「宿題したくない」にどう答える? 子どもが心から納得できる声かけを専門家が伝授
シリーズ「子どもの声をきく」#1-3 子どもアドボカシー協議会理事長・相澤仁さん~子どもの声に困ったら~
2022.10.19
NPO法人子どもアドボカシー協会理事長・大分大学福祉健康科学部教授:相澤 仁
子どもの声を聞くことが大事だとわかっていても、その声をすべて受け入れられるかといえば、現実的に難しいことも多々。そんなとき、どう折り合いをつけたらよいのでしょうか。
子どもの声を聴き、主張を代弁する活動である「子どもアドボカシー」と、その代弁者「アドボケイト」の普及に努める、NPO法人子どもアドボカシー協議会の理事長・相澤仁さんに、話を聞きました。
※全3回の3回目(#1、#2を読む)
相澤 仁(あいざわ・まさし)PROFILE
1956年埼玉県生まれ。大分大学福祉健康科学部教授。現在、日本子ども家庭福祉学会会長、厚生労働省社会保障審議会児童部会部会長代理、全国家庭養護推進ネットワーク共同代表、全国子ども家庭養育支援研究会会長も兼任。
受け入れがたい子どもの「声」はどうする?
「子どもの声を聞くべき」とひと括りに言っても、声の内容はさまざまです。
「今日はパパとお風呂に入りたい」「日曜日はどこそこに遊びに行きたい」「この服を着たい」といった比較的受け入れやすい希望もあれば、「ずっとゲームをしていたい」「宿題したくない」「習い事をやめたい」といった教育上悩ましい声、そして「今日は保育園(学校)を休みたい」といった、親の生活や仕事に支障が出そうな主張もあるでしょう。
「子どもの声」を聞いたところで、受け入れがたい内容だった場合、親が納得しなくても子どもの意見を尊重したほうがいいのか、説得したほうがいいのか、話し合って折衷案を探したほうがいいのか、悩ましいですよね。
掘り下げて考えていきましょう。
デメリットやリスクを提示して子ども自身に考えてもらう
大前提として、子どもはいかなる育ちの場所でも自分の意見を表明する権利があります。ただ、その意見が、子どもの安全を脅かすものなら、すぐさま止める必要があります。
例えばまだ幼いのに徒歩1時間くらいかかる家まで「ひとりで帰りたい」と言ったらそれは止めるべきです。
それ以外のよくある発言で、「宿題をしたくない」など、親としてはちょっと困惑することを言った場合はどうするか。
まずは「どうしてそう思うの?」などと、子どもの気持ちを聞いてみること。子どもの思いを聞いて親が納得できるなら良しとしましょう。
納得できない理由なら、それを実行したらどんなことが起こりうるか、リスクやデメリットも提示してはどうでしょうか。
「こういう点について心配なんだけど、考えてみた? どう思ってる?」という問いかけです。
「宿題をやらないで学校に行くと、その日に習った内容が頭に残らなくなって、次の授業がわからなくなる可能性があるけど、それでもいいの?」などと、本人が自己決定をする前に考えるヒントを与えるのです。
「あ、そういうことを考えてなかった。やっぱりパパママが言ったことを考えると宿題するほうがいいかもしれない」と子どもが自分で決定すればOK。
大人は、子どもより経験豊富ですから、行動の先のリスクも、問題にぶつかったときの対処法も、複数考えることができますよね。
その中から、子どもの発想にはない視点をちょっと出して思案してもらえば、子どもはいろんな物事を考えていく力をつけていきます。
子どもがつまずいたら「どうしたらよかった?」と聞く
親が提示するリスクやデメリットを聞きつつも、あえて自分が決めた選択を取ろうとする子どもには、安全を脅かす行為や法に抵触する行為など自傷他害に結びつく場合以外であれば、そのまま実行に移してもらってもよいのではないでしょうか。
その結果、子どもがつまずいたら、「だから言ったでしょ」と言いたいのをぐっとこらえて、「どうしたらよかったと思う?」と子どもに聞くことをおすすめします。
宿題で例えると、「それでも宿題はやらずに学校に行く!」と言ったら、ひとまずその意見を尊重します。
結果的に先生に怒られたら、決して「ママのせいで怒られた!」などと責任転嫁させず、現実を受け止めてもらうのです。
そして、どうすればよかったのかを考えてもらう。この経験を繰り返していくことで、子どもは学習しますし、問題を解決する力を身につけていきます。
自分で決めたことには自分で責任を持つ。これを小さいころから身につけてもらうことで、子どもは心理的に自立していきます。大人になるってそういうことですよね。