日本初の「サカナ特化型」書店だから知っている「水族館」の4大トリビアとは 

サカナに特化した本屋「SAKANA BOOKS」が教える水族館のヒミツ#1 トリビア編

ライター:星野 早百合

●水族館トリビア3『水族館のサカナは飼育員が採集!?』

「そういえば、水族館のサカナは一体どこから来るの?」と、疑問に思ったことはないでしょうか? 

水族館のサカナは、①業者から購入する ②ほかの水族館と交換する ③繁殖させる といったパターンのほか、水族館の飼育員やスタッフがみずから海や川へ出向き、採集していることもあるといいます。

船津さん 最近はエンターテインメントに寄った都市型水族館が増えていますが、研究機能を持った水族館も多く、サカナを手配する方法はさまざまです。

大久保さん 「幼魚水族館」(静岡県・清水町)の館長で“岸壁幼魚採集家”の鈴木香里武さんは、幼魚は手に入りにくいため、自身で採集した幼魚を展示することもあります。「海遊館」の松村将太さんは、北極圏にまで極地採集に行かれたと聞きました。

タモ網を使ったり、釣りをしたり、海に潜ったり、漁船に乗せてもらい網漁で採ったり……。飼育員やスタッフの方の努力によって採集されたと思うと、水槽のサカナたちの見え方も変わってくるのではないでしょうか。

コロナ禍の影響を受けた水族館を応援するため、全国の水族館や関連施設のパンフレットを集めたコーナー。水族館1館1館に電話をかけて依頼し、送ってもらったのだといいます。  撮影:星野早百合

●水族館トリビア4『ジンベエザメの水槽はギネス認定! 日本の企業が誇る技術力』

2002年にオープンした「沖縄美ら海水族館」(沖縄・本部町)の人気者といえば、世界最大の魚類・ジンベエザメ。ジンベエザメが展示されている巨大水槽〈黒潮の海〉を制作したのは、香川県のアクリル水槽メーカー「日プラ」です。

1994年、当時小さな町工場だった「日プラ」が、アメリカ・カリフォルニア州にある世界最大規模の水族館「モントレーベイ水族館」から依頼を受けて、3つの巨大水槽を制作。その高い技術力が評価され、世界中の水族館から知られる存在となりました。

大久保さん 巨大な水槽を作るには、その水圧に耐えられるように、非常に高度なアクリル加工技術が必要になります。「日プラ」社長・敷山靖洋さんのお話では、「沖縄美ら海水族館」の初期の計画だと、〈黒潮の海〉の正面パネルに何本も柱が入る予定でした。

でも、柱があっては、せっかくのジンベエザメが見づらくなってしまう。そこで敷山さんは、柱をすべて取っ払うことを提案。7枚の巨大なアクリル板を水族館の中で繫ぎ合わせ、見事、ジンベエザメが一望できる巨大水槽を完成させたのだそうです。

この水槽はギネス記録にも認定され、「日プラ」はその後も「ドバイモール」、「チャイムロング横琴海洋王国」の水槽でギネス記録を更新しています。

「SAKANA BOOKS」の隣、「釣り文化資料館」には、和竿や魚籠といった伝統的な釣り具、釣りにまつわる貴重な書籍などが展示されています。  撮影:星野早百合

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世界有数の水族館大国・日本。バラエティに富んだ水族館があちこちにありますが、館内に流れるBGMに耳を傾けたり、サカナたちがどこからやってきたのかと思いを馳せたりすると、水族館はもっと奥深く楽しめるスポットになりそうですね。

第2回も引き続き「SAKANA BOOKS」に、水族館の楽しみ方と子どもにおすすめの魚の本を教えていただきます。

取材・文/星野早百合

水族館で働く人から、生きものの採集や建築設計、音楽などで水族館をつくる人、水族館をテーマに創作活動を行う人まで。水族館に携わる15人の“水族館人”に、さまざまな角度から話を聞いた『水族館人 今まで見てきた景色が変わる15のストーリー』(SAKANA BOOKS/文化工房)。水族館ファンを中心としながら幅広い層に好評を博し、今夏(2023年)の重版が決定! 水族館の魅力にあふれた一冊です。

●SAKANA BOOKS(サカナブックス)

クラウドファンディングで資金を募り、2022年7月にオープンしたサカナ特化型の小さな本屋。サカナをはじめとした水生生物、それらが住む自然環境に関する書籍や図鑑から、サカナが登場する絵本や児童書、文芸、レシピ本、ZINEまで、ジャンルレスに1200冊以上ラインナップ。雑貨や水産加工品の販売も。

【DATA】
東京都新宿区愛住町18‐7(株式会社週刊つりニュース1階)
営業時間/12:00~17:30
定休日/木曜・金曜(その他、臨時休業あり)

【URL】
SAKANA BOOKS(サカナブックス)

「SAKANA BOOKS」の入り口(右)と店内(左)  撮影:星野早百合
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ほしの さゆり

星野 早百合

ライター

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。