『第1回 読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』特別審査員・横山だいすけさんインタビュー「絵本は人生に必要なもの」

11代目うたのおにいさんが気づいた、絵本と歌の共通点

横山 ありますね。絵本は、現実世界では絶対に起こらないことを、絵や物語で表現していますよね。歌のストーリーも、絵本に似ているものがあるんですよ。

例えば、僕が大好きな絵本『ないた赤おに』では、人間と仲良しになりたい赤鬼のために協力した青鬼が、赤鬼のためを思って黙って旅に出てしまい、家に赤鬼宛の手紙を残しました。その手紙は、大人が読むと涙してしまうくらい温かい友情と、相手を思う気持ちであふれています。メッセージ性のある歌や優しい歌を歌うときは、『ないた赤おに』の手紙を読んで感動した気持ちを当てて、歌うことがありますね。

また、宇宙や恐竜など、自分が見ることができない景色や世界を描いた絵本を見ると、絵の印象が残っていて、宇宙や恐竜の歌を歌うときにパッと思い出して、歌うことがあります。絵本の絵はわかりやすいので、印象に残りやすいのかもしれませんね。

横山だいすけさんの、お気に入りの絵本を見せていただきました!

「親」を感じる一生モノの絵本『ないた赤おに』

──横山さんにとって印象深い絵本はなんですか?

横山 やっぱり『ないた赤おに』ですね。子どものときに、母親が泣きながら読んでくれたことを覚えています。

子どもにとって「鬼」は、悪者の代表格で、ちょっと怖い存在。そんな鬼に「人間と仲良くなりたい」と言われても、やっぱり子ども心に共感できなかったんです。だから、青鬼がわざと人間に悪さをして、赤鬼が人間に好かれるために「もっと強く叩いて」と言う姿よりも、「親が感動して泣いていた」という記憶が強く残っていました。

でも大人になって『ないた赤おに』を読んだら、青鬼が残した最後の手紙のところで号泣しちゃって。母が泣いていたのは「これか」と。絵本には、子どもならではの楽しみ方も大人ならではの楽しみ方もあって、その時々に感じるものが違っていてもいいと思います。それが僕の場合、大人になったら親と同じ状況になった。だから僕にとって『ないた赤おに』は、「親」を感じる作品なんだと思います。

『ないた赤おに』作:浜田廣介 絵: いもとようこ 金の星社

──そんなふうに、おはなしの一部分や、読んだときに思ったこと、見た光景などが断片的に残るのが、絵本のおもしろいところかなと思います。今も絵本が大好きということですが、自分のために絵本を選んだり買ったりしますか?

横山 あります。子どもといっしょに本屋に行くと、子どもと親では、興味を持つものが違うんですよね。なので、「うちの子は今、こういうものが好きなんだ」と思いながら、自分は新しい作品やおもしろそうな絵本を探したり、本屋さんのおすすめはなんだろうと見て回ったりして、気がついたら夢中になっています。

ですから本屋さんではいつも、最終的に何冊買うのか、どの絵本を買うのかで家族会議をします。もちろん、「どれにする? パパはこれが欲しい」と主張します(笑)。

──それは、親が勝つこともあるんですか?

横山 いえ、たいていは子どもの勝ちです(笑)。でもたまに「いいよ」と言われたときは、買ってもらいます。

──絵本選びの傾向は、親と子で違いますか?

横山 やっぱり子どもは、その時々で気になるものが違うし、しょっちゅう変わりますね。一時期、図鑑絵本にハマって、虫が出てくる絵本にも興味を持っていました。子どもには、子ども自身が興味を持っているものや、成長に合わせたものを選ぶようにしています。

──ご自身がつい目がいってしまう絵本はありますか?

横山 僕はやっぱり、表紙の絵の強さが気になります。最近、図書館で本を借りようと思ったときに、表紙の絵の強さで惹かれたのが、『めっきらもっきら どおんどん』です。「なんだこれ、絶対に読みたい!」と思った表紙でした。

──横山さんが本当に絵本がお好きなんだということが伝わってくるエピソードですね! ありがとうございました。

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