
先着100名の『NO.6』質疑応答タイムを現地レポ! あさのあつこ「続編を書かずに死ねないと思った」
『NO.6[ナンバーシックス]再会#1』発売記念ミニトークショー
2025.07.06
ネズミの目の色を『夜が明ける前の空』と表現した理由

2つ目の質問は「14年ぶりに『NO.6』に挑むにあたり、作品への向き合い方や登場人物への解釈、感情などの変化がありましたか」という質問です。
あさの「こんな言い方は無責任かもしれないけれど、紫苑とネズミは私にとって、見当がつかないところがあるんです。
14年前もいまも、ふたりがどういう少年で、どういう世界を紡いでいくのか、ちゃんと知らなければいけないという思いは変わりません。
ただやっぱり、前のシリーズとは置かれている環境が違うので。
物語のなかの2年という月日を、私がどう受けとめて、また大人になった紫苑とネズミがどう関係を紡いでいくのかは、いまはまだ、手探り中です」
3つ目は「『NO.6[ナンバーシックス]再会#1』のなかで、特に思い入れのあるシーンやセリフを教えてください」という質問。
あさの「前のシリーズが崩壊であるならば、今度は再生をしていく物語です。
そのなかで、紫苑とネズミがどうやって再会するのか、そしてふたりがどんな言葉を紡いでいくのかを、みなさんには楽しんでいただけたらいいなと思います。
同時に、これは#2にもかかわることですが、紫苑が国家をどうつくり上げていくのかを、緻密に考えないといけないところです。
前シリーズで、西ブロックや矯正施設を生き抜いた紫苑が、今シリーズでどう戦うのかを見届けてくれたら嬉しいです。
またイヌカシや火藍(からん)の、それぞれの役割ではない生き方を、丁寧に描いてきたいと考えていますので、楽しみにしていてください」

4つ目は「紫苑がネズミに最初に出会ったときに、ネズミの目を見て『夜が明ける前の空の色』と表現されたのはなぜでしょうか」という質問。
あさの「空の色が、日々刻々と変わるのが好きなんです。同じ時間に見た空でも、同じ色ってないでしょう。
自分の思いもしないような変化を見せてくれるのが、空だと思っています。
ネズミの目を表現するとき、『きれいな灰色の瞳』ではなく、空の色で表現したいと思いました。
夜と朝の間(あわい)にある、表現しがたい色じゃないと、たぶん紫苑は惹かれないのだろうな、と。
理論ではなく、そう感じました」