英語が話せるだけは意味がない バイリンガル教育のプロが教える「親が本当にやるべきこと」

グローバル人材って結局どんな人? 世界に通用する子どもの育て方 #1

バイリンガルスクールTLC for Kids代表:船津 徹

子育てをしている誰もが、我が子が将来、世界で活躍できることを願っています。 写真:アフロ

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グローバル化が進んでいる現代社会において、世界で活躍できる能力を持ち、新しい価値を生み出せる人材は重要です。

今の子どもたちが大人になるころには企業の雇用をはじめ、子どもたちを取り巻くあらゆる場面がより国際化することが予想されます。

そのため、幼いときから英語などの勉強に力を入れている親御さんは多いでしょう。しかし、本当のグローバル人材とは英語力だけではありません。

ハワイのバイリンガルスクールで代表を務め、自身も教鞭をとっている船津徹先生に、国際化する世の中に必要な力について伺いました(全4回の1回目)。

◆船津 徹(ふなつ とおる)
バイリンガルスクールTLC for Kids代表。幼児教育の権威である故・七田眞氏に師事。2001年ハワイ・ホノルルにTLC for Kidsを設立し、英語力、コミュニケーション力、論理力など、世界で活躍できるグローバル人材を育てるための独自の教育プログラムを持って指導にあたっている。2020年までに5000名以上の子どもの教育に携わり、卒業生の多くが世界の難関大学に進学し、各国で活躍している。​

日本の子育てや教育は、世界から見たらどのくらいグローバルなの?

「グローバル性」や「グローバル教育」の重要性が叫ばれてはいるものの、実際はその言葉だけが先行して、一体なにをグローバルにすべきなのかわからないという親御さんは多いものです。

ハワイで日本人以外にも多くの人種を学校に受け入れ、世界で活躍できる人材の教育にあたっている船津先生は、日本に暮らし、日本の教育を受けている子どもを持つ親御さんに向けて次のように話します。

「私の学校には、日本人以外にも韓国人や中国人、インド人、ベトナム人など、アジア諸国出身の子どもたちがたくさん通ってきています。

ハワイという地で、さまざまな人種の子どもやその親と教育を通してかかわる中で、私が日本の子育てや教育に感じたことは、日本は集団の中での存在を特に大切にしていることです。

それを逆から表現すると〈出る杭は打たれる〉となるわけですが、グローバルの中心である欧米ではそういった子どもこそ宝だという感覚があります。

欧米は個人主義がベースにあるので、例えばスポーツや芸術などにその子が素質を持っているなら、勉強よりもそちらを特に伸ばしてあげよう、得意分野で突き抜けさせてあげようという方向性が強いのです」(船津先生)

個人主義というのは、決して自分勝手に行動することではありません。個が持つ特質それぞれを大切にし、尊重することです。

グローバル社会では「人と違うこと」に価値があるというのが基本的な考えであり、日本人や日本の社会ではまだまだこの感覚が足りないと船津先生はいいます。

中国や韓国の教育とグローバル化の波

グローバル化の波はなにも日本だけに押し寄せているわけではありません。お隣の韓国はいち早くグローバル化に巻き込まれた国といえるでしょう。

2000年代に入り、サムスン電子や現代自動車など、財閥系企業が短期間で世界企業へと躍進しました。

日本に近い国々の、グローバル化に対する子育てや教育はどのようなものなのでしょうか。

韓国 ── 世界でもトップレベルの教育熱心な国

そもそも韓国は儒教の影響が強く残っており、学力至上主義の国です。

勉強ができることが子育ての優先順位として高く位置づけられており、我が子の特性を伸ばし、多様性を認めていきましょうという世界的動きがあっても、それでも学力が大切だという考えが根強く流れています。

日本では子どもの教育のために海外移住をする方は少ないのですが、韓国では借金をしてでも小学校時代に英語圏に移住し、早いうちに英語に慣れさせようという親がいるほどです。

学力主義の先にあるものは、韓国国内の一流大学進学と活躍ではなく世界の一流です。しかし、その裏では世界の舞台で挫折して再び立ち上がれない人も多くいます。

レベルの高い教育も大切ですが、グローバル=学力と単純にいえるものではありません。国際化する社会においては、さまざまな背景を持った人と渡り歩ける強い個を確立することが必要です。

中国 ── 子どもへの投資熱が高い国

中国も韓国同様、儒教圏であり教育に熱心な国です。特に富裕層の目指すところは世界です。

コロナと政治的な影響があって、近年は米国への留学熱にややかげりが見えていた時期もありましたが、近い将来、再熱するでしょう。

基本的に学歴、学力主義のため、教育には非常に熱心で英語も早期教育が注目されています。

優秀なネイティブ英語講師が集まる上海の私立小学校では、100人の生徒募集に対して、5000人が殺到したこともありました。

所得格差が大きい中国では一生懸命勉強していい成績を取り、いい学校に入って、いい仕事に就くのがベストだと考えられています。

世の中がどう変わっても、子どもが身につけた学力は財産にはなりますが、学業負担が重すぎる傾向があり、社会に出る前に精神的ストレスを抱えたり、燃え尽き症候群に陥る子どももいます。

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