【不登校児】がいる家庭 “当事者”になって初めてわかる「重み」「辛さ」「消耗」とは…気鋭の出版ジャーナリストが初めて明かした

不登校児がいる家庭へ 当事者だから語れること

出版ジャーナリスト:飯田 一史

そんな簡単には見つからないし安定しない、と覚悟しておく

そしていろいろ経験した結果、正直、こうした問題に対して良い解決策はない。

「不登校」と一口に言っても、理由もその家庭が取りうる選択肢も、千差万別だ。フローチャートをつくって「はい、これが合ってるよ」なんて示せるものでもない。

ほかの家庭でうまくいったやり方や場所が、我が家ではまったくうまくいかなくても当たり前なのである。「これさえやれば」みたいな話はマユツバだと思っておいたほうがいい。

例えば、カウンセリングを受けたり、児童精神科に連れていったりして、何か劇的に変わる場合もあるだろうが、全然意味を感じられない場合もある。「何ヵ月も前から予約を取って、待たされて、これか……」などと思うことが、ざらに起こるのである。

大事なのは、不登校への対処法と同じだと個人的には考えている。「こうあるべき」「こうあってほしい」という理想や期待を取り払うことだ。

親が「学校は行かないといけない」「勉強はこれくらいできないといけない」「社会とのつながりや同年代の子との付き合いはこれくらいしないといけない」「将来は最低でもこのくらいの学歴をもってほしい」「こんな進路に進ませたい/こんな進路には進ませたくない」という理想を強固にもつほど、それを押しつけられる子どもはしんどくなる。親自体も苦しくなる。

子どもは子どもで「こうしたい」「こうしなきゃ」ということが自分への呪いになっている場合がある。

期待値が高いから、そうならない場合にイライラしたり、がっかりしたりする。だから、それをほぐす必要がある。できない、しないなら「まあ、そんなもんだよね」「なんとかなるだろう」と受け入れる。

自分の人生でさえままならないのだから、子どもの人生をどうこうできるはずもないのだ。その現実を受けとめる。そのうえでやれること、折り合いを付けられるものを探す。

それしかないと思う。

自分が住む物件を探すときに、初見で「ここだ!」と決まることが少ないように、何軒も足を運んだり、あれこれやってみないことには、不登校になった場合に過ごす場所や、一日の過ごし方は見つからない。

子どもや親の状況が変わったり、学年や学校が変わればまた新しく探さなければならなくなることも普通に起こる。その過程で「きついな」とか「先が見えない」と感じることもあるけれど、「そういうもの」とあらかじめ思っていればまだ耐えられる。

期待値を上げたせいでダメージを負うくらいなら、半分あきらめるくらいでもいいと思う。

不登校自体をネガティブに捉えるかどうかとか、子どもの将来を不安に思うかどうかといったこととは別に、単純に不登校になると、学校に行く場合とは異なる負荷・負担が生じる(最初から「完全に放置する」ことを選びでもしない限りは)。

仮にネガティブに捉えていなくても、そこまで心配しなかったとしても、親が子どもとコミュニケーションをどうにかして取りつつ、日中に時間をすごせる居場所探しをしたり、各種手続きをしたり、家にいるならいるで給食の代わりの昼食を用意したりといった大変さはなくならない。

そこのところの辛さは、あまり外側には伝わっていない。世の中の不登校本でも強調されることは少ない。しかし、多くの人が直面するであろうしんどい部分である。

文/飯田一史

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飯田 一史

Ichishi Iida
出版ジャーナリスト・ライター

青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。 出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。 主な著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 (平凡社)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ウェブ小説30年史』(講談社)ほか。 ichiiida.theletter.jp

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青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。 出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。 主な著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 (平凡社)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ウェブ小説30年史』(講談社)ほか。 ichiiida.theletter.jp