発達障害の「二次障害」 不登校や引きこもりの予防策を専門家が解説

信州大学医学部・本田秀夫教授#4~発達障害の二次障害~

児童精神科医・信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授:本田 秀夫

「発達障害の特性の有無に関わらず、すべての子どもの多様な個性に合わせた子育てを大切にしてほしい」と話す本田秀夫先生。  写真:稲葉美映子

短所は見方を変えれば長所になる

小さいときには、ただ個性的と見られていたのに、大人になってからメンタルヘルスに不調をきたし(いわゆる二次障害)、発達障害と診断される「大人の発達障害」も最近は話題になっています。

「一方で、小さいときに発達障害の特性を周りが理解し、手厚いケアを受けて大人になった人の中には、特性は残っているけれど、働きながら、本人なりに楽しく暮らしている人が大勢いるんです」と、本田先生は幼少期からのケアの重要性を指摘します。

「医師や研究者、専門家、職人などに多いんですよ、発達障害の方って。一つのことに深く集中できるという一面があるからではないでしょうか。

例えば『時間が守れない』という短所に見える部分も、見方を変えれば『集中力が人並み外れている』と長所として評価できる。同じ特性でも一方から見れば短所になりますが、他方から見れば長所になることだってあるんです」(清水先生)

子どもの特性や個性を受け入れるということは、言うほど簡単ではないかもしれません。

療育・児童発達支援スクール「コペル+(プラス)」を運営する株式会社コペルが、ADHD(注意欠如・多動症)の子どもをもつ親を対象に行ったアンケート(※1)では、「子どもの特性に合わせた対応の仕方が出来ていると思いますか?」との質問に、「できていない」が7.8%、「あまりできていない」が62.4%と続いています。
※1=ADHDの子どもを持つ保護者対象の「発達障害(ADHD)」に関する調査


この数字が、特性を理解していたとしても、十分に対応することへの難しさを物語っています。

発達障害の特性をもつ子どもを育てるパパママは、その大変なことに日々取り組んでいます。生来の特性はそのままに、その子がその子らしく、順調に生活していくためには、パパママのみならず、周りの理解もとても大切なことと言えるでしょう。

次回は、発達障害の特性をもつ子どもたちの小学校生活について伺います。

本田 秀夫(ほんだ・ひでお)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。精神科医。医学博士。30年以上、発達障害の専門医として発達障害の早期発見、早期介入から成人期の支援まで、各ライフステージにわたる臨床経験をもつ。

清水亜矢子(しみず・あやこ)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室特任助教。小児科医師。専門は小児神経。丸子中央病院、信州上田医療センターの小児科にて発達障害診療に従事している。

永春幸子(ながはる・さちこ)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室特任助教。小児科医師。専門は小児神経。専業主婦から信州大学医学部に入学し、40代で小児科医に。総合病院で小児科一般診療を経験後、現職。

取材・文/稲葉美映子

本田先生の新刊〚子どもの発達障害 子育てで大切なこと、やってはいけないこと〛 (SB新書刊)には、合理的でわかりやすくも温かい親へのメッセージが詰まっている。
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ほんだ ひでお

本田 秀夫

児童精神科医・信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。精神科医。医学博士。 東京大学医学部卒業後、同附属病院、横浜市総合リハビリテーションセンターなどを経て、2018年より現職。30年以上、発達障害の専門医として発達障害の早期発見、早期介入から成人期の支援まで、各ライフステージにわたる臨床経験をもつ。 『子どもの発達障害 子育てで大切なこと、やってはいけないこと』(SB新書)、『ひとりひとりの個性を大事にする にじいろ子育て』(講談社)など著書多数。

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。精神科医。医学博士。 東京大学医学部卒業後、同附属病院、横浜市総合リハビリテーションセンターなどを経て、2018年より現職。30年以上、発達障害の専門医として発達障害の早期発見、早期介入から成人期の支援まで、各ライフステージにわたる臨床経験をもつ。 『子どもの発達障害 子育てで大切なこと、やってはいけないこと』(SB新書)、『ひとりひとりの個性を大事にする にじいろ子育て』(講談社)など著書多数。

いなば みおこ

稲葉 美映子

ライター

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。