不登校のキミへ… 「不登校は誰にでも起きる」と法律で定められている 生きているだけで子どもはスゴイ! 2000人の子どもを見た識者のメッセージ
シリーズ「不登校のキミとその親へ」#7‐1 認定NPO法人「フリースペースたまりば」理事長・西野博之さん~子どもたちへ~
2024.10.14
認定NPO法人「フリースペースたまりば」理事長:西野 博之
今は学校の外でも、学ぶことや育つことは十分できるようになっています。というのも、僕たちが一生懸命に続けてきたフリースペースのような居場所が各地に増えているとともに、学校に行けない子どもたちのために多様な選択肢を用意しようという考え方に、国自体が変わってきているのです。
「教育機会確保法」という法律もできました。この法律では、「不登校は誰にでも起こり得ること」で、「不登校というだけで問題行動であると受け取られないように配慮する」と決められているものです。
そして学校に行けない子どもたちを支えるときには本人の意思を尊重し、休養する必要性もふまえながら、学校外の学びと育ちをしっかり守る取り組みを、その子どもたちが住んでいる地域(自治体)の責任で進めなくてはいけない、と決まっているんだ。
わかりやすく言うと、学校に行けなくなることは、あなただけに起こる特別なことではないのだから、学校ではないところに居場所を用意するとか、心が元気になるまでゆっくり休ませるとか、大人たちが優しく支えていこう、という法律です。
法律とは国のルールです。学校に行けない子を守ろうと国が決めたのだから、あなたにとって今の学校がうまく合わなくてしんどくても、学校以外の選択肢を探して、堂々と自分らしく過ごしていけばいい。
不登校は大丈夫と言いきれるワケ
僕はこの「大丈夫のタネ」をまきたいと思って、今の活動を続けてきました。
僕たちの団体が運営する「フリースペースえん」は、川崎市(神奈川県)が2003年に作った、子どもたちが自由に遊びながら学べる施設「川崎市子ども夢パーク」の中にある、学校に行けない子どもたちが安心して過ごせる居場所です。今年(2024年)で21年目を迎えました。
そしてこの「えん」には、さまざまな年齢の子どもたちが通ってきて、一人一人が自分に合った形で過ごしたり、学んだりしています。
僕が学校に行けない子どもたちの居場所を作り始めた1990年初めごろは、「不登校」の子どもたちに向けられた社会の視線は、もっともっと冷たいものでした。でも、僕たちのような大人が、学校に行けない子どもたちを生きづらくさせている世の中に対して、声をあげ続けた結果、社会も国も少しずつ変わってきました。
ある地方の教育委員会では、「登校」を前提として「不」を付けた「不登校」という言葉自体が、今の子どもたちに合わなくなってきている、という意見も出始めています。
150年間、ほとんど形を変えず、時代の変化からズレたまま続いてきた学校教育システムこそが問題なのであって、学校に「行けない」というネガティブなとらえ方を改める必要があるという話を、教育委員会の人たちと、一緒に話せる時代になりました。
きっとそう遠くない将来に、学校に行けないことをネガティブにとらえる考え方も、大きく変わるはずだと僕は思っています。
2000人ほどの子どもたちと関わってきた僕の経験からいっても、学校に行かなかった子どもたちもしっかり成長して、ちゃんと社会で生きています。義務教育の段階では学校に行けなくても、その後で高校に進んだ子もたくさんいたし、大学に行く子も就職する子もたくさんいました。
学校に行かなくても学校の「外」で学びを深め、自分の思った生き方を選び、大人になっていきます。
だからもし今学校に行けなくてしんどくても、あなたは本当に“だいじょうぶ”なんだ。
この話の最初に、僕は「学校と命、どっちが大事?」と聞いたよね。そもそもあなたが今生きていること自体が奇跡で、「とてもすごいこと」だってことも、伝えておかなくちゃね。
そしてもうひとつ、大切な言葉をあなたに伝えておきたい。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
取材・文/浜田奈美
※西野博之さんインタビューは全4回(公開までリンク無効)
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浜田 奈美
1969年、さいたま市出身。埼玉県立浦和第一女子高校を経て早稲田大学教育学部卒業ののち、1993年2月に朝日新聞に入社。 大阪運動部(現スポーツ部)を振り出しに、高知支局や大阪社会部、アエラ編集部、東京本社文化部などで記者として勤務。勤続30年を迎えた2023年3月に退社後、フリーライターとして活動。 2024年5月、国内では2例目となる“コミュニティー型”のこどもホスピス「うみとそらのおうち」(横浜市金沢区)に密着取材したノンフィクション『最後の花火』(朝日新聞出版)を刊行した。
1969年、さいたま市出身。埼玉県立浦和第一女子高校を経て早稲田大学教育学部卒業ののち、1993年2月に朝日新聞に入社。 大阪運動部(現スポーツ部)を振り出しに、高知支局や大阪社会部、アエラ編集部、東京本社文化部などで記者として勤務。勤続30年を迎えた2023年3月に退社後、フリーライターとして活動。 2024年5月、国内では2例目となる“コミュニティー型”のこどもホスピス「うみとそらのおうち」(横浜市金沢区)に密着取材したノンフィクション『最後の花火』(朝日新聞出版)を刊行した。
西野 博之
東京都生まれ。川崎市子ども夢パーク、フリースペースえんなど、各事業の総合アドバイザー。精神保健福祉士、神奈川大学非常勤講師。 1986年より学校に行かない子どもや若者の居場所づくりを行う。文部科学省「フリースクール等に関する検討会議」委員など数々の公職も歴任。NHKをはじめとするメディアにも多数登場。 2021年まで15年間、「川崎市子ども夢パーク」の所長を務め、2022年にはそこで過ごす子どもたちの日常を描いたドキュメンタリー映画「ゆめパのじかん」が公開された。 『学校に行かない子どもが見ている世界』(KADOKAWA)など著書多数。 ●NPO法人フリースペースたまりば
東京都生まれ。川崎市子ども夢パーク、フリースペースえんなど、各事業の総合アドバイザー。精神保健福祉士、神奈川大学非常勤講師。 1986年より学校に行かない子どもや若者の居場所づくりを行う。文部科学省「フリースクール等に関する検討会議」委員など数々の公職も歴任。NHKをはじめとするメディアにも多数登場。 2021年まで15年間、「川崎市子ども夢パーク」の所長を務め、2022年にはそこで過ごす子どもたちの日常を描いたドキュメンタリー映画「ゆめパのじかん」が公開された。 『学校に行かない子どもが見ている世界』(KADOKAWA)など著書多数。 ●NPO法人フリースペースたまりば