電波の波には垂直方向と水平方向がある
電波には縦(垂直)方向に上下する波と横(水平)方向に往復する波があります。
別々の送信設備から送られる電波が影響し合いそうな地域では、混信を避けるために垂直方向と水平方向を使い分けています。
そして垂直方向の波で電波が送信されている地域では、アンテナのトゲ(素子)も垂直に立っていますし、水平方法の地域では素子も横になっています。
UHF電波をキャッチする地デジアンテナは、正しく電波を送信している方角を向いていないときれいに受信できません。
電波は空中を飛んでいる目に見えない波ですが、アンテナの向きやかたちからどんな電波が飛んでいるかをうかがい知ることはできます。
アンテナの向きから電波の飛んでくる方角がわかりますし、アンテナの素子の並びが縦か横かで垂直方向の電波か水平方向の電波かがわかります。
ですから、屋根の上のアンテナの向きや素子が横か縦かで、その地域の電波がどこからどんなかたちで飛んでいるか想像できますね。
新幹線の顔の変化は、単なるモデルチェンジと思ったら大間違い!
東海道新幹線の開業は1964年、第1回東京オリンピックが開催された年です。60年前の新幹線は「夢の超特急」といわれました。
そして当時の新幹線は、コアラを連想させる丸みのある顔をしていました。
コアラ似の丸い顔は、時代がすすむとだんだんと細長い顔へと変化していきました。
いまからちょっと前の新幹線の顔は、カモノハシのような長いくちばしを思わせるかたちをしていました。
こうした変化を単なるデザイン上のモデルチェンジと軽く見てはいけません。新幹線の顔が細長くのびていることには、ちゃんとした理由があります。
速度を上げるために空気抵抗を減らしているのだろうと思った人、惜しいですね。それより大きな理由はトンネルの騒音対策です。
「トンネルドン」とか、新幹線のトンネルから出る騒音のことを聞いたことがありませんか。
列車がものすごいスピードでトンネルに入ると、空気が急激に圧縮されます。空気圧はトンネルの中を伝わって出口で大音響を発生させます。
空気圧は音の速さで伝わる
トンネルから出る騒音は、原理的には空気鉄砲のようなものですが、新幹線のような時速300キロメートルの巨大な列車の空気圧となると、とても大きな音になります。
新幹線の顔がだんだん細長くなりカモノハシ似となったのは、このトンネルの騒音を抑えるためで、単なるモデルチェンジではないのです。
空気圧の伝わる速さは音の伝わる速さと同じなので、超高速の列車がトンネルに入り空気が急激に圧縮されると、500メートルくらいの長さのトンネルでは、ほぼ列車がトンネルに飛び込んだタイミングで、トンネル出口で大音響が発生することになります。
空気をゆっくり圧縮させると大きな音が出ない
日本は山国ですから、新幹線はどうしてもたくさんのトンネルを通過しなくてはなりません。ですから新幹線のスピードが上がれば上がるほど、騒音対策は重要な問題となりました。
トンネルから大きな音が出るのは空気を急激に圧縮するからで、空気をゆっくり圧縮すればトンネル出口の大音響を抑えることができます。
それで新幹線の顔は空気をゆっくり圧縮するために、丸いコアラ顔から細長いくちばしのカモノハシ顔へ変わっていったのです。
列車の顔が平らだとトンネルの空気は、列車の速さで急速に圧縮されます。
そこで新幹線は顔を前方へ細長く延ばしたり、顔に長いくちばしのあるかたちにしたりと改良し、空気をゆっくり圧縮するようにしています。
平らな顔の列車もカモノハシ顔の新幹線も、圧縮する空気の量は同じですけど、カモノハシ顔は空気をゆっくり圧縮するのです。