お家の屋根に立っているアンテナはなんだかトゲトゲしていますね。ジュースやコーラのペットボトルは底がへこんでいることに気づいていますか。新幹線の顔は前のほうに細長くのびているように思いませんか。
どうしてあんなかたちをしているのか、お父さん、お母さんにきいてみましょう。でもお父さん、お母さんもよくわからなければ、いっしょにこの記事を読んでみるといいですよ。
物のかたちには理由があります。身近な物のかたちの科学的な理由を『物のかたち図鑑』から「テレビマガジン」編集部が紹介します。
テレビ放送は地上デジタル波という電波が飛んでいると思っていませんか?
テレビは2011年7月(東北三県は次の年の4月)に、すべての放送がアナログからデジタルへかわりました。
地上デジタル放送にきりかわることで、おうちのテレビも地デジ対応型にかわり新しいテレビがたくさん売れました。
「地デジ」とは地上デジタル放送の略称です。地上デジタル放送というと、なんだか地上デジタル波という電波が飛んでいるような気がしますけど、そうではありません。
テレビ放送が完全にデジタル化されたとき、電波の周波数帯もアナログテレビ時代のVHFからUHFに変わりました。
地上デジの電波はUHFで送信されています。地デジのアンテナがトゲトゲしているのは、UHFの電波を受信するためです。それであんなかたちをしています。
UHF、VHFとはなんでしょう
UHF、VHFというのは電波の周波数帯のわけかたで、1秒間の波の数で区別されています。UHF電波の波の数は、毎秒3億から30億個(300メガヘルツ~3ギガヘルツ)で、VHF電波では毎秒3000万から3億個(30メガヘルツ~300メガヘルツ)の波となります。
電波の波の長さ(波長)はUHFで10センチメートルから1メートルで、VHFで1メートルから10メートルです。
UHF電波はVHFより周波数が高く、波長の短い電波ということになります。このへんに地デジアンテナがトゲトゲしている秘密がありそうですね。
VHFアンテナからUHFアンテナへ
アナログ放送時代のテレビの電波は主にVHFでしたから、アンテナもVHF電波をキャッチしやすいかたちでした。
VHFアンテナはいまでもたくさんの家の屋根で、地デジアンテナのそばに立っていますから、目にしたことがあるはずです。
アナログ放送のVHFアンテナは地デジ放送のUHFアンテナに比べてトゲが長く、トゲというより横棒です。本数もやや少なく大ぶりでシンプルなかたちをしています。 そのほうがVHF電波には向いていたからです。
VHF(アナログ)アンテナとUHF(地デジ)アンテナのちがいは、VHF電波とUHF電波のかたちのちがいによるものです。
アナログ放送のVHFアンテナの大ぶりなかたちは、VHF電波をキャッチしやすいかたち、地デジ放送のUHFアンテナの短いトゲトゲはUHF電波をキャッチしやすいかたちということです。
アンテナが電波をキャッチする仕組み
そもそもアンテナのトゲの役割は何でしょう。アンテナのトゲのことは「素子」といいます。
地デジアンテナにたくさん並んでいる短めの素子は、電波を引き寄せる働きをしています。そして後ろのほうにある長めの素子で電波をキャッチします。
さらにその後ろにある、「くの字」型の素子はとり逃がした電波を長めの素子に向かって反射させています。この仕組みは地デジもアナログも同じです。
高い周波数で波長の短い電波をとらえるUHFアンテナでは、素子は短くて数が多く、UHFに比べて周波数が低く波長の長いVHFでは、アンテナの素子が長くて数が少なくなっています。
VHF電波より周波数が高く波長の短いUHF電波をキャッチするには、アナログ(VHF)アンテナよりも素子が短くたくさん付いている地デジ(UHF)アンテナのほうが適しているということですね。