子どもの考える力と伝える力「クリティカル・シンキング」を低下させる親の「NGワード」 

子どもの考える力と伝える力を育む「クリティカル・シンキング」 #2

これがクリティカル・シンキング力を育む対話例!

クリティカル・シンキングの力は「考えて」「伝える」、つまり対話なしでは育めません。では、実際に、先生は塾でどのような対話を子どもたちとしているのでしょうか。具体的な対話例を教えていただきました。

「子どもには自分の考えを伝えることは楽しいと思ってもらうことが大切なので、最初は特に子どもが話しやすそうな『好きな○○をいってみて』を材料にすることが多いです。たとえば『好きな食べ物をいってみて!』という感じです」(狩野先生)

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対話は「受けとめ」と「発展」を意識!

前述の例のように、クリティカル・シンキングの力を育むときの対話は、受けとめと発展が原則です。

「受けとめは、『へ~』以外に、子どもの言葉をオウム返しするのもOKです。また、発展には『カレーライスのどんなところが好き?』と突っ込んで聞くのもテクニックでしょう。

こういった対話を意識してしたことがなければ、どこで対話が終わりなのか、あるいは終わらせたら良いのかわからない方がほとんどですが、ここでは『辛いカレーは嫌いだけど、甘いハヤシも好きじゃないな……』と子どもがいえた時点がいったんの終了ポイントです。

クリティカル・シンキングはメタ認知、つまり自分自身の思考や行動などを客観的にとらえて認識するという側面があるので、『自分の嗜好がわかっている』場面が出てきたら、ひとまずこの話題は終了してもOKでしょう」(狩野先生)

子どもが全然、会話に乗ってこない場合はどうすればいい?

対話の場では緊張して話せなかったり、そもそも言葉が出てこなかったりする子もいますが、その場合はどのような対応をしているのでしょうか。

子どもがモジモジしていたら、『ほらほら、何かいってみて』と催促するのはNGです。ここは『いいたくなかったら、いわなくていいからね』と伝えてあげます

家庭の場合も、我が子が言葉に詰まっていたら、問い詰めたり急かしたりするのはやめましょう。

あるいは、親子なら子どもの好きなことがわかるのですから、別の話題を振ってみてください。きっと堰を切ったように話し始めますよ」(狩野先生)

どの子もスラスラ言葉が出てくるわけではありません。クリティカル・シンキングの力は対話から育むものとはいいますが、狩野先生は子どものタイミングを待ってあげることも大切だと話します。

連載第3回は、言葉で伝えることが苦手な子や低学年におすすめしたい、子どもの言葉を引き出す「気持ちの体温計」を紹介します。

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◆狩野 みき(かの みき)
「自分で考える力」イニシアティブ、THINK-AID主宰。
聖心女子学院初・中等科に学び、中学高校時代をドイツのブリティッシュ・スクールにて過ごす。慶應義塾大学法学部卒、慶應義塾大学大学院博士課程修了(英文学)。30年大学等で「考える力・伝える力」と英語を教える。慶應義塾大学、東京藝術大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師、子どもの考える力教育推進委員会の代表も務める。著書に『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』『世界のエリートが学んできた 自分の考えを「伝える力」の授業』(ともに日本実業出版社)、『「自分で考える力」が育つ 親子の対話術』(朝日新聞出版)などがある。2012年、TEDxTokyo Teachersにて、日本の子どもたちにもっと考える力を、という趣旨のTEDトーク“It’s Thinking Time”(英文)を披露し好評を博した。2児の母。2025年2月、小学生対象のクリティカル・シンキングのプログラムが15周年を迎える。

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取材・文/梶原知恵

【子どもの考える力と伝える力を育む「クリティカル・シンキング」】の連載は、全3回。
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※公開日までリンク無効

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かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。