刺されたら激痛! 水生昆虫「タガメ」はマムシをも襲う危険なハンター

【ちょっとマニアな秋の生きもの】昆虫研究家・伊藤弥寿彦先生が見つけた生きもののふしぎ

昆虫研究家:伊藤 弥寿彦

水生昆虫の巨大なハンター「タガメ」

タガメについては、皆さん名前だけはよくご存じだと思います。でも図鑑や映像で見たことはあっても、実際に野外でタガメを観察したり、捕まえたことのある人はどれくらいいるかな? 
水生昆虫の巨大なハンター「タガメ」
撮影/伊藤弥寿彦
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タガメは池や田んぼで暮らしていて体長は最大で6センチをゆうに越えます(メスのほうがオスより大きい)。水中で大きな鎌のような前あしを広げてじっと待ち伏せして、獲物が近づくと一瞬の早業で仕留めます。

フナやドジョウなどの魚やカエルを襲って食べますが、MOVEにはヘビ、それもなんとマムシを襲っている衝撃的な写真が載っていますよね。獲物を捕らえると針のような口を突き刺して消化液を流し込み、肉を溶かして体液を吸い取ってしまいます。筋肉を溶かす消火液ですから、刺されると本当に痛い! つかむときには気をつけなければなりません。
獲物を捕らえ、針のような口を突き刺す。
撮影/伊藤弥寿彦
タガメは水の中で暮らす肉食性のカメムシのなかまです。タイコウチやミズカマキリ、コオイムシ、マツモムシなども皆同じなかま。捕まえたとき素手でつかまないほうが良いのはマツモムシです。1センチ〜1.5センチくらいの大きさで、しかもツルツルしているので持つのが難しい。うっかりつまむと鋭い口で刺されます。

私は小学生のとき、比叡山の池でマツモムシを捕まえ、嬉しくなってつかんだ瞬間、刺されてあまりの痛さに号泣しました(笑)。

タガメやタイコウチ、ミズカマキリなどは大きいので上手に体をつかめば刺される心配はありません。タガメはここ数十年ですっかり数を減らし、野外で見られる場所は本当に少なくなりました。

実は私が初めてタガメを採ったのはほんの10年ほど前で、そこは愛知県の山奥にある田んぼの水草が茂った用水路でした。水網で掬ったら一発で巨大なメスが入って感激しました。

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いとう やすひこ

伊藤 弥寿彦

Ito Yasuhiko
自然番組ディレクター・昆虫研究家

1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクター・昆虫研究家として世界中をめぐる。NHK「生きもの地球紀行」「ダーウィンが来た!」シリーズのほか、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森」「南極大紀行」MOVE「昆虫 新訂版」など作品多数。初代総理大臣・伊藤博文は曽祖父。

1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクター・昆虫研究家として世界中をめぐる。NHK「生きもの地球紀行」「ダーウィンが来た!」シリーズのほか、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森」「南極大紀行」MOVE「昆虫 新訂版」など作品多数。初代総理大臣・伊藤博文は曽祖父。