子育て無料サポート 「近所のおばちゃん的」な支援がママたちを救った理由

家庭訪問型子育て支援「ホームスタート・ジャパン」#3〜コロナ禍が与えた子育て家庭への影響〜

ライター:稲葉 美映子

既存の子育て支援の隙間を埋める

ホームスタートは基本的には「就学前の子どもがいる家庭」が対象ですが、一部地域では一人目の妊娠期からも利用することができます。

頼れる人が近くにいない、出産準備を手伝ってほしい、産む前から保活(子どもを保育園に入れるため保護者が行う活動)は必要? など初めての出産・妊娠で不安な気持ちを抱える妊婦さんをサポートしています。

また、「小学校低学年くらいまでの子どもがいる家庭も利用できるよう準備中です」と、ホームスタート・ジャパン理事・事務局長の山田幸恵(やまだ・ゆきえ)さん。

「世間ではオンラインで繋がることも増えましたが、ホームスタートでは『対面すること』を大事にこれからも活動していきたいです。

それは、実際に会って、子どもを抱っこして、話をするということ。子育てが大変なときに助けてもらった経験から、ホームビジターになった方が多いように、誰かに寄り添ってもらった経験はまたかたちを変えて次につながっていくと思います」(森田さん)

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各自治体では、有料のファミリーサポートや、乳児のいる家庭への全戸訪問など数々の子育て支援事業が展開されていますが、一度きりの訪問だったり、経済的な理由などから支援が受けられない家庭もまだまだ多くあるのが現状です。

そんな〝隙間〟に手を差し伸べ、ママパパの気持ちに寄り添いながら活動を続けるのがホームスタート。地域のつながりが希薄な今こそ、こうした活動が広がっていくことで〝子育てが楽しいと感じる時間〟がさらに増えていくことを願います。

●子育てアドバイザー・高祖常子さんから

コロナ禍による新しい生活様式は、「子育て」と、もっとも相性が悪いのではと思います。子どもが発達するうえで、人の表情を見たり、言葉をいっぱいかけてもらう体験は重要ですが、マスクで表情は読み取りづらく、他者とは距離をとる傾向にあるからです。

また、「今日はあそこに行きたいね」「今日は天気がいいからピクニックをしよう」などと子育てには自由度が必要。しかし外出自粛が求められ、地域の子育てひろばは休館になるなど制限のある生活が続きました。今なお、予約制や人数制限のある施設も多いです。

一人で一人の子どもを見ることは、疲れて当たり前です。「一人の子育てしんどいな」と思ったら、地域に顔見知りを増やすようにしていきましょう。

お友達家族といっしょに遊べば、他の子と遊ぶことで子ども同士刺激し合えるし、大人の目が増えて親も楽になれます。「ここの小児科が良かったよ」などと、地域の情報も交換できたりしますからね。

ホームスタートなどの子育て支援もどんどん使ってください。利用するときに迷うのは、「そんなことやってるんですか!?」と言われないか、自分の子育てを否定されないかというところだと思うんです。

ホームスタートでは、研修を受け、支援者の役割について学んでいるホームビジターがサポートしてくれるので、守秘義務なども含めて安心です。ザックバランに喋ってみれば「スッキリした」「ちょっとホッとした」と、少し気持ちに変化が生まれるでしょう。あまり構えずに、利用してみるといいのではないでしょうか。

高祖常子PROFILE
子育てアドバイザー・キャリアコンサルタント。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。国や行政の子どもに関連する委員を歴任し、子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行う。第9回渡邉辰五郎奨励賞受賞。

取材協力/
・ホームスタート
乳幼児がいる家庭に、研修を受けた地域の子育て経験者が、定期的に無償で訪問し、傾聴(親の気持ちを受け止めて話を聴くこと)と、協働(親と一緒に家事や育児、外出などをすること)をする家庭訪問型子育て支援ボランティアのしくみ。イギリスで1973年に始まり、世界22ヵ国、日本でも31都道府県117地域にひろがっている。

関連サイト/
ホームスタートオフィシャルHP

【脚注】
※1=新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査

取材・文/稲葉美映子

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こうそ ときこ

高祖 常子

子育てアドバイザー・キャリアコンサルタント

リクルートで学校・企業情報誌の編集にたずさわったのち、2005年に育児情報誌miku編集長に就任し14年間活躍。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。 認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事を務める。「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省2019年度)でガイドライン策定委員ほか、国や行政の委員を歴任。子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。 保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級など子育てに関連する資格を多数取得。 東京家政大学短期大学部保育科卒、第9回渡邉辰五郎奨励賞受賞。 著書は『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)ほか。 3児の母。 ●高卒常子オフィシャルサイト ●Twitter @tokikok  

リクルートで学校・企業情報誌の編集にたずさわったのち、2005年に育児情報誌miku編集長に就任し14年間活躍。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。 認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事を務める。「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省2019年度)でガイドライン策定委員ほか、国や行政の委員を歴任。子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。 保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級など子育てに関連する資格を多数取得。 東京家政大学短期大学部保育科卒、第9回渡邉辰五郎奨励賞受賞。 著書は『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)ほか。 3児の母。 ●高卒常子オフィシャルサイト ●Twitter @tokikok  

いなば みおこ

稲葉 美映子

ライター

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。