23年中学受験は「ヤングケアラー」が出る 受験塾教室長が子どもを読書好きにする質問に回答
受験塾教室長がコッソリ教える、本好きな子どもの育て方
2022.10.17
大手進学塾 現役教室長:akira
Q5. 読書を習慣づけられません。どんな工夫をすればいいでしょうか?
A5.毎日読書の時間を(強制的に)作りましょう
寝る前の数分でいいので毎日読書タイムを作りましょう。10分でもかまいません。ちりも積もれば山となるです。寝る前のスマホは脳が覚醒してしまうのでよくないそうです。そこで寝る前の時間には、時間を決めてベッドで読書することをおすすめします。また読書を好きになるためには本を読む基礎体力(読解力)が必要です。語彙力や一般常識などです。そのためには国語の授業をはじめ日々の勉強もがんばりましょう。
読解力をつけるコツはこちらの過去記事もご参照ください。
Q6.マンガでもいいでしょうか?
A6.私はマンガもよく読みます。まずはマンガからでも大丈夫です。
マンガの神様、手塚治虫さんの著作で『ガラスの地球を救え―二十一世紀の君たちへ』という本があります。私の塾の国語の授業でも扱います。
その中でマンガ『ブラック・ジャック 』や『火の鳥』の話題が出るのですが、もちろんほとんどの子どもたちは知りません。この2作品は哲学的であり、私も大好きなマンガなので何かおすすめのマンガはと聞かれたらこちらをおすすめします。電子書籍でも読めますので、親御さんもいっしょに読んでみてください。
マンガと侮ることなかれ。とても面白いですし、また人生や命についても考えさせられます。2作品を読んだら『ガラスの地球を救え』も読んでみてください。
Q7.本を読むのが遅いのですが、速くなりますか?
A7.本を読むための基礎体力(学力)と比例します
私の教室では入試に出た本や模試で出た本を図書コーナーに置いています。
本が好きな子は休み時間などを利用して読んでいるのですが、とにかく読むスピードが速いです。彼ら、彼女らはなぜ読むのが速いのかというと、先ほども書きましたが、おそらく本を読むための基礎体力(学力)が備わっているのでしょう。基本的な語彙や周辺知識を習得しているため、わからない言葉が少ないのでリズムよく読めるのです。
読むスピードが遅いと自覚している人は、まずは国語の授業をしっかり聞く。漢字や語句の基本的な語彙の習得に励むことをおすすめします。
テクニック的な速読については、たとえば、メンタリストDaiGoさんの著書『知識を操る超読書術』では、「読むスピードを上げると、読んだ気になるだけで内容の理解度はむしろ下がる(理解とスピードはトレードオフの関係にある)(p.21より)」と記されています。
私もテクニック的な速読はおすすめしていません。日々、量を読むことで自然と読むスピードが速くなるように思います。子どもたちも特別なテクニックを使わずに速く読めるようになっています。上位のクラスの子どもたちの息抜きは読書のことが多いです。
趣味は読書と言えるようにちょっとずつでも毎日読書をしましょう。大げさに聞こえるかもしれませんが、人生が変わります。
Q8.本は買うべきなのでしょうか? お友だちや図書館から借りても良いですか?
A8.極力買ってあげてほしいです
本が好きな子はくり返し読みますから極力買ってあげてほしいです。
前述の佐藤優さんの著書では、「両親は読書を強要はしなかったが、反対することもなかった。『本は借りて読むものではない』と、父親は欲しい本は惜しみなく買ってくれた。(p.34より)」と書かれています。
読書好きな子どもになるためには手の届く範囲に本があることが必要だと感じます。
ただし、多読派の人は買うだけではとうてい読みたい本の量が追いつかないので図書館などを利用しているようです。
Q9.繰り返し読むときの、本のおすすめの読み方ってありますか?
