英語が話せるだけは意味がない バイリンガル教育のプロが教える「親が本当にやるべきこと」

グローバル人材って結局どんな人? 世界に通用する子どもの育て方 #1

バイリンガルスクールTLC for Kids代表:船津 徹

米国はテストの点数よりも〈人間力〉が重要!

「米国の教育とアジア圏の教育を比較表現するならば、米国は人間力主義、日本を含むアジア圏は学力主義といえるでしょう。

人間力とは、言い換えれば『総合力』です。そのため、米国ではテストの点数、つまり学力はひとつの物差しでしかありません。

学力以外に、コミュニケーションスキルや問題解決力、クリティカルシンキング力(批判的思考力)、分析力なども重要で、全体的な能力で評価します。

米国の大学入試がAO入試で、点数だけで合否判定をしないというのもその表れでしょう」(船津先生)

学力は人間の一部の能力だと考え、むしろそれ以外の能力や、他人とは少しでも異なった部分(一芸)を引き上げようという考え方が欧米には浸透しています。

個が持つ特性を尊重する傾向は、まさに「個人主義」です。そして、アジア人全般がグローバル社会を前にショックを受けるのも「個人主義」の部分です。

欧米では、テストの点数はひとつの物差しでしかありません。自分を表現できたり、独自の発想を持っていたりする「人間力(総合力)」のほうが問われます。 写真:アフロ

自分はなにが好きで、なにが得意か……自分の価値をまずは知ることからスタートを!

日本をはじめ、学力主義の国では、学校では黙って座って勉強をすることがいい生徒だとする向きがあります。しかし、欧米では発言する生徒が評価されます。

「欧米諸国の学校では、先生に意見などを求められたら個人の見解を発言することで評価を受けます。

ここで『◯◯さんと同じ意見です』『特に感じたことはありません』なんて答えたら、教師から『ちゃんと頭を使っていますか?』といわれるに違いありません。

グローバル社会では、自分が何者で、どんな意思や意見を持ち、それを表現できるかということが問われます。

ですから自分は日本人で、どんな土地で育ち、両親や祖父母がどんなルーツを持っているか他人に説明できるくらい嚙み砕いてみることも重要ですし、自分はなにが好きでなにが得意あるいは苦手かなど、自分の価値を知ることも必要です」(船津先生)

国内であろうと、海外であろうと社会に出るとさまざまな背景を持った人たちと接します。

子どもが成人したころの国際化した社会では、その傾向は今よりもずっと強くなり、自分がどういう人物であるかという芯の部分=アイデンティティーは重要性を増します

グローバルの社会ではアイデンティティーがものをいう

「アイデンティティーというと難しく捉える方もいますが、身構えることはありません。

例えば出身地の環境に特色があってそれが自分の性質に影響しているなら……、私は青森県の出身で、寒い時期になると長い期間、雪に囲まれて生活していたので我慢強い人なんですと、地域性を含めて掘り下げられればいいのです。

ハワイ現地の学校では地元のことを子どもたちに丁寧に教えます。アロハスピリットなんて表現することもありますが、その土台となる民族や文化のことなど、地域のことをたくさん伝えて、なぜそんな気質が生まれてきたのか、自分たちのルーツを学んでいます。

日本には侘び寂びという美意識がありますが、この意識の土台にはなにがあるのかというように、民族や文化、地域性などに敏感になってみるといいでしょう。

実はそれが、子どもがグローバル社会の一員になったときに生きてきます」(船津先生)

日本とは違う社会に出てカルチャーショックを受けた子どもには、船津先生はアイデンティティーの確立からサポートします。

自分がどんな芯を持った人物なのか、単に日本人であるということにとどまらず、「自分はこんな人間です」とひと言で説明できるくらいに、自分の価値を理解していることが国際社会を乗り越える力となるからです。


次回は、環境や時代の変化に負けないたくましい資質を持った子どもを育てるために、今の子育てで見直したいことを紹介していきます。

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船津 徹(ふなつ とおる)
バイリンガルスクールTLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威である故・七田眞氏に師事する。その後独立して、米ハワイ州に移住。2001年ホノルルにTLC for Kidsを設立し、英語力、コミュニケーション力、論理力など、世界で活躍できるグローバル人材を育てるための独自の教育プログラムを持って指導にあたる。2020年までに5000名以上の子どもの教育に携わり、卒業生の多くが世界の難関大学に進学し、各国で活躍している。

【主な共著や監修書】
「世界標準の子育て」(ダイヤモンド社)
「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)
「失敗に負けない『強い心』が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方」(KADOKAWA) など


取材・文/梶原知恵

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ふなつ とおる

船津 徹

バイリンガルスクールTLC for Kids代表

明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威である故・七田眞氏に師事する。その後独立して、米ハワイ州に移住。2001年ホノルルにTLC for Kidsを設立し、英語力、コミュニケーション力、論理力など、世界で活躍できるグローバル人材を育てるための独自の教育プログラムを持って指導にあたる。2020年までに5000名以上の子どもの教育に携わり、卒業生の多くが世界の難関大学に進学し、各国で活躍している。 https://torufun.amebaownd.com/ 【主な共著や監修書】 「世界標準の子育て」(ダイヤモンド社) 「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房) 「失敗に負けない『強い心』が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方」(KADOKAWA) など

明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威である故・七田眞氏に師事する。その後独立して、米ハワイ州に移住。2001年ホノルルにTLC for Kidsを設立し、英語力、コミュニケーション力、論理力など、世界で活躍できるグローバル人材を育てるための独自の教育プログラムを持って指導にあたる。2020年までに5000名以上の子どもの教育に携わり、卒業生の多くが世界の難関大学に進学し、各国で活躍している。 https://torufun.amebaownd.com/ 【主な共著や監修書】 「世界標準の子育て」(ダイヤモンド社) 「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房) 「失敗に負けない『強い心』が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方」(KADOKAWA) など

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。