男の子の「精巣トラブル」 停留精巣・遊走精巣・陰嚢水腫・鼠径ヘルニア…泌尿器科医が解説
泌尿器科医・岡田百合香先生に聞く、「精巣(金玉)」トラブル #2 ~乳幼児期編~
2024.11.11
泌尿器科医:岡田 百合香
鼠径(そけい)ヘルニア
陰囊水腫と同じメカニズムで発症するのが、「鼠径ヘルニア」。
「こちらは、本来閉鎖しているはずの穴が残存し、そこから腸が飛び出してくる病気です。1歳ごろを目安に、手術で治療するケースが多いとされます。
穴に腸がはまり込んで血流が悪くなった場合には、痛がる、腫れる、嘔吐などの症状が出ることも。そのようなときはすぐに病院へ行きましょう」(岡田先生)
この鼠径ヘルニアは乳幼児期に多い疾患なので、かかりつけの小児科医であれば判断できるということです。
乳幼児期の精巣関連の事故
乳幼児期の精巣睾丸トラブルで知っておいてほしいのが、意外と世の中に知られていない、悲惨な事故です。
「あまり注意喚起されていないのですが、乳幼児期に精巣を怪我する事故は少なくありません。
例えば、飼っている犬に陰茎や精巣を咬まれ、ときには咬みちぎられてしまう悲惨な事故も複数報告されています」(岡田先生)
原因として、オムツの尿のにおいをエサと勘違いするからではないかとも言われていますが、厳密には分かりません。重要なのはこういった悲惨な事故の事例を保護者が知り、「犬と子どもだけで放置しない」といった対策を行うことです。そうすれば事故による精巣の傷害は防ぐことが可能です。
他にも、便座に陰嚢を挟んでしまったり、ズボンのジッパーに挟んで陰茎や陰囊を傷つけてしまうトラブルが報告されています。
「陰囊皮膚が裂けている、腫れている、または痛みが続く場合はすぐに受診しましょう。精巣破裂(精巣を覆う膜が傷ついている状態)のケースだと、72時間以内に手術する必要があります。
他にはぶつけたり、蹴られるといった外傷を契機に、精巣捻転を引き起こすケースの報告もあります」(岡田先生)
そして、おちんちん同様、まだまだ下ネタのような文脈で精巣をとらえる文化があることを岡田先生は憂いています。
「精巣はプライベートゾーンに含まれる部分なので、成長に伴って羞恥心による語りづらさを持つこと自体はおかしなことではありません。一方で下ネタやからかいの対象として子どもが認識している場合は『いや、すごく大事な部分だよ』という態度を大人が示し続けることが大事だと思います。
抵抗感なく話せる幼児期くらいから精巣のしくみや大切さ、何かトラブルがあったらすぐに教えてほしいということを繰り返し伝えていけるとよいですね。
例えば、サッカーでフリーキックの壁の選手が股間を押さえている試合シーンを観た時に『大事だから守っているんだね』と話すなど、日常生活の中にある話題をきっかけにすると話しやすいかもしれません」(岡田先生)
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今回は幼児期の精巣にまつわるさまざまなトラブルについて解説していただきました。
次回3回目は、「思春期に多い精巣トラブル」について、引き続き岡田先生にお話しいただきます。
取材・文/遠藤るりこ
岡田先生の「精巣トラブル」連載は全3回。
1回目を読む。
3回目を読む。
(※3回目は公開時からリンク有効)
遠藤 るりこ
ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe
ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe
岡田 百合香
泌尿器科医。1990年岐阜県生まれ。2014年岐阜大学医学部卒業。愛知県内の総合病院泌尿器科に勤務する傍ら、助産院や子育て支援センターで乳幼児の保護者を対象にした「おちんちん講座」や「トイレトレーニング講座」、思春期の学生向けの性に関する授業などを行っている。男児(2018年生まれ)と女児(2021年生まれ)の母。 『泌尿器科医ママが伝えたい おちんちんの教科書』(誠文堂新光社刊)。
泌尿器科医。1990年岐阜県生まれ。2014年岐阜大学医学部卒業。愛知県内の総合病院泌尿器科に勤務する傍ら、助産院や子育て支援センターで乳幼児の保護者を対象にした「おちんちん講座」や「トイレトレーニング講座」、思春期の学生向けの性に関する授業などを行っている。男児(2018年生まれ)と女児(2021年生まれ)の母。 『泌尿器科医ママが伝えたい おちんちんの教科書』(誠文堂新光社刊)。