤博文は曽祖父。
1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクター・昆虫研究家として世界中をめぐる。NHK「生きもの地球紀行」「ダーウィンが来た!」シリーズのほか、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森」「南極大紀行」MOVE「昆虫 新訂版」など作品多数。初代総理大臣・伊藤博文は曽祖父。