A9.私の愛読書『保健室経由、かねやま本館。』を例にくり返しの読み方を紹介します
読書が好きな子は気に入った本は何度も読んでいるようです。1周目はストーリーを追うことを念頭に読んで、2周目は細かな伏線などもチェックしているようです。親御さんからも「うちの子、たぶん何回も読んでいます」と言われることもけっこうあります。映画と同じようにくり返し読むことで、また違った感想や印象を持つこともあるのです。
5巻が発売されたばかりの『保健室経由、かねやま本館。』ですが、生徒たちに聞いたおすすめの読み方をお教えします。『かねやま本館』1巻を例にとって解説します。一部1巻のネタバレもありますが、ご容赦ください。
①ストーリーを早く知りたいので1周目はさっと読む。『保健室経由、かねやま本館。』は最後の1ページ、1行まで油断できません。途中で断念してしまうことはまずないので安心してください。
②表紙、裏表紙、4巻からは表紙の裏もじっくり見る。1巻の表紙は主人公の「サーマ」です。しかし、裏表紙には「サーマ」と同じ制服を着た別の少女の絵が描かれています。2周目の人には誰かわかりますよね。ちなみに5巻でも表紙のお茶碗はとても大事なアイテムです。私はお茶碗のシーンでの予想外の展開に驚きました。おとないちあきさんの表紙、挿絵を楽しみながら2周目を味わいましょう。
③2周目は伏線などを注意しながら読む。1周目では、気づかなかった細かい演出を味わいながら読んでいきます。「サーマ」の兄、慈恵の髪が濡れていた場面やパソコンで調べ物をしていたシーンも2周目の方ならしっくりくるはずです。
④このあとはQ3にあるように人にすすめてみることをおすすめします。面白い本を読んだ人はおすそ分けすることは義務だと思います(笑)
私と『保健室経由、かねやま本館。』との出合い
講談社児童文学新人賞受賞作 の『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』、『十四歳日和』と2年連続中学入試問題に採用されていました。
国語の先生たちは、翌年の受賞作『保健室経由、かねやま本館。』も入試に出るのではと注目していました。よく話題にのぼっていたので私も読んでみました。
内容(最後の1ページ1行まで目が離せませんでした)はもちろん、おとないちあきさんの表紙絵が好みだったのもあり生徒にすすめていました。子どもたちの反応も非常によくて私の教室の中で大ブレイク。
今でも「うちの子よく繰り返し読んでます」「親子で読んでます」と言われます。読書の入り口としてはおすすめしやすい本です。
Q10.akiraさんも面白い本のおすそ分けをお願いします!
A10.ネタバレにならない程度に愛読書『保健室経由、かねやま本館。』の最新刊5巻の感想をお話しします
最後の1ページで鳥肌が立ちました。マーベル映画のように次巻への期待が膨らみます。
来年(23年)の入試のトレンドはズバリ「ヤングケアラー」(※1)です。
子どもたちが家族の世話をしているというのが国語でも社会でも取り沙汰されています。ACジャパンのCMなどで見たことがある人もいるかもしれませんね。
国語だと『マイブラザー』や『with you』が、社会では「こども家庭庁」(※2)の新設が注目されています。
5巻の『かねやま本館』のボンやミキも「ヤングケアラー」かもしれません。5巻は我慢している子どもたちがテーマになっています。我慢はすべて悪いわけではなくて成長する過程では必要なものです。皆さんもいろいろと考えてみてください。
※1 ヤングケアラー:法令上の定義はありませんが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもとされています。(厚生労働省のHPより)
※2 こども家庭庁:「こども家庭庁設置法」及び「こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」が、第208回通常国会で成立しました。内閣官房HPには子ども向けの資料もあります。一度親子で見ておきたいです。
実は、『保健室経由、かねやま本館。』へのリクエストがあります。
『保健室経由、かねやま本館。』は中学生専用の湯治場です。しかし、中学受験をこれからする皆さんはまだ小学生。でも小学生だって悩んでいます! いつの日か小学生にも開放される『保健室経由、かねやま本館。』を夢見ています(笑)
皆さんはどんな感想を持ちましたか? ぜひ教えてください。これもQ3のレビューを付けるのと同じです。ぜひ親御さんにも協力してもらってtwitterなどでつぶやいてみましょう。その際には「#かねやま本館」をつけてください。私もチェックします! みんなで感想を共有しましょう!
akira
学生時代から塾講師として中学受験指導に携わり、大学卒業後は塾業界に就職。2023年、関東圏にある現在の教室に室長として就任。保護者や生徒に対するきめ細かいコミュニケーションを重視した教室運営を行うことにより、御三家をはじめ、早稲田、渋谷幕張の合格者数は高い進学実績がある。SNSでも独自の学習指導法を公開している。保護者はもちろん、塾関係者からもそのノウハウに注目が集まっている。 X(旧Twitter):@AArukikata
学生時代から塾講師として中学受験指導に携わり、大学卒業後は塾業界に就職。2023年、関東圏にある現在の教室に室長として就任。保護者や生徒に対するきめ細かいコミュニケーションを重視した教室運営を行うことにより、御三家をはじめ、早稲田、渋谷幕張の合格者数は高い進学実績がある。SNSでも独自の学習指導法を公開している。保護者はもちろん、塾関係者からもそのノウハウに注目が集まっている。 X(旧Twitter):@AArukikata