アリ探求家・島田拓 子どもを夢中にさせるあまりにユニークな仕事の中身とは?

「公園が100倍楽しくなる“アリ道”入門」#1〜「アリ探求家」の仕事編〜

保育園の行き帰りは公園でアリ探し

子どもの頃から生き物が好きだった島田さんが生まれ育ったのは、東京都目黒区。「近所に生き物はたくさんいなかった」と言いますが、虫と遊んだ記憶をよく覚えています。

「幼稚園くらいの頃に、みかんの葉についていたアゲハチョウの幼虫を家に持ち帰って育てたことがあります。サナギから蝶になる過程を目にして、アリのときと同様に感動しました。

母は虫好きというわけではありませんが、嫌いでもなくて。僕が公園に行くたびにずっと虫を探していたので、昆虫図鑑を買ってくれたり、虫を一緒に育てたりしてくれました。父は、車で山や田んぼに連れて行ってくれました。

朝4時に家を出てカブトムシを取ったり、田んぼでカエルを探したり、いろいろな生き物を探しましたね」

島田さんは、現在、3人の息子さんの父親でもあります。保育園の送迎時には公園に寄るなど、島田さん親子にとって、公園はとても身近な場所です。そして、息子さんたちもお父さんと同様に虫好きに。

「小学4年生の長男は、2歳くらいの頃からダンゴムシを探していました。今は、アリが一番好きらしく、一人で公園に行ってアリを捕まえてきてくれます。

1年生の次男は、カブトムシやクワガタに夢中です。先日も一緒に山に行って、ライトトラップ()を仕掛けてクワガタを捕まえました。3歳の三男も、お兄ちゃんたちの影響で虫探しをしていますね」
(※)ライトの光でクワガタを引き寄せる方法

公園では、地面に腹ばいになってアリを観察する島田さん。好きなことを突き詰めてきた自身の経験から、子どもの“好き”を伸ばすことについて次のように話してくれました。

「とにかく何でもいいので、人目を気にせず夢中になれるものを見つけてほしいです。次男はカブトムシやクワガタのほかに、絵を描くことやブロックも好きなので、サポートしながら一緒に楽しむようにしています」

公園でアリの撮影をする島田さん。小さなアリの世界を同じ目線でのぞいています。  写真提供:島田拓

アリの表情までわかりそうな迫力の写真

「自分がアリを見て、かわいいと思ったり、感動したりする場面を同じように見てもらいたくて写真を撮り続けています」と話す島田さんは、『ぜんぶわかる!アリ』(ポプラ社)や『アリとくらすむし』(ポプラ社)など、アリに関する書籍を数多く出版しています。

褐色のハリブトシリアゲアリ。これから何をしようとしているのかを考えているようにも見えます。  写真提供:島田拓

『ぜんぶわかる!アリ』には、アリの顔のアップや、仲間のグルーミングをしている様子などが紹介されており、アリのくらしを覗き込んでいるような気分になります。ときには、一枚の写真を撮るまでに3〜4時間かかることもあるのだとか。

「アリが何か行動する場面を撮影するときは、時間がかかります。撮影するときに心がけているのは、アリをこわがらせないこと。アリはとても敏感で、風が吹くだけでこわがって走り回ってしまいます。

仲間に口移しでエサをあげる様子を撮影しようと思っても、リラックスした状態でないとしません。アリがパニックになってしまったときは、落ち着くまで待つようにしています」

島田さんが撮影するアリの写真は、今にも動き出しそうなくらい生き生きとしています。アリのタイミングを待って、「かわいい」と思う場面を切り取ったその姿をお子さんと一緒に書籍で見ると、公園にいるアリの印象も変わってくるはずです。

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取材・文/畑菜穂子

※島田拓さんインタビューは全3回。
次は21年9月1日公開予定です(公開日時までリンク無効)。
#2はアリを家庭で飼育するコツについて、伺います。

アリの暮らしや飼い方などを写真付きで解説した『ぜんぶわかる!アリ』(島田拓/ポプラ社)
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しまだ たく

島田 拓

アリ探求家

アリ探求家。アリ専門店「AntRoom」代表。1981年、東京生まれ。2001年にアリ通販専門「AntRoom」を開業。著書に『ぜんぶわかる!アリ』、『アリとくらすむし』(ポプラ社)、共著に『アリのくらしに大接近』、『アリの巣のお客さん』(あかね書房)、『アリのかぞく』(福音館書店)など。 アリ専門店「AntRoom」 ブログ「ありんこ日記」

アリ探求家。アリ専門店「AntRoom」代表。1981年、東京生まれ。2001年にアリ通販専門「AntRoom」を開業。著書に『ぜんぶわかる!アリ』、『アリとくらすむし』(ポプラ社)、共著に『アリのくらしに大接近』、『アリの巣のお客さん』(あかね書房)、『アリのかぞく』(福音館書店)など。 アリ専門店「AntRoom」 ブログ「ありんこ日記」