パパママだって甘えてOK! “子育てひろば“は親も一息つける憩いの場だった!

NPO法人せたがや子育てネット代表理事 松田妙子氏に聞く「子育てひろば活用術」#3 ~展望編~

NPO法人せたがや子育てネット代表理事:松田 妙子

ひろば前のはらっぱで。段ボールの大きなおうちをみんなで作って遊びました。  写真提供:NPO法人せたがや子育てネット

必要な場所だと声を上げていくことが大切

人とのコミュニケーションが分断されるコロナ禍を経て、松田さんは改めて今後の課題として、ひろばの必要性をもっと伝える必要があると考えています。

「子どもが減っている現代で、単純に年代別の人口比率だけで考えると子どもにかけられる予算は減っていくばかりです。でも、それでは未来が暗すぎて、この先の世代の人たちが、安心して子育てすることが難しくなってしまいます。

この状況を変えるには、実際に利用した人などが、積極的にひろばの必要性を訴えていくことがとても大切です。やはり、自治体は市民の声があがってこないと、対策に乗り出せないのも事実ですから。だからこそ、当事者である保護者さんの声を自治体に届けるシステム作りも、今後の課題だと感じています」

また、地域格差も大きな課題だと松田さんは続けます。

「ひろばは家からベビーカーで15分以内に行ける場所にあるというのが大事なんです。日常生活の範囲内にあることで、いつでも頼れる場所であることが重要。

でも、実態はそれに追いついていないのが、実情ですね。私が活動している世田谷区は子育て支援に力を入れてくれているので、コロナ禍でも、ひろばを増やしてくれました。

でも全国では人口減少などに伴って、ひろばの継続がかなり厳しい地域も存在しています。私が活動をはじめたこの20年で、かなり法整備が進んだことによって、全国的にも改善はされていますが、すべての地域で平等にというわけにはいかないのがもどかしいところです」

病院や買い物先など、ひろば周辺の子育てに役立つ情報を、みんなで書き込んで便利マップを作成。  写真:関口千鶴

ママパパもお昼寝もできるような安心できる場所に!

最後に松田さんが目指す、今後のひろばの在り方について話してもらいました。

「平日は働いている保護者さんも利用できるような、土日・祝日などの休日にも開放しているひろばが増えていくといいなと思っています。

今は平日のみ開放している施設が多いですが、土日・祝日にもオープンしているところも少しずつ増えているので、もっともっと増やしていきたいです。

私もそうですが、休んでいるつもりでも、家にいるとあれこれといろんなことが気になってしまう。子どもがお昼寝していたら、今がチャンス! とばかりに何かしら動いてしまう。家で休めているようでも、実は全然休めていない……。

そんな日々で、休日にひろばがあいていたら、遊びに来られるじゃないですか。先ほども言いましたが、ひろばは赤ちゃんを中心としているから、時間の流れがとてもゆっくりです。

その時間の中で過ごすと、大人もしぜんにゆったりできる場所。そんなひとときを働いている保護者さんにも提供していきたいと思っています」

松田さんには近い未来に実現させたい目標もあります。

「目下の具体的な目標は、“お昼寝ひろば”をつくることです! 保護者さんと赤ちゃんが一緒にお昼寝できる場所ですね。お昼寝って、本当に安心しないとできないことだから、“ひろば”がそういう場所になれたらいいなと。

最近は、子ども食堂を併設しているひろばも増えていますが、赤ちゃんと保護者さんの生活全般をもっともっとサポートできるような場所になっていくことが目標です。

すべてのアウェイ育児がホーム育児になるように、ひろばの存在をもっと知ってもらい、みんなが安心して子育てができる社会になるように、努力を続けていきたいと思います!」

──◆──◆──

もし、今「子育ては家族の問題だから」「私がもっとやらなくちゃ!」と頑張りすぎて、心が疲れ始めていると感じていたら、一度“ひろば”を訪れてみては、いかがでしょうか。

そこでは、「ひとりぼっちで子育てをさせない!」と力強く言い切る松田さんのように、子どもの健やかな成長を一緒に見守ってくれる“子育ての味方”に出会えるかもしれません。


取材・文/関口千鶴

※1=地域子育て支援拠点事業に関するアンケート調査2015

14 件
まつだ たえこ

松田 妙子

Taeko Matsuda
NPO法人せたがや子育てネット代表理事

NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事。1998年、自身の子育て中に赤ちゃんサロンを開催したのをきっかけに、2004年にNPO法人「せたがや子育てネット」を設立。 以後世田谷区を中心に子育て支援活動を行い、その活動は全国に及び、現在は、子育てひろばの全国組織「NPO法人子育てひろば全国連絡協議会」の理事も務める。せたがや子育てネットが主宰する「ぶりっじ@roka」は、子育てひろばのモデルケースとして全国から多くの視察者が訪れている。 ●NPO法人せたがや子育てネット

NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事。1998年、自身の子育て中に赤ちゃんサロンを開催したのをきっかけに、2004年にNPO法人「せたがや子育てネット」を設立。 以後世田谷区を中心に子育て支援活動を行い、その活動は全国に及び、現在は、子育てひろばの全国組織「NPO法人子育てひろば全国連絡協議会」の理事も務める。せたがや子育てネットが主宰する「ぶりっじ@roka」は、子育てひろばのモデルケースとして全国から多くの視察者が訪れている。 ●NPO法人せたがや子育てネット

せきぐち ちづる

関口 千鶴

Sekiguchi Chizuru
編集者・ライター

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon