人気ポッドキャスト『Teacher Teacher』が作った“完全無料”の不登校支援フリースクールと 新時代の“子育てコミュニティ”

子育てのラジオTeacher Teacher#3~フリースクール編~

秋山 仁志・福田 遼(Teacher Teacher)

平日はオンラインのフリースクールに出勤している、福岡在住のはるかさん(写真右)。週末はひとしさん(写真左)と東京で合流し、取材や子育てイベント出演をこなすことも。  撮影:日下部真紀
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「子どもの社会的自立」を最優先に

ポッドキャストラジオ以外の活動としてはじめて手がけた、無料のオンラインフリースクール「コンコン」。構想当初は、オンラインではなくてリアルなフリースクールを作りたいという野望がありました。

「子どもたちと触れ合いたかったし、理想の学校を作りたいと思っていて。でも、きちんと不登校に関する調査を進めていくと、本当に困っているのは家を出られない子たちだってことがわかったんです。だから、オンラインという形がしっくりくるな、と」(はるかさん)

「かつ、現状の国内のフリースクールを運営している人たちと関わる中で、継続して運営することの難しさにも気がついてしまって……。だから僕たちは、その仕組みごと変えたほうがいいんじゃないか、って」(ひとしさん)

「もちろんすべてのフリースクールがそうではないですが、そもそも構造の矛盾がある。一生懸命に支援をして、子どもたちが学校でも頑張れるようになると、その結果、フリースクールとしては収益が下がって、スタッフの給料を払えずに困ってしまう。そんなフリースクールの運営者にも出会ってきました。

経営が苦しくなると、不登校支援の目的である『子どもの社会的自立』だけを純粋に目指すのが難しくなる、という事例に直面したんです」(はるかさん)

もともと「無料にしたい」という思いの裏には、教育格差をなくしたい、継続した支援のために金銭面での障壁をなくしたい、などのさまざまな理由がありました。

「僕は、のちのち無料にするとしても、ある程度は運営を形にしてからでいいと考えていた。でもそういう側面に気がついてからは、“無料”で運営することに意味がある、それを僕たちがやらないと、と。

難しい挑戦かもしれないけど、まず突っ走ってみて、ひとつの形にしたほうがいいなと強く感じたんです」(ひとしさん)

なぜ無料のフリースクールが成り立つのか?

とはいえ、しっかりとしたシステムを構築し、人員を動かすとなるとボランティアだけでは成り立ちづらいのも現実です。どうやって無料のフリースクールを実現させているのでしょう。

「コンコンの運営は、ポッドキャストを通じて僕たちの活動に賛同してくれる方たちからの支援で成り立っている。個人だと月額1,100円から、法人だと11,000円から、ご希望の金額で単発の支援をしてくださる方もいます」(ひとしさん)

おもしろいのは、月額で支援をする人たちは、「ティーチャーティーチャー村」というコミュニティに招待されて、村人になれるという仕組み。

「ティーチャーティーチャー村は、ディスコード(Discord)という仮想空間を使って村人たちとコミュニケーションをとることができる場です。子育ての悩みはもちろん、『今日の晩御飯、献立どうする?』などの雑談もあり、村の中ではいろいろな意見交換が飛び交っています。見るだけ、聞くだけのスタイルで楽しんでいる村人もいます」(ひとしさん)

「子どもの問題を家庭だけで抱え込まず、社会全体で子育てをしていくという形ですよね」と、はるかさん。そんな村人たちのサポートで、コンコンは運営されているのです。

オンラインフリースクール「コンコン」の様子。メタバースで登校し、はるか先生たちと一日を過ごす。  写真提供:Teacher Teacher

排出型ではないフリースクールの課題

「コンコン」のメタバース校舎には、はるか先生をはじめ、数名の先生やカウンセラー、ボランティアがいます。開校して4月(2025年)で1年になりますが、現状はどんな先生が、どういったスタイルで教えているのでしょうか。

「親は子どもに幸せになってほしいし、子どもも幸せになりたい。親子で共通の目的は持っているはずなのに、ぶつかってしまう。親子の目線を合わせてサポートするのが僕たちの役割」(はるかさん)

「今、コンコンの生徒は、小学校1年生から中学校3年生まで、12名在籍しています(2024年12月現在)。朝は登校してから、雑談をして心をほぐすリラックスタイムや、ワクワクすることに取り組む探究学習の時間の後に、学習タイム。

昼食を食べたら掃除をしたり運動をしたり。子どもたちそれぞれに合ったスモールステップを話し合って、教育機関へ向かうようサポートしています。子どもたちと関わるのは、元小学校教諭やカウンセラーの先生たち。僕も基本的には毎日、コンコンで子どもたちと触れ合っています」(はるかさん)

コンコン入校後、だいたいの子どもたちは約1~2ヵ月以内に再登校を始めます。完全に毎日学校へ通えるようになって、約3ヵ月でコンコンを卒業した子も。しかし、入校を待っている子は常時20人以上いて、毎週のように待機が増えている状況です。

「もともとは、入校期間に期限を設けようと思っていたんです。でも子どもたちと実際に関わってみると、支援が必要な期間はそれぞれの子どもによって違うのに、みんな同じ期間で卒業する仕組みに違和感を感じたんです」(はるかさん)

期限を設けた排出型ではないフリースクールとなると、待機は増え続けます。

「もちろん子どもに応じて、目標は設けています。でも、支援が必要なまま卒業させるようなことはしない。そうすると入校できる人数が限られてしまう。もしかしたらこの支援方法には限界があるのかも、と相当悩んだ時期がありました。その突破口になったのが、ティーチャーティーチャー村の人たちなんです」(はるかさん)

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