子育て無料サポート 「近所のおばちゃん的」な支援がママたちを救った理由

家庭訪問型子育て支援「ホームスタート・ジャパン」#3〜コロナ禍が与えた子育て家庭への影響〜

ライター:稲葉 美映子

1973年にイギリスで生まれたホームスタート。地域の支え合いで子育ての孤立を解消するために活動している。  写真提供:ホームスタート・ジャパン
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研修を受けた地域のボランティア「ホームビジター」が家庭を訪問し、ママパパの「ちょっとしんどいな」「話を聞いてほしい」に対して、一緒に取り組んでいく家庭訪問型の子育て支援「ホームスタート」。就学前の子どもがいる家庭なら、誰でも無料で利用することができます。

今回は、子育て世代にも大きな影響を及ぼしたコロナ禍をテーマに伺います。外出自粛など周囲とのコミュニケーションが減ってしまうことで、ママパパにはどのような変化が起き、どのようなサポートが必要とされているのでしょうか。

引き続き、ホームスタート・ジャパン理事・事務局長の山田幸恵(やまだ・ゆきえ)さん、ホームスタート・ジャパン代表理事で「埼玉県和光市「ホームスタート・わこう」の森田圭子(もりた・けいこ)さん、東京都江東区「ホームスタート・こうとう」の磯野未夏(いその・みか)さんにお話を伺いました。

※全3回の3回目(#1#2を読む)

(右上から時計回りに)山田幸恵さん、磯野未夏さん、森田圭子さん。  Zoom取材にて

コロナ禍で親同士が気軽に話せる場が減った

コロナ禍の影響で、マスクの着用に始まり、ライフスタイルや働き方など、人々の生活には多くの変化がもたらされました。

厚生労働省が2020年9月に調査した「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」(※1)によると、回答者の半数ほどの人が、何らかの不安を感じているということが分かります。

とくに小さな子どものいる家庭は、ただでさえ大変なことが多いなか、コロナ禍による外出自粛、子どもへの感染の不安等がプラスされ、今まで以上に子育てへの負担が増している家庭も多いのではないでしょうか。

子育て支援のNPO法人「わこう子育てネットワーク」で、ホームビジターの調整役を担うオーガナイザー森田圭子(もりた・けいこ)さんもママパパの大変さを感じたと言います。

「コロナ禍が始まった頃はとくに、公園ではママたちがソーシャルディスタンスをとりながら離れた場所に立っているし、マスクをしているからお互い顔もなかなか覚えられない。

以前なら子どもたちの接触をきっかけに、ママ同士での会話が生まれていたけど、今は逆で『すみません』と遠ざけたりね。

地域の子育て支援施設も休館し、ママパパ同士で気軽に悩みを打ち明けたり、お話できる場が減ってしまいました。でも『みんなそうだから仕方ない』と、我慢している人がとても多かった印象です。

日中は子どもと二人きりで過ごすことで孤立が深まってしまい『人と話すのが少し怖くなった』と連絡をくれたママには、おしゃべりが上手なホームビジターに訪問してもらいました。終了後、『おしゃべりって楽しいんだって思い出しました!』と言ってもらえたことがうれしかったですね」(森田さん)

いろいろな人に可愛がられて育つのが幸せ

コロナ禍により、「密を避ける」「他者との身体的距離をとる」という生活様式が推奨されたことで、ママパパ以外に抱っこされたことがないという赤ちゃんも増えていると、非営利団体「こうとう親子センター」のオーガナイザー・磯野未夏(いその・みか)さんは続けます。

「赤ちゃん側も抱っこされ慣れていないからか嫌がってしまい、私たちもうまく抱っこできなかったりね。親以外のいろいろな人と関わることは子どもの成長にとってとても大切なことだけに、それができない生活は心配です。

ホームビジターが『かわいいわねぇ』『こんなこともできるの』なんてお話しながら、『遊んでもらっている子どもの姿を見られてとても幸せだった』と言ってくれたママもいました。自分の子どもを客観的に見る瞬間も、ママパパには必要だと感じています。

たくさんの人にかわいいかわいいと言われて育つことが子どもにとっては必要で幸せ。ホームビジターは同じ生活圏で暮らす〝近所のおばちゃん〟でもあります。街で会ったら「大きくなったね!」などと声をかけてくれる人がいるということがママたちの孤立感をやわらげるし、そういった交流がある地域ってやっぱりいいですよね」(磯野さん)

ママと子どもたちといっしょに散歩をするホームビジター。  写真提供:ホームスタート・ジャパン

住んでいる街に、自分を、子どもを気にかけてくれている人がいる。悩みがある場合はもちろん、他愛のない話でも気軽に話せる人がいるということは、地域に自分の居場所があるんだという安心感にもつながっていくことでしょう。

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