赤ちゃんの成長 子どもたちが「運動」「言葉」「社会性」を身につける方法とは? 発達研究の第一人者が解説

【セミナーレポート】「うちの子、遅れてる?」を専門家が解説! 「0・1・2・3歳児の発達を知ろう」#1

小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一

社会性を身につけるには?〔テーマ3〕

ママ友がいないので、息子が同年代の子と遊ぶ機会が保育園以外にありません。コミュニケーション能力に悪影響が出ないか心配です。

保育園などで社会性を身につけさせるのは、早ければ早いほどいいですか?

自然と身につきます〔回答3〕

他人の気持ちがわかるようになるのは何歳から?

親や兄弟の会話、テレビやラジオなどから言葉を聞くことによって理解できる言葉が増えていくと、だんだんと自分の気持ちを表現できるようになります。そして、他人の気持ちを理解できるようになります。そうして初めてコミュニケーションが取れるようになります。

それから、「社会性」が生まれてきます。社会性は経験によって培われるものです。コミュニケーションの中で、表情や言葉の強弱などから相手の気持ちを理解する能力、「共感性」がベースとなります。

社会性の獲得は発達の中でもとてもむずかしい部分です。

うれしいのか、悲しいのか、怒っているのかなど他人の気持ちを理解して行動することは「心の理論」と呼ばれています。では、心の理論を獲得できるのはいつごろでしょうか? 

平均すると、4歳から5歳と言われています。3歳くらいまでは、実は他人の気持ちはわからないんですね。

共感性が育つと泣いている子を慰める、といったことができるようになります。  写真:アフロ

「共感性」を子どもに期待しすぎてはいけない

心の理論をすでに獲得している大人は、日常の中で他人の気持ちを常に感じ取っています。今朝はどうも旦那がプリプリしているな、とか、上司はなんだか機嫌がよさそう、とか、ほとんど無意識に察知できます。

3歳児にはまだ心の理論がありませんから、他人の気持ちを理解することを期待してはいけません。先ほど、言葉を理解しているかどうかのテストの話をしましたが、そこに他者への理解の要素が混在してしまうと、3歳くらいまでの子はうまく反応できません。

「おてて見せて」の呼びかけに反応してくれた子も、「悲しい人は誰?」の呼びかけにはポカンとしてしまう可能性は大です。

つい大人は他人の気持ちを思いやることが当たり前のことだと考えて、子どもにも同じ期待をしてしまいますが、そこについてはまだ未熟な存在であることを忘れてはいけません。

心の理論を獲得し、共感性を持つ動物にゴリラやチンパンジーなどがいます。これらは霊長類であり人間に近い動物ですが、他に人間とまったく違っているのに共感性を持っている動物がいます。

それは犬です。

犬は言葉を話すことはできませんが、人間の表情や声色などを読み取ることに長けています。どうして犬が共感性を持っているかも謎です。

なぜかはわからないけれど、生まれつき備わっているとしか言いようがないのです。共感性があったからこそ、こんなに人間と仲良くするようになっているわけです。

心の理論が身につくのは4歳から5歳ですが、3歳でも共感性をある程度獲得していく子もいます。やはり個人差はあるんですね。

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子育てをしているとつい先回りをして、あれこれと心配をしてしまいがちです。しかし、子どもの中には自然と育っていく力が備わっているということがよくわかりました。

安全安心な環境を作ってあげつつ、我が子の成長する力を信じて、ゆったりと見守ってあげたいものですね。

次回のセミナーレポート第2回では、食事や栄養、睡眠、運動に関するお悩みが登場します。

(#2に続く)

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さかきはら よういち

榊原 洋一

小児科医・お茶の水女子大学名誉教授

小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。

小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。