赤ちゃんが言葉を話すまで 「子どもの言葉と心」の劇的な変化と発達を専門家が解説
【子どもの言葉の発達】#1 赤ちゃんの中で起こっている言葉の発達について
2024.12.29
坂上先生:赤ちゃんとのコミュニケーションで大事な点は3点です。親子のコミュニケーションで大事になるのは、“表情”や“視線”、そして“触れる”という3点になります。
自分に向けられる笑顔、やさしいまなざし、困った顔など、赤ちゃんは相手の表情をよく見ています。と同時に、なにを見ているのか、どこを見ているのか、自分に向けられる視線も意識しています。ぜひ、だっこしてお互いの感触を確かめながら話しかけてあげてください。
──おもちゃなどで一緒に遊ぶ際は、何に気を付ければいいでしょうか。まだおしゃべりができなくても、どんどん話しかけるべきなのでしょうか?
坂上先生:赤ちゃんとのやりとりでは、相手が「コミュニケーション初心者」であることを覚えておきましょう。キャッチボールでは相手が受けとりやすい速さや軌道でボールを投げないと、ボールのやりとりが続きませんよね。赤ちゃんとのコミュニケーションも同じです。
赤ちゃんは、自分のまねをしてもらうことが大好きです。また、表情を豊かに、声にも抑揚をつけたり、口調を変えたりしながら話しかけると赤ちゃんが注目しやすくなります。言葉の意味がわからなくても、声のトーンや表情から伝わることはたくさんあります。
──具体的にはどのような声かけがいいのでしょうか。
坂上先生:コミュニケーションの主体は、常に赤ちゃんのほうです。赤ちゃんの様子を見て応えるような「笑っているねぇ」「楽しいね」「びっくりしたね」などが良いです。「あー、うー、なのね」と相手の言っていること真似してあげるのもいいでしょう。
反対に「見せて、見せて!」「これでも遊べるよ!」など赤ちゃんの反応を見ず、こちらが言いたいことだけを伝えるのはNG。赤ちゃんの「やりとりしたい」という気持ちが薄れてしまいます。
2ヵ月~1歳ごろ「話す」前段階の発達
──喃語が出てくるようになると、親としては「たくさん話しかけて覚えてもらいたい」「◯ヵ月までには“二語文”出てほしい」など、子どもの“言葉”への欲が高まってくるように思います。「言葉を発する」までにはどのような段階があるのでしょうか。
坂上先生:赤ちゃんは「音を聞き分ける力が先に発達する」と言われています。最初は、母親の胎内で音を聞くところから。おなかの中では羊水に浸かった状態で外界の音を聞いているので、はっきりと聞こえないため、言葉の抑揚やリズムを感じとっている、と言われます。
出生後は、必要な音を聞き分ける段階に。音のリズムを手がかりに、母語とそのほかを区別していきます。徐々に養育者が話す母語から必要な音を聞き分けるようになります。
生後6ヵ月ごろになると、養育者の話す言葉から、音のまとまりとして、単語を聞き分けるようになります。そうして、だんだんと“言葉”を発する段階に近づいてゆきます。
──音を聞き分けるというのは、もうお腹のなかにいる段階から始まっているのですね! こうした段階を経て、“話す”に繫がると思うのですが、次の段階はどうなるのでしょうか。
坂上先生:音をわかっていても、話すまでには時間がかかります。
大人でも外国語を学ぶときは耳で音を聞いて、どんなふうに発音するのかわからないと、話せるようにはなりませんよね? それと同じように養育者が話している言葉を聞いて、言葉を構成する音を聞き分ける能力を発達させていきます。周囲のいろいろな言葉を聞きながら、自然と母語に含まれる音を覚えていくのです。
それに言葉は「音を覚える」後に「理解」が先に来ます。「話す」のはその後です。