
うちの子は「スマホ認知症」予備軍? 日本初「スマホ認知症外来」の医師が対処法や予防法を伝授
「スマホ認知症」の怖さと予防法 脳神経内科医が解説 #2 (3/3) 1ページ目に戻る
2025.12.03
脳神経内科医、金町駅前脳神経内科院長:内野 勝行
勉強や仕事でデジタルデバイスを使っても「スマホ認知症」にはならないワケ
スマホ認知症は、スマホなどを含めたデジタルデバイスへの依存症のことをいいます。それでは、勉強や仕事で毎日、何時間もそれらを使っている場合、すでにスマホ認知症になっているといえるのでしょうか。
「勉強や仕事でデジタルデバイスを長時間利用した場合、別のリスクはあるものの、スマホ認知症にはなりません。なぜなら、それらを目的を持って使っているからです。
スマホ認知症は、デジタルデバイスを何の目的もなく、長時間ダラダラと使うことで陥っていきます」(内野先生)
現在は学校でも、調べ物をするときなどにタブレットを使いますが、たとえば虫について2~3時間タブレットで調べても、スマホ認知症の原因にはなりません。これはタブレットを、図鑑や事典、辞書として使っているためです。
つまり、スマホ認知症を招くダラダラ使いと、そうではない使い方の違いは、目にした情報のすべてを無防備に受動しているか、情報を主体的に取り扱い、取捨選択しているかの差だといえるでしょう。
親子で実践! スマホ認知症を防ぐコツ
「スマホ認知症を防ぐには、料理をオススメしますね。これは親御さんだけでなく、お子さんにもオススメの防止法です。たとえばカレーを作るとなったら、その間はスマホから必然的に手が離せます。
レシピを、スマホやタブレットを見ながら作る方もいますが、この場合は目的を持ってそれらを使っているので、スマホ認知症の原因にはなりません。
また、料理は脳にもいい刺激を与えます。脳には記憶を司る海馬という部分がありますが、そこから完成形を引っ張り出して、それに向かって段取りを考えるのです。段取りを考えることは、理性、社会性、計画性などを司る前頭葉を使うことにつながります。
さらに、料理は食材を切ったり、洗い物をしたり、火加減を見るなど、同時にいろいろな作業が発生するので、マルチタスクの脳の使い方をします。嗅覚や味覚、視覚、触覚の情報も入ってきて、スマホとは違った刺激を脳に与えるのです」(内野先生)
子どもは「スマホは○時~○時まで禁止!」と親から制限されると、余計にスマホをやりたくなってしまいます。頭ごなしに禁止にするよりも、料理などを手伝ってもらい、スマホを手放す時間にするだけでなく、親子のコミュニケーションタイムとして活用していくといいでしょう。
子どものスマホ時間はどのくらいが正解?
勉強や仕事以外でスマホを含めたデジタルデバイスを使う場合、内野先生はいったい何時間を推奨しているのでしょうか。
「全年齢、1時間半以内をオススメしています。人間の集中力が続く時間がその程度なので、それ以上は脳が疲れてしまうと考えるからです」(内野先生)
現代は各種手続きをはじめ、勉強や仕事も、なにかしらの端末利用が前提になっていることが多く、スマホを含めたデジタルデバイスが必須の社会になっています。
しかし、それらをなんの目的もなくダラダラ使うことは、脳に不要な情報を与え続けて正確なアウトプットを阻害し、思考を停止させてしまう懸念があります。
勉強だけでなく、生活全般にも影響を与える「スマホ認知症」に子どものころから陥らないように、我が子の生活を正していくことが、令和の親の務めといえるのではないでしょうか。
取材・文/梶原知恵
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◆内野 勝行(うちの かつゆき)
脳神経内科医、金町駅前脳神経内科院長
帝京大学医学部医学科卒業後、都内の神経内科外来や千葉県の療養型病院副院長を経て、2015年に金町脳神経内科・耳鼻咽喉科(現・金町駅前脳神経内科)を開設。2025年6月には、オンライン診療による日本初「スマホ認知症」専門外来を開設し、子どもから大人にいたるまで、スマホ依存に悩む人たちの治療にあたっている。日本医師会認定産業医、学校医、厚生労働省認定認知症サポート医などでもある。
【スマホ認知症】の連載は、全2回。
第1回、前回を読む
【関連書籍】

漫画でよめる! NHKスペシャル 人体-神秘の巨大ネットワーク-3 免疫をつかさどる腸&脳と記憶のひみつ!
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価格:定価:本体950円(税別)


梶原 知恵
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。




































内野 勝行
脳神経内科医、金町駅前脳神経内科院長 帝京大学医学部医学科卒業後、都内の神経内科外来や千葉県の療養型病院副院長を経て、2015年に金町脳神経内科・耳鼻咽喉科(現・金町駅前脳神経内科)を開設。2025年6月には、オンライン診療による日本初「スマホ認知症」専門外来を開設し、子どもから大人にいたるまで、スマホ依存に悩む人たちの治療にあたっている。日本医師会認定産業医、学校医、厚生労働省認定認知症サポート医などでもある。 金町駅前脳神経内科
脳神経内科医、金町駅前脳神経内科院長 帝京大学医学部医学科卒業後、都内の神経内科外来や千葉県の療養型病院副院長を経て、2015年に金町脳神経内科・耳鼻咽喉科(現・金町駅前脳神経内科)を開設。2025年6月には、オンライン診療による日本初「スマホ認知症」専門外来を開設し、子どもから大人にいたるまで、スマホ依存に悩む人たちの治療にあたっている。日本医師会認定産業医、学校医、厚生労働省認定認知症サポート医などでもある。 金町駅前脳神経内科