食事は命をいただくこと
質問者さんのお子さんは好き嫌いがないとのことでした。それは素晴らしいことだと思いますが、好き嫌いに悩んでいるという方も多いでしょう。
以下は私の勉強会に参加されていた会員の方からいただいたレポートです。
「息子が2歳頃に、嫌いなニンジンを残そうとするので ”このニンジンは、嫌いだからと残してしまったらゴミになるだけ。私たちが食べて、私たちの体を作る助けになることで生かされるんだよ” というような難しい話をした覚えがあります。
2歳の息子が理解できたのかは分かりませんが、息子は ”ゴミになったらかわいそうだね” と言って、それ以降は好き嫌いで食べ残すようなことはほとんどしなくなりました。
飽食の時代となり、現在子育て中の世代は贅沢をして育った人が多いです。おいしくないから、もう食べられないからと言って食べ物を残す人が私たち子育て世代にも本当に多いのです。
親が平気で食べ物を粗末に扱っていたら、当然子どもも同じことをしますので、我が家ではそれだけは特に気を付けています。息子にも「人間は他の生き物の命をいただいて生きている」ということは伝えています」
このように食事は命をいただくこと、ということがお子さんに伝われば、一生懸命食べようとするのではないでしょうか。
食に関わる方法
もうひとつお勧めしたいのは、食に関わらせることです。
これは質問者さんも実践されているようですが、子どもが自分で作ったり、切ったりしたものは、食べるようになることが、よく報告されています。
玉ねぎの皮を剥く、レタスをちぎる、ゆでたまごの殻を剥く、といったことは1歳児からできることです。早い時期から食に関わらせてあげて、できる作業をだんだん増やしておくことが大切です。
なぜなら、4歳くらいになると、配膳や簡単なお手伝いでは、心が満足しないからです。
勉強会の会員の方の中には、休みの日にはまずメニューを子どもに決めさせるという方、買い物から任せるという方、一食まるごと任せるという方もいらっしゃるほどです。
食材になる植物を育てることも有効です。家庭菜園はもちろん、庭がなくともプランターでミニトマト、バケツで稲を育てることができます。
田植え、稲刈り、地引網を引く、自分で釣った魚を食べる、こういった経験はお金を払ってでもさせてあげたいものです。
なぜなら口で「命をいただくこと」と言うよりも、ずっと子どもに伝わりやすいからです。
子どもの敏感期に合ったお仕事
最後に、もっと子どもの心の根っことなる部分についてお話しましょう。
これまでの連載でも繰り返し述べてきたように、遊びではなく仕事をさせることで、子どもの内面が育ちます。
食事時にどう対応するのか、どのような言葉がけをしたらいいのか、を考えるだけではなく、子どもの敏感期に合ったお仕事を心ゆくまで毎日させてあげましょう。モンテッソーリは、子どもは精神的に飢えていると述べています。
特に難しいことをさせる必要はなく、ごはんをよそうところでもお伝えしたように、知らず知らずのうちに大人がしてしまっているような、手と五感を十分に使う日々の生活を、子ども自身ができるようにしてあげることです。
そうすれば、子ども自身が食事のときにはどうふるまえば良いのか、自ら考えて行動できるようになります。お母様が食事のときにあれこれ言わなくても済むようになり、お腹も心も満足した状態で、親子が笑顔で食事を終えることができるでしょう。
1日3回、365日繰り返される食事の時間を、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。
もっと知りたいあなたへ
当欄に掲載されている記事、写真の著作権は、著者または撮影者、講談社に帰属します。無断転載、無断コピー、再配信等は一切お断りします。
当欄に掲載されている記事、写真の著作権は、著者または撮影者、講談社に帰属します。無断転載、無断コピー、再配信等は一切お断りします。
田中 昌子
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年よりIT勉強会「てんしのおうち」主宰。著書に『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)など多数。
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年よりIT勉強会「てんしのおうち」主宰。著書に『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)など多数。