毎日、手を焼く我が子のお世話。朝から晩までエンドレスに続く家事育児などの大労働。パパ・ママは休む間がありません。
そこでよぎるのが、パートナーだけでなく、子どもも家事を手伝ってくれたら……という淡い期待。はたして、小さな子どもの頃から家事を手伝ってもらうことは現実的なのでしょうか?
家族間の家事シェアを提唱する家事研究家の佐光紀子さんにお話を伺いました。
「ママがラクになる目的」で家事を教えるのは逆効果
まず大前提として、子どもに家事をしてもらいたいのはなぜでしょうか。自分がラクになりたいから? 子どもが将来、困らないために?
多くの方は、その両方の思いを持っているはず。ただ、「自分の負担を減らしたい」という期待はいったん忘れましょう。子ども、特に幼児が家事を手伝うということは、すなわちパパやママの負担軽減にはつながりません。むしろ、「ラクになる」と期待すると、思い通りにならないことに腹が立ちます。基本的には、「長い目で見て、子どもの生きる力を育てていこう」というスタンスで家事を教えていく方が、精神衛生上いいと思っています。
というのは、子どもは、親を喜ばせることには興味があっても、親がラクになることには興味がないから。この2つは似ているようで違うのです。
たとえば、親としては、一年に一回か二回、スペシャルな「肩たたき券」をもらうより、毎日子どもが床に脱ぎ散らかした靴下を片付けてくれる方がよほどありがたいし、助かりますよね。ですが、彼らはそんなことはおかまいなく、「自分がママにジュースを運んだり肩たたき券をあげたりすることで、ママが喜んでいる」という実感を得たい。スーパーヒーローになりたいのです。
長男、次男、長女の3人の子を育ててきた私が学んだことは、「子どもたちにこれをやってもらうと、私がラクになる」と思って仕向けると、彼らは大体それを察して、意に反することをします。子どもはそういう生き物なのです。
子どもが幼いうちは目の前で家事をするだけでいい
では、どのように教えていくといいでしょうか。私は、幼少期の子どもに対しては、師匠が弟子に技術を「仕込む」ように教えるのではなく、日常生活の中で親がやっていることを見せて行けばいいと思っています。
子どもは「こうよ!」と教え込んでも全然真剣に聞きませんが、親がいつもやっていることは、意外とよく見ています。ふと子どもの方を振り向くと、子どもはじーっとこちらを見ていたということ、ありませんか? 子どもは遊びに夢中な時でもチラチラ親を見ているんですよ。
そこで重要なのは、子どもがいない時に家事を済ませるのではなく、子どもの目の前であえて行うこと。そうすることで子どもの視界に親の姿が入り、家事のやり方が記憶されていきます。
たとえば、食前食後にテーブルを拭く家に育つと、そういうものだという刷り込みができます。普段はすり込まれていることに気づかないのですが、旅行先などいつもと違う所に行くとそれが出てきます。わが家では、食事の前後にテーブルにスプレーを吹きかけてから乾いたタオルでテーブルを拭くようにしていました。
そんなある日、旅行先のテラスで、「ご飯よ」と言ったら、子どもたちは「シュッシュッするものがないからテーブルが拭けない」と困っていたことも(笑)。タオルを濡らしてふいているのを見たことがなかったので、いつものスプレーがないとどうしたらいいのかわからないようでした。やはり子どもたるもの、親に指示されたことより、目の脇で見ていることを覚えているんだなと再確認した出来事でした。
幼い子どもたちに見せる家事は、普段やっていることなら何でもかまいません。いくつかパターンを紹介しましょう。