スマホ授乳をするとアイコンタクト機能が衰える?
しかし、パパママが授乳中にスマホを見ていると、赤ちゃんがパパママを一生懸命に見つめていてもアイコンタクトが成立しません。
授乳中のアイコンタクトが不足すると、ピントを合わせるための神経が育たず、生まれ持っていたアイコンタクトの機能が衰えてしまいます。そうすると、次第に人と目を合わせることが苦手になってしまうことも。脳には可塑性があり、よく使う神経は太く安定していきますが、使わない神経は細くなって消えていくからです。
目を合わせられなくなると、親が大事なことをしっかり言い聞かせようとしても、目を見て話を聞くことができません。そうするとしつけへの悩みが増えていきます。それほどに授乳中のアイコンタクトは赤ちゃんの成長過程の中でとても大切なものなのです。
それと、スマホの怖いところは「ちょっと夕飯のメニューを探すだけ」「友だちにメッセージを送るだけ」と思っていても、つい他の気になるコンテンツに誘導されてしまうことです。デジタルコンテンツにはそもそも「のめり込ませる仕掛け」が盛りだくさん。誰でもさっと切り上げるのは難しく、ついスマホを見続けてしまったということが起きてしまうのです。
赤ちゃんのときの記憶は脳に残っている
最近の脳の研究では、「赤ちゃんのときの記憶は、自分では思い出せなくても脳には残っている」ということがわかってきています。
パパやママが穏やかな雰囲気で優しく語りかけて、赤ちゃんにとって授乳を「幸せな時間」にしてあげると、「自分は愛されている幸せな赤ちゃんだった」と、幸せな気持ちとともに脳に記憶されます。逆に「パパやママはスマホばかり見て、自分を見つめてくれなかった」という状況だったとすると、どんな記憶が刻まれるでしょうか。
いつもとは言いません。「あなたを産んだときはこうだったのよ」「あなたが生まれてこう思っているんだよ」など、授乳中にいろいろなパパママの思いを赤ちゃんに語りかけてください。まだ内容は理解できていなくても、赤ちゃんはちゃんと聞いていますよ。
授乳中の音楽やラジオはOK!
疲れているときや深夜の授乳の眠気覚ましなら、意識から赤ちゃんが外れてしまうスマホやテレビでなく、音楽を聴くことをおすすめします。授乳中のアイコンタクトがちゃんとできれば、音楽やラジオを聴くのは問題ありません。
ママが好きな音楽を聴いてハッピーな気持ちになると、ポジティブな感情が赤ちゃんにも伝わります。ママの皮膚もリラックスするので、肌が触れている赤ちゃんもきっと気持ちがいいでしょう。
音量は大きすぎないように気をつけて。寝かしつけの前なら赤ちゃんが覚醒しないように激しい音楽は避けるといいですね。
どうしてもスマホを使いたいときは、赤ちゃんが見つめてきたときに「これはスマホだよ」「面白いでしょ」と見せてみて。「赤ちゃん・パパママ・スマホ」が同じ世界の中にいられるようにしましょう。
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赤ちゃんのお世話で疲れているパパママにとっては、1日の中でも授乳タイムが長く感じるかもしれません。しかし子どもが月齢を重ねるごとに授乳回数はどんどん減っていき、いずれは卒乳します。人生の中で考えれば授乳期間はあっという間。授乳は「子どもの幸福感やアイコンタクト能力を高める時間でもある」と考えて、大切にしてほしいと思います。
取材・文 片桐はな
帆足 暁子
公認心理師、臨床心理士。一般社団法人『親と子どもの臨床支援センター』代表理事。専門は乳幼児発達臨床心理学、保育臨床、子育て相談、子どものメンタルヘルス。『ほあしこどもクリニック』副院長として約20年、子育て相談や心の相談で子どもや親と向き合ってきた実績がある。 【主な著書】 『0.1.2.歳児 愛着関係をはぐくむ保育』(学研プラス)
公認心理師、臨床心理士。一般社団法人『親と子どもの臨床支援センター』代表理事。専門は乳幼児発達臨床心理学、保育臨床、子育て相談、子どものメンタルヘルス。『ほあしこどもクリニック』副院長として約20年、子育て相談や心の相談で子どもや親と向き合ってきた実績がある。 【主な著書】 『0.1.2.歳児 愛着関係をはぐくむ保育』(学研プラス